- 発達障害や相互作用の困難がある子供を持つ親は、どのようにして子供の状態を適切に評価すれば良いですか?
- 発達障害やADHD、自閉症などの子供が正当に評価され、支援を受けるためには、社会や政策はどのように変わるべきですか?
- 西アフリカのように文化的に適切な認知評価が求められる場合、どのようにして評価基準を適応させるべきですか?
西アフリカでは、認知能力に困難を抱える子どもたちが、診断されないまま放置されています。
クワベナ・クシ・メンサは、ナイジェリアとガーナのコミュニティと協力して、文化的に適切な評価方法を開発しようとしています。
メンサが語ります。
医学部に入学する多くの若い学生と同じように、私も最初は脳神経外科医になりたいと思っていましたが、精神科のローテーションで出会った患者の話に惹かれました。
現実が、他人の経験によって歪められてしまうという考え方に興味を持ちました。
また、精神科病棟には悲惨な一面もありました。
ガーナ北部の資源に乏しい地域で臨床研修医として勤務していたとき、精神障害者が祈りのキャンプ(キリスト教、イスラム教、伝統的な治療者が運営する民間信仰に基づく非公式施設)から鎖でつながれて病院に運び込まれてきたのです。
「スピリット・チルドレン」と呼ばれる子どもたちが捨てられているのを見たときは、心が痛みました。
これらの子どもたちは、知的障害や自閉症、あるいは何らかの先天性障害や神経発達障害を持っている可能性が高いです。
しかし、彼らのコミュニティでは、彼らは呪われていると信じられていました。
また、明らかにADHD(注意欠陥多動性障害)と診断される子どもが、学校や家庭で「悪い子」として怒られたという話もよく聞きます。
私は、この状況を何とかしなければならないと思いました。
私はナイジェリアに行き、児童思春期精神保健の修士号を取りました。
私はこの仕事がとても好きでした。
しかし、現場に出れば出るほど、解決しなければならない問題が山積していることに気づきました。
西アフリカでは、多くの人が子どもが精神的な問題を抱える可能性があることに気づいていません。
そのため、子どもたちが診断されないことが多く、教育達成度や幸福度に影響を与えるだけでなく、社会にも広く影響を及ぼしています。
私たちは、一般市民への啓蒙活動において、やるべきことがたくさんあります。
私は1700万人の子どもたちのために英ケンブリッジ大学で学んだ5人の精神科医のうちの1人です。
西アフリカの人口の50パーセント以上が18歳未満であることも考えてみてください。
何百万人もの子どもたちが「脳の処理が違うから」という理由で、こぼれ落ちているのです。
正しい問いを立てるだけでなく、それに答えるためのツールを持った研究者がもっと必要です。
政策立案者を説得し、研究能力を高め、若い才能をこの分野に引きつけるには、実証的な証拠が不可欠なのです。
英ケンブリッジ大学に来ると、私はジレンマに直面しました。
精神医学の最先端で素晴らしいことをやっている人たちに囲まれていたからです。
MRIスキャンや生物遺伝学に関わるような、この分野の専門家になれるような、もしかしたらノーベル賞も狙えるような研究をしてみたいという誘惑に駆られました。
しかし、学問の面で仲間に背を向けるわけにはいきません。
指導教官のアンドリュー・ベイトマン教授の賢明なアドバイスに従い、私は冷静に考えました。
「クマシにMRI装置はいくつあるのだろう?
私のクリニックに来る人は、毎日の食べることにも問題をかかえているのに、私は誰の役に立てるのだろう?」
西アフリカの大きな問題は、認知評価が西洋の規範に基づいているため、診断や治療に支障をきたしていることです。
例えば、適応機能を評価する項目では子どもが洗濯機を操作できるか、ノートパソコンで段落を入力する方法を知っているかを尋ねるものがあります。
しかし、ガーナの地方に住む子どもにとってはこのような製品をそもそも知らないかもしれません。
また、自閉症を評価する項目では、子どもが継続的にアイコンタクトを取れるかどうかが書かれていますが、西アフリカの多くの地域では、子どもが大人の目を見るのは失礼なことだと考えられています。
評価項目を翻訳するだけでは十分ではありません。
言葉そのものは理解できても、コンセプトが理解できません。
実際に現場に行って、質問内容を理解しているかどうかを確認する必要があるのです。
私は、脳機能の指標を測定するために、文化的に適切なアセスメントを作りたいと思いました。
具体的には、実行機能と適応機能に注目しました。
実行機能とは、計画、目標設定、意思決定などに関連する機能です。
適応機能とは、日常生活の要求にどの程度対応できるかに関係するものです。
私は、実行機能と適応機能を測定するために、低・中所得国で最も使用されている2つのテストを選びました。
私は、ガーナとナイジェリアの農村と都市に住む13歳から18歳のティーンエイジャーと、その両親、そして現地の専門家と、フォーカス・グループ・ディスカッションを実施しました。
その結果、アセスメントを使う人たちとともに開発することの重要性が明らかになりました。
例えば、「トラブル」(「ずっと座っていられない=座ることにトラブルがある」という項目で使われている)という一見シンプルな単語でさえ、10代の子どもたちにはまったく異なる意味で理解されました。
「先生との間でトラブルを起こす」という意味に受け取られることがありました。
また、親や教師は、実行機能に問題のある子どもたちを表現するのに、一貫して性格的な欠点を示唆する言葉を用いていることがわかりました。
私たちがすべきことはもちろんですが、このことは、実行機能障害と診断されていない子どもたちを見つけ、必要な手助けをするための手がかりを与えてくれています。
興味深いのは、そうした人たちとの会話の中で出てきた「エフィー・ニャンサ」(私の母国語であるアカン語)という言葉でした。
直訳すると「家庭の感覚」という意味です。
私は、これが実行機能に関連しているのではないかと直感しました。
これを調べるために、私は親たち、精神科医、教師、伝統的な統治者、地元の長老たちとさらに面談を行いました。
「家庭の感覚」は、目標設定のプロセスや、コミュニティの集合的な利益を考慮した責任ある意思決定と関係があるようです。
また、道徳的な側面も強い。西洋の実行機能の概念では、メタ認知と呼ばれる、本質的に思考について考えることと並行しているようです。
メタ認知は実行機能の最上位に位置すると理論化されています。
「家庭の感覚」を測定することが、西アフリカにおいてこのレベルの実行機能を評価する文化的に適切な方法となりえるはずです。
将来的には、博士課程での研究を基に、西アフリカの子どもたちのための認知評価ツールを開発するための資金やポスドクの地位を確保したいと私は考えています。
スマホで比較的短時間に実施できるテストを評価ツールにしたいと思っています。
それができれば、西アフリカの地方の環境でも診断を実施できるようになるでしょう。
研究の実施と、研究に携わる臨床医のトレーニングがカギとなります。
私は、地域のメンタルヘルスニーズを把握するために、定期的な調査を行うことを希望しています。
私が精神科医になろうとしたとき、多くの人がこう言って私を挫折させました。
「この職業に未来はない」「患者さんと同じになってしまう」と。
実際、とくに精神保健の研究分野において、私が尊敬できるロールモデルがあまりいませんでした。
自分の視野を広げるためには、手本となる人を見る必要があります。
だからこそ、私も西アフリカの若い人たちのお手本になりたいです。
自分をどこまで見せられるかが勝負だと考えています。
(出典・画像:英ケンブリッジ大学)
こうしたことがある国、地域が現在でもまだあります。
うちの子と私は日本に生まれて本当によかったと思います。
変わることを願います。
(チャーリー)