- 自閉症の子どもたちに遠隔療育は効果的か?
- オンライン療育はどのようなメリットを提供するか?
- 自閉症の子どもたちへの療育において、バーチャル設定はどのような役割を果たすか?
新型コロナウィルスの感染拡大初期に、米スタンフォード大学医学部の研究者は、未就学児の自閉症治療の研究を一時中断せざるを得なくなりました。
参加者は言葉の遅れのある幼児で、週に12時間スタンフォードに通い、自閉症の子の興味を利用して話す気にさせる、ピボタル反応療法と呼ばれる療育を行っていました。
このプログラムの臨床責任者である小児心理学者グレース・ゲングー博士は、この停止は子どもたちやその家族にとってストレスになると考えました。
そこでゲングー博士らのチームは、プログラムを完全に停止する代わりに、オンラインで療育を提供することを試みました。
そしてこれが、とてもうまくいきました。
遠隔療育には、同じ療育を直接行うのでは得られない利点さえありました。
研究チームはこの経験について”Social Sciences”に論文を発表しました。
自閉症の子どもたちは、興味が制限される傾向があり、特定のものに深く集中します。
そのため、例えば恐竜が大好きな子どもが、療育中の部屋にある恐竜のおもちゃを欲しいと言ったなら、すぐにご褒美として数分間それで遊ばせます。
「私たちは、子どもたちに、言葉で他の人と関わると、物事がより良く、より楽しくなることを教えたいのです」
と、そうこの研究の療育を監修した行動分析士のデヴォン・ホワイトは言います。
新型コロンウィルス感染拡大によるロックダウンが始まってから、研究者たちが「あっ!」と思ったのは、療育中にバーチャルな設定をすることで、子どもたちへの選択肢を増やすことができることに気づいたときでした。
恐竜好きの子どもに恐竜の1つか2つのおもちゃを与える代わりに、セラピストは画面上に恐竜の群れを作り出すことができます。
大きな恐竜、赤ちゃんの恐竜、ジャングルの中の恐竜など、オンライン画像ならセラピストが求めるものの選択肢が広がります。
セラピストは、子どもが話そうとするたびに、画面上の世界を変えました。
オンライン試験プログラムには、開始時から研究に参加していた5名と、その後オンラインセッションに参加した追加12名の計17名の子どもたちが参加しました。
参加した子どもたちは2〜5歳で、週に数時間、10週間から1年強のさまざまな期間で参加しました。
子どもたちの療育セッションには親も参加して技術的な支援を行いましたが、各セッションはセラピストが中心となって行いました。
多くの子どもたちがそうであるように、参加した子どもの多くはiPadなどに興味をもっていました。
セラピストは、バーチャルな背景や画面共有、カーソルを子どもの好きな物や動物の形に変えるなどの工夫で、オンライン環境を充実させることができました。
セラピストは、画面上で起こることを完全にコントロールすることができました。
子どもたちが見るものに影響を与えられるのは、セラピストに話しかけることだけで、セラピストは子どもの発言に応じて仮想シーンを変化させました。
オンライン環境は、非常に特殊な、あるいは複雑な興味を持つ子どもたちに、セラピストがより適した対応をすることを可能にしました。
「ある子どもは空港にとても興味を持っていて、セラピストはその子と一緒に順序立てて話をすることに取り組んでいました。
チケットカウンター、手荷物検査、セキュリティなど、たくさんのバーチャルな背景を用意し、そこに自分を置くようにしました」
そうホワイトは語ります。
「さあ、セキュリティーの列に並びましょう、と言ったら、
セラピストは画面を物語に合うように切り替えます。
そして、ゲートまで行って、と言ったら、また画面をその通りにするのです。
本物に見えるから、子どもたちはやる気が出るんです」
ゲングー博士はこう言います。
「それは、これまでの療育では困難なことでした。
このような種類のおもちゃを提供したり、このような特別な興味に応えるために、クリニックで用意しなければならないとしたら、おもちゃの数は膨大になり現実的ではありません。
オンライン療育で、画面内であれば、無限にそれらをもつことができるのです。
ある意味では、オンライン環境は、対面式のセッションよりもセラピストのコントロールが効くとも言えます。
セラピストは、セラピーの各ステップで子どもにお気に入りのおもちゃを渡し、そのおもちゃで遊ぶ新しい機会を与える代わりに、仮想世界を変更して、子どもがもっと話したくなるように誘い、新しいまたは異なるイベントを促すことができます」
この療育を受ける子どもの親は、結果、一緒に自分たちもトレーニングを受けることになりました。
親たちもすべての仮想セッションに参加していたため、この療育がどのように機能するのかすぐに理解できました。
そして、家庭でも療育を行えることを知り、勇気づけられています。
新型コロナウィルスによる外出制限が解除されて以来、米スタンフォード小児医療センターの子どもたちは対面式の療育に戻りました。
しかし、ゲングー博士とホワイトは、オンライン・ピボタル反応療育の利点についてさらに研究を進めたいと考えています。
この療育により、対面式のセッションを補完し、遠隔地に住む家族も療育を受けやすくなると考えるからです。
次に研究チームは、より多くの子どもたちを対象とした対照試験で、オンライン・アプローチの効果を検証する予定です。
(出典:米スタンフォード大学医学部小児科)(画像:Pixabay)
何に興味をもつのか。
それを探り、提供するには選択肢がたくさんあればあるほど、良いはずです。
たしかに、バーチャルであればいくらでも可能です。
バーチャルの大きなメリットですね。
(チャーリー)