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自閉症の症状の原因は「視床」か。薬を作れるかも。進む研究

time 2021/11/19

この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。

自閉症の症状の原因は「視床」か。薬を作れるかも。進む研究
  • 視床が自閉症の感覚反応にどのように関与しているのか?
  • 視床と大脳皮質の結合が自閉症の症状にどのような影響を与えているのか?
  • 視床核の機能を正確に理解することで、自閉症の特定の問題を治療できる可能性はあるのか?

脳の奥深くにある、感覚の中継基地である「視床」に注目した自閉症の研究が増えています。

視床は重要な感覚フィルターです。
自閉症ではその機能が異なる可能性があることが明らかになってきました。
それが、自閉症の人の中には感覚刺激に異常に敏感な人(あるいは、感覚刺激に引き寄せられる人)がいる理由だと考えられます。

さらに、自閉症における視床の役割は、感覚の世界にとどまらないことも示唆されています。
視床は、睡眠、社会的認知、注意、学習など、さまざまな機能に影響を与えていることが、研究で明らかになりました。
米スタンフォード大学の精神医学・行動科学のアントニオ・ハーダン教授はこう言います。

「視床は、自閉症に関係する多くの認知機能に関与しているので、これを研究するのは当然のことです」

また、自閉症における視床の役割を研究することで、視床の構造に関する知見が拡大し、下位領域に明確な機能が割り当てられたり、脳の他の部分との協力関係が明らかにもなってきました。

自閉症の人は、視床と大脳皮質の間のやりとりがそうでない人とは異なることも確認されました。

2006年、米サンディエゴ州立大学の心理学ラルフ-アクセル・ミュラー教授らは自閉症人の視床と大脳皮質の一部との間で、機能的結合性(2つの脳領域がどれだけ同期して活動しているかを示す指標)が異常に高いことを発見しました。
その後、他の研究でも自閉症の人では視床と大脳皮質の間の結合性が異なっていることが示されています。

これまでの研究によって、視床が自閉症の人の異常な感覚反応に寄与しているということがますます確実になってきました。

例えば、視床と聴覚皮質の結合が強いほど、自閉症の人は音に敏感になる傾向があるとミュラー教授の研究チームは2018年に発表しています。
自閉症の子ども19人とそうでない子ども19人を対象にした研究では、自閉症の子どもは大きな交通騒音やザラザラした布を腕にこすりつけたりすると、視床と大脳皮質の間で異常なコミュニケーションが見られました。

視床は中継所であると同時にフィルターでもあり、重要な感覚情報を増幅し、重要でないものを排除する役割を担っています。
視床のフィルターが漏れていると、例えばパーティーで特定の会話に集中できなかったり、時を刻む時計の音を聞き分けられなかったりする自閉症の人について説明できるかもしれません。

この視床のフィルター機能は、睡眠時の感覚入力を抑制することで、睡眠の調整にも関わります。
睡眠中に刺激を遮断できない視床が、自閉症の人によくある不眠症などの睡眠障害を引き起こしている可能性もあります。

この考えを裏付けるように、米サンディエゴ州立大学のインナ・フィッシュマン准教授らが発表した研究では、視床と大脳皮質の間の接続が異様に強い自閉症の子どもは、接続が弱い子どもに比べて睡眠問題を抱える傾向が見られました。

ミュラー教授の下で学んだ心理学のアタルティ・ネア博士の研究では、視床と大脳皮質の感覚領域との間の結合性が高いほど、前頭前野などの社会的認知、記憶、計画に関わる領域との結合性が低いというパターンが示唆されています。
視床が自閉症の人の感情、認知、社会的行動の制御にまで影響していることを示しています。

そして、視床と前頭前野のコミュニケーションは、自閉症における興味の制限や反復行動の原因にもなっていることが推測されています。

視床の機能が低下すると、行動を繰り返したり、先に進むべき時に何かに執着したりする衝動を抑えることができなくなるのではないかスタンフォード大学のハーダン教授は言います。

視床は多くの「核」から構成されていて、それぞれの核は脳の特定の部分とつながっており、自閉症の特性に影響を与えるような明確な機能を持っている可能性があります。

マサチューセッツ工科大学のフェン教授とハラサ教授の研究チームは、2016年の研究で、視床網状核にある自閉症関連遺伝子PTCHD1を欠損したマウスが多動性と不注意を示すことを明らかにしました。

また、他のいくつかの自閉症遺伝子を視床前部で欠損させても同様の結果が得られ、この部分に認知機能があることがさらに示唆されました。

さらに、研究チームはマウスの注意力や記憶力の問題を元に戻すことができる薬剤を特定しました。

視床核の機能をより正確に理解することで最終的には、自閉症の人の特定の問題を治療するのに役立つだろうと述べています。
例えば、視床網状核のニューロンに作用する薬剤を使えば、集中力の問題に対処できるかもしれません。
視床内側背側の活動を調節すれば、社会性を高めることができるかもしれません。

(出典:米SPECTRUM)(画像:Pixabay

自閉症の方がかかえる困難を軽減できる「薬」などができるのかもしれないのですね。

希望する方が早く利用できるように、ますます研究が進むことを願います。

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(チャーリー)


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