- 脳の成長や特徴の変化は、どのようなパターンを示すのか?
- 自閉症や他の神経疾患の人々の脳の特徴は、健常者と比べてどのように異なるのか?
- 脳スキャンによる検査では、脳の微細な問題や形状以外に何がわかるのか?
国際科学者チームは、10万枚以上のスキャン画像を収集し、生前から100歳までの脳の変化を調べました。
この研究は、生涯を通じて脳の成長を記録した初めての資料であり、研究者が自閉症の人々の違いを評価するのに役立つと思われる一連の指標を提供するものとなります。
小児科医は、身長、体重、頭囲について、年齢による変化の標準を示す成長チャートを参照し、子どもの健康状態や発達についての印象を把握します。
しかし、脳についてはそのような基準は存在しません。
MRI検査は通常、特定の年齢における脳の構造を調べるものです。
そして、収集や分析方法が大きく異なるため、異なる研究からのデータを統合することは困難です。
「脳スキャンの技術は30年前から存在しています。
しかし、脳がどのように成長するのかは、さまざまな研究をつなぎ合わせて理解しているに過ぎません」
そう、今回の研究の共同研究者である米フィラデルフィア小児病院のヤコブ・セイリツ博士は言います。
セイリツ博士の研究チームは、100以上の研究からのMRIデータをまとめました。
スキャン画像を分析するために標準化されたアプローチを使用し、スキャンの収集方法におけるばらつきも考慮しました。
その結果、妊娠後115日から100歳までの脳のさまざまな特徴の変化を追跡することができました。
この研究成果は、『Nature』誌に掲載されています。
研究チームは、Human Connectome ProjectやUK Biobankなどのオープンアクセス・データベースからスキャン画像を収集し、他の研究者に、pメールでMRIスキャン画像を共有してもらえないか依頼しました。
収集できたスキャン画像のうちの約4分の1は、自閉症、アルツハイマー病、統合失調症など、脳に関連する診断を受けた人たちのものです。
また、脳スキャン画像の対象者の約10パーセントは、複数の時点のの脳スキャン画像がありました。
研究チームは、神経型健常者のスキャン画像に注目し、神経細胞体とその突起からなる灰白質、白質、脳室と呼ばれる液体で満たされた空間など、さまざまな種類の脳組織の体積を測定しました。
次に、このデータを性別に分類し、年齢に対する各特徴の曲線も作成しました。
さらに、大脳皮質の厚さなど、より細かい特徴の変化も分析しました。
灰白質の体積は、妊娠中期から急速に増加し、6歳近くでピークに達していました。
これは、サンプル数が少なかった以前の調査結果よりも少なくとも2年遅かったと、研究チームは報告しています。
一方、白質は30歳代で体積が最大となり、脳室は60歳代から指数関数的に成長していました。
研究チームは、これまで報告されていなかった脳の成長の節目も確認しました。
例えば、皮質の厚さは、妊娠中期に最も高い成長率に達していました。
次に研究チームは、ある人の脳の特徴が集団の標準とどの程度異なるかを比較しました。
その結果、精神疾患や神経疾患を持つ人たちの間で、健常者と比べて大きく異なっていました。
アルツハイマー病患者では、脳の特徴が最も大きく変化していた。
アルツハイマー病が神経変性を引き起こすことを考えると、これは理にかなっていると研究チームは述べています。
一方、自閉症の人たちは、白質や脳室容積などの脳の特徴にわずかな変化を示しただけでした。
これまでの研究でも、自閉症の人たちの脳構造に一貫した違いはほとんど見られなかったため、こうした結果は驚くべきことではない、と研究チームは述べています。
今回の研究で作成されたデータは、臨床に使える状態ではありませんが、脳の構造の違いを個別に評価できるようになるかもしれません。
また、自閉症の多様性を解析するのに役立ち、多様性を議論するための共通の指標を提供するかもしれないと、この研究を共同で行った英ケンブリッジ大学自閉症研究センターの研究員、リチャード・ベスレヘムは述べています。
うちの子も自閉症と診断がつかないままの頃にMRIによる脳スキャンを行いました。
「MRIでわかる限りでは脳に異常はありません」
画像を一緒に見ながら、そう言われたことを思い出します。
やはり、もっとミクロの世界での問題か形状には現れない問題なんだろうと当時思ったものです。
(チャーリー)