- 自閉症の人が職場で自分の診断名を明かすことができない理由は何か?
- 自閉症の従業員が職場で直面する課題は何か?
- 自閉症の会社員にとって最も役立つ支援策は何か?
英オーティコン社はITコンサルタントが全員自閉症をかかえている世界的なITコンサルタント会社、社会的企業です。
そのオーティコン社の新しい調査によって、自閉症の人の10人に1人が、職場で自分の診断名を明かすことができないと感じていることが明らかになりました。
今回の調査では、英国内の自閉症と診断された成人200人から回答を得ました。
自分の症状について最も相談したのは上司であり(10人中7人が相談したことがある)、半数強(58パーセント)が自分の診断について人事部に相談したことがあると回答しました。
しかし、人事部や上司以外の同僚に自閉症のことを話したことがある人は半数以下(47パーセント)でした。
自閉症であることを職場の誰にも話していない人が、上げる理由は次です。
- 5人に2人(40パーセント)は、職場の人に話す準備ができていない
- 3人に1人(33パーセント)は、不利な扱いを受けるのではないかという不安がある
- 4人に1人(27パーセント)は、自分のプライベートな情報を雇用主と共有したくないと思っている
- 4人に1人(27パーセント)は、自分の診断結果を職場の人にどのように伝えればよいかわからないと感じている
- 5人に1人(20パーセント)は、最近診断されたばかり
- 5人に1人(20パーセント)は、雇用主に否定的に思われることを心配している
- 8人に1人(13パーセント)は、会社での将来性に悪影響を及ぼすのではないかと心配している
- 14人に1人(7パーセント)は、過去に診断結果を開示した際にネガティブな経験をしたことがある
オーティコン社のチーフ・エグゼクティブであるアンドレア・ガールアンダは次のようにコメントしています。
「多くの自閉症の人が上司に診断結果を話していることは心強いことですが、職場を人々が活躍できるようなより包括的な空間にするには、まだまだ長い道のりがあります。
自閉症の人は、データ分析、サイバー脅威の検知、ソフトウェア開発などの分野で優れた才能を発揮することが多いので、スキルギャップに直面している分野では特に、こうした才能が活用されるようにすることが重要です」
自閉症スペクトラムに代表される発達障害の人たちは、パターン認識、論理的思考、正確さなどの分野で自然な能力を持っていることが少なくありません。
しかし、最近の研究では、自閉症の人は職場での存在感が著しく薄く、雇用されているのは5人に1人に過ぎないことが明らかになっています。
今回の調査では、自閉症の従業員が仕事上で直面する最大の課題を明らかにしました。
最も多く挙げられた問題は以下の通りです。
- メンタルヘルスの低下をどのように管理職に伝えればよいか悩んでいる(49パーセント)。
これは若い自閉症の従業員に特に多く見られ、18〜30歳では62パーセント、全体では49パーセントでした。 - 好みの学習スタイルが守られていない。例:絵による情報の方が簡単なのに、文字の多い文書を渡される(48パーセント)
- 一度に多くの情報を与えられる(43パーセント)
- 自閉症であることを隠す必要があると感じる (42パーセント)
- プロセスや手順が守られていない(40パーセント)
- 明確な指示や結果がない (39パーセント)
- 事前に伝えられていなかった会議や電話 (39パーセント)
- 明るい照明 (36パーセント)
- オープンスペースのオフィス (3パーセント)
- 職場での世間話に付き合わされる (3パーセント)
オーティコン社のリードジョブコーチであるラッセル・ボッティングは、ITコンサルタントがプロジェクトに参加する際に企業文化を説明し、必要なものが揃っているかどうかを確認するだけでなく、受け入れ先の組織に自閉症についての理解をすすめるトレーニングを実施し、遭遇する可能性のある違いを理解し、必要な合理的配慮を円滑に行って、サポートしています。
「今回の調査結果は、職場環境をより利用しやすく、受け入れやすく、影響を恐れずにありのままの自分でいられるような支援的な場所にするためには、実に簡単な変更が可能であるという明確なメッセージを伝えています。
これは、自閉症の社員だけでなく、すべての社員にとって良いことであり、ビジネス的にも意味のあることです」
調査回答者は、自閉症の会社員にとって最も役立つものとして、以下を挙げています。
- 明確に定義された指示があること – 51パーセント
(77パーセントが実施しているか、実施中であると回答) - 適切なソフトウェアや機器(例:スピーチ・トゥ・テキスト、スクリーンフィルター、マルチモニター) – 0パーセント
(72パーセントが実施しているか、実施中であると回答) - 始業・終業時刻を希望に応じて遅くしたり早くしたりするなど、柔軟な時間調整 – 49パーセント
(76パーセントが実施しているか、実施中であると回答) - 適切な場所に好みのデスクがある – 47パーセント
(72パーセントがこれは実現しているか、実現中であると回答) - 耳栓やノイズキャンセリングヘッドフォンを装着できること – 44パーセント
(70パーセントが実現している、または実現しつつあると回答) - 仕事中に感覚刺激のアイテムを使用できる – 43パーセント
(74パーセントが実現している、または実現しつつあると回答) - 定期的に快適な休憩を取ることができる – 42パーセント
(77パーセントがこ実現している、または実現しつつあると回答) - 職場にバディやメンターがいること – 41パーセント
(71パーセントが実現している、または実現しつつあると回答) - 自宅で仕事をすることができる – 29パーセント
(69パーセントが実現している、または実現しつつあると回答) - ビデオ会議中にカメラをオフにするオプション – 29パーセント
(73パーセントが実現している、または実現しつつあると回答)
(出典:auticon.co.uk)
すごく参考になるデータだと思います。
日本の企業にも参考にして頂きたいと願います。
(チャーリー)