- バランストレーニングが自閉症の青年の姿勢改善や症状軽減にどのように影響するのか?
- バランストレーニングを楽しむためにビデオゲームがどのように活用されているのか?
- バランストレーニングが自閉症の子どもの日常生活スキルや社会性に及ぼす影響は?
バランストレーニングは、多くの青年にとって必ずしも楽しいとは思えないかもしれません。
しかし、ビデオゲームでは一般的に楽しいはずです。
ヨガや太極拳のポーズを教えることでバランスを改善するビデオゲームが、自閉症スペクトラム障害の青年の姿勢を改善し、自閉症症状の重症度を下げ、脳の構造にも影響を与えることがわかりました。
米ウィスコンシン大学マディソン校ウェイスマンセンターの研究者たちが、雑誌『Brain Communications』に発表した研究結果です。
13歳から17歳の自閉症の青年が、任天堂Wiiのバランスボードを使って、ゲームにあわせて太極拳やヨガのポーズをとりました。
「多くの青少年はビデオゲームが好きです。
そして、自閉症の青少年はビデオゲームがさらに好きなことを示す研究がこれまでにあります」
そう今回の研究の筆頭著者である大学院生のオリビア・サージェントは言います。
「思春期の子供が太極拳をすることは、伝統的にあまり楽しいことではないかもしれませんが、彼らにとっては良いことかもしれません」
自閉症の人の場合、バランスコントロールは、思春期初期に停滞するようです。
それは自閉症でない人にくらべて早い時期です。
そのため、姿勢とバランスに課題をもたらすかもしれません。
作業療法学の教授でウェイスマン・センターの研究員であるブリタニー・トラバースは、運動制御の困難さは、より重い自閉症症状や日常生活スキルの実行不良の高い予測因子であるといいます。
なぜこのようなことが起こるのかは完全には解明されていませんが、トラバースはその原因を突き止めようと決意しています。
「私は、運動と自閉症の中核的特徴に関して、どの研究でも発見され続けている関係を説明する第3の変数があるのかどうか、もっとよく理解したいと思っています」
最近の研究では、自閉症をかかえる青年とそうでない青年に、彼女の研究室にあるバランスボードの上でヨガや太極拳のポーズをできるだけ長くとるようにお願いしました。
白い画面にフェードインした画像は、ポーズを正しくとればとるほど明るくなり、自分のパフォーマンスを即座に確認することができます。
トレーニングの途中で、参加者は他の楽しいビデオゲームにも参加することができました。
これを週に3回、1時間の練習を6週間続けました。
トレーニング終了時には、ポーズをキープできる時間が平均36秒増加しました。
「氷の上で滑り始めたり、浴槽に足を踏み入れたりするときに、体を支えるために必要なことを考えると、その36秒の余裕は、転んだりすることを防ぐ助けになるはずです」
そう、トラバースは言います。
バランスボードの外では、青年たちは姿勢動揺、つまり姿勢を維持する能力にも改善を示しており、トレーニングの効果がビデオゲーム以外の場面にも及んでいることがわかりました。
自閉症の子どもたちは、自閉症のない子どもたちに比べて、一般的に姿勢の安定性が低いことが知られています。
また、バランストレーニングを行った自閉症の子は、社会的コミュニケーション、反復行動、制限的興味(特定の話題や物への強い興味)の分野において、自閉症症状の重症度が著しく低下したことが報告されました。
介護者が報告した彼らの症状は、重度から中程度になりました。
重要なのは、このトレーニングの目的が、自閉症の特徴をなくすことではなく、運動機能と自閉症の中核的な症状との関連性をよりよく理解することにあります。
「自閉症症状の重症度そのものは、研究者にとっては興味深いものですが、自閉症の人たちにとってはそれほど意味のある指標ではないかもしれません」
そう、トラバースは言います。
運動制御とこれらのスキルの改善を関連づけた先行研究では、バランストレーニングに参加した青年たちは、シャワー、基本的な食事の準備、道路の安全な横断などの日常生活スキルの改善は示しませんでした。
日常生活スキルが向上し始めるまでには、もっと時間がかかるかもしれないとトラバースは考えています。
なお、比較対象とした、座りがちなビデオゲームをする自閉症の青年たちは、運動制御や症状の重篤度に有意な改善は示しませんでした。
トラバースは、バランストレーニングによって脳の主要な機能、特に白質路(異なる脳領域をつないで信号を送る繊維)が変化するかどうか、またその変化が自閉症症状の改善に関連するかどうかについても興味をもっていました。
研究チームは、磁気共鳴画像法(MRI)を用いて、6週間のトレーニング前後の青年たちの脳を撮影しました。
バランストレーニングによって、脳の運動・感覚領域と脊髄をつなぐ皮質脊髄路に変化は見られませんでしたが、運動能力と自閉症症状の両方に関与する白質路には変化が見られ、その中には上小脳小節も含まれていました。
「上小脳小節は、小脳から大脳皮質に多くの情報を送っており、小脳は運動フィードバックと異なる文脈での運動行動の制御に本当に重要なので、特に興味深い経路です」
そう、サージェントは説明します。
さらに、バランス訓練後の脳構造の変化は、自閉症の青年とそうでない青年とで異なっていました。
これは、自閉症の若者が経験する感覚や運動の成果が、自閉症の若者とそうでない若者とで異なるためではないかとトラバースは考えています。
トラバースはまた、自閉症の青年にとって意味のあるバランストレーニングの成果を明らかにし、運動制御と生活の質の向上の両方に役立つビデオゲームの使用方法をさらに研究したいと考えています。
研究参加者は全員、ビデオゲームをとても好み、その経験を楽しんだと報告しています。
また、自閉症の有無やIQに関係なく、全員が同じ速度でビデオゲームをプレイできるようになりました。
トラバースにとって、これは大きな成功でした。
「ビデオゲームの世界は、自閉症の人たちが得意とする場所であり、IQテストで測定されるような認知の違いが単純に当てはまる場所ではなかもしれないことがわかりました」
(出典・画像:米ウィスコンシン大学)
体のバランストレーニングが自閉症による困難を減らしてくれる。
ゲームでそのトレーニングを楽しんで行える。
素晴らしいですね。ますますそんな役に立つゲームの開発をすすめて頂きたいと思います。
うちの子も、小さなころから体幹、バランスを鍛える運動はしてます。
運動中や終わった後にときどき見せてくれる笑顔を見ると私もうれしくなります。
(チャーリー)