- 自閉症やADHDの若者はなぜ早期に死亡リスクが高いのか?
- 予防可能な原因は何か?
- 親に責任を押し付けずに、社会全体でどんな行動をとるべきか?
自閉症や注意欠陥・多動性障害(ADHD)の若者は、さまざまな原因によって早期に死亡するリスクが高いことが、新しい研究で示唆されました。
研究チームは、中年期以前に、自閉症の人々が心臓病のような「自然な」原因と事故や自殺を含む「不自然な」ものの両方から平均より高い死亡率に直面していることを発見しました。
一方、ADHDの人たちの早期死亡の高いリスクは、非自然的な原因によって説明されます。
この結果は、これまでに発表された27の研究の分析から得られたものです。
自閉症または ADHD をかかえる人たちは、あまりにも多く、予防可能な原因で早く死亡しています。
専門家は、この研究結果で警鐘します。
「私たちは、すべての自殺の原因を防ぐことはできません。
すべての溺死を防ぐことはできません。
しかし、これらの死のいくつかは防ぐことができます」
自閉症科学財団の最高科学責任者であるアリシア・ハラデーは述べています。
この研究に参加していないハラデーは、親に責任を押し付けているわけではないことを強調します。
「私は、これは医療従事者を含む社会への行動喚起であると考えます」
この調査研究は、JAMAPediatricsでオンラインで公開されています。
自閉症やADHDを持つ若者には、より高い死亡リスクに直面する原因を解決するために、より多くのことを行う必要があるといいます。
その原因は、不安などの精神疾患の併存、社会的関与の欠如、薬物使用、睡眠障害、食生活の乱れ、肥満など多岐にわたります。
自閉症の若者は、特定の死因のリスクが高いことは以前から認識されていました。
車にひかれたり、溺れたりといった事故もそのひとつです。
そして、自閉症の子どもたちは、しばしば水に引き寄せられることも指摘されています。
また、重度の自閉症患者はてんかんを患っていることが多いため、致命的な発作もよくある原因のひとつになっています。
しかし、大規模な母集団研究が、自閉症やADHDの人々の自然および非自然的な死因の範囲を掘り下げてきたのは、近年になってからだと、今回の研究を行ったスペイン・マドリードのカルロス3世保健研究所のフェラン・カタラーロペスは言います。
例えば、2016年のスウェーデンの研究では、27000人以上の自閉症の人と270万人の障害のない人を調べました。
平均して、自閉症の人は16年早く死亡し、心臓病、がん、自殺などの原因による死亡リスクが高くなっていました。
軽度の自閉症の人については、自殺者の割合が一般人口のほぼ10倍でした。
今回の新しい調査研究では、このスウェーデンの研究の他に26の研究、全部で642000人の自閉症の人を含む研究を対象としました。
このうちの12の研究では、自閉症の人たちを成人になるまで追跡調査しています。
研究の質にはばらつきがあるとハラデーは指摘します。
「しかし、すべて一貫したパターンを示しています」
自閉症の人たちの間では、事故や自殺などの外的要因だけでなく、がんや呼吸器疾患などの自然的な原因によるリスクも高まっていました。
ADHDの若者の場合、外的要因のみが平均より高くなっていました。
自閉症とADHDの両方が衝動制御の問題をともないます。
そして、どちらの症状を持つ人も、肥満、摂食障害、薬物乱用、睡眠障害、座りがちなライフスタイルなどの健康問題の割合も高くなります。
また、自閉症の人は採血やその他の医療処置に耐えられないことがあり、そのために診断が遅れることがあります。
「子どもの医療や社会サービスの提供者と、親が継続的にコミュニケーションをとることがカギとなる」
そう、今回の研究を行ったカタラーロペスは、子どもが精神的・身体的な問題を抱えているかもしれないという警告のサイン、事故防止、その他あらゆる心配事について話すことを提案しています。
しかし、誰もそれが簡単だとは考えていません。
子どもが自閉症である場合、とにかく「用心深くあること」が大事であると、自身も障害を持つ子の親であるハラデイは言います。
「自閉症の子どもを持つ親は、一生気を張っていなければならないと思います」
【電話やチャットで気軽に相談できる窓口があります。悩みや不安を感じたら】
厚生労働省 相談先一覧ページ
この悲しい状況は、これまでの研究でお伝えしてきたとおりです。
多くの人が知って、社会がもっと多様さを受け入れて、この状況を変えてほしいと願います。
(チャーリー)