- 自閉症スペクトラムの人が顔の合図を解釈する際に苦労する理由は何か?
- 米ペンシルバニア州立大学の研究では、どのような療育方法が開発されているか?
- ゲーム療育を受けた子どもたちが社会性の向上を示したと報告されていますが、具体的にどのような変化が見られたのか?
自閉症スペクトラムの人は、顔の合図を解釈するのに苦労することがよくあります。
これは、視線の方向が他人の行動や意図を予測するのに使われることを認識できないことが原因です。
このことは、行動や言語学習、社会的相互作用を理解する上で大きな意味を持ちます。
米ペンシルバニア州立大学の研究では、視線の手がかりに対する感度を向上させるように設計したゲームを用いた療育方法を開発しています。
これにより、自閉症の中核的な症状を治療し、社会的スキルを向上させることができる可能性があります。
この研究成果は”Journal of Child Psychology and Psychiatry Advances”誌に掲載されました。
自閉症の青年のためのソーシャルゲーム(SAGA)」は、心理学准教授で社会科学研究所の共同出資教員であるスージー・シャーフとそのチームが2013年から開発を進めてきました。
「私たちは、自閉症スペクトラムの人の視線の手がかりに対する感度を向上させるために、コンピュータゲームによる療育方法を開発したいと考えていました」
このゲームでは、参加者は、ストーリーに沿ってアニメーションのキャラクターと対話し、視線などの非言語的な社会的手がかりを用いて、目標に向かって行動したり、問題を解決したりします。
「私たちは、ペット探偵というストーリーを作り、参加者には、迷子のペットを見つけなければならないと伝えました。
ゲームを進めながら、頭と目を少し大きくした人型のフィギュアからの非言語的な社会的合図にどのように対応するかを学べます」
ゲームを用いることはこの種の療育の中では斬新なアプローチです。
「参加者はゲームのストーリーの中で自分で選択することができますが、ゲームの技術は参加者のパフォーマンスに合わせて自動的に調整され、参加者が飽きずに学習できるようになっています。
これは、参加者が何時間も没頭できることを意味します」
このゲームはペンシルバニア州立大学の学際的なコラボレーションの成果です。
ビジュアルアートの大学生と大学院生のチームがラボのプログラマーと協力してゲームのグラフィックをデザインしました。
「各キャラクターの視線を正確に再現し、人間の動きを模倣する必要がありましたが、これは非常に難しいことでした。
ゲームを繰り返しテストしてフィードバックをもらったことで、チームは科学者として何をしたいのかを理解することができました。
これは、プロジェクトのリソースとスケジュールの制約の中での、総合的な共同作業でした」
この研究では、自閉症スペクトラムの子どもたち40名を、この療育をうける人、うけない人で無作為に分けました。
療育をうける子どもたちは、週に3回、10週間にわたり、自宅でこのゲームを30分間プレイしてもらいました。
10週間後、療育をうけた子どもたち人間の視線の手がかりに対する感度が高まったが、うけなかった子どもたちはそうではありませんでした。
「十分な量のゲームプレイを経験した参加者は、他の人からの視線の合図を知覚して解釈する能力など、大きな改善を示しました」
人の視線の手がかりの改善は、ゲーム以外の場面でも発揮されました。
「人の写真や動画を参加者に見せても、このゲーム療育を受けた子どもたちは視線の合図が増加したことがわかりました」
しかし、本研究で最も重要な発見は、このゲーム療育をうけた子どもたちが社会性の向上を示したことであす。
それは、彼らの親たちが報告しました。
「ゲームで視線を理解する能力が最も向上した子どもは、それに伴って社会性も向上していることがわかりました」
さらに、研究者たちは研究期間中、ゲーム療育をうけた子どもたちはずっと続けることができたことを伝えています。
「子どもたちは、このゲームが大好きになって、興奮してプレイしていました」
この研究プロジェクトの第2段階では、ゲームの改良を行い、学んだスキルが実際の会話に反映されるかどうかを調べます。
(出典・画像:米ペンシルバニア州立大学)
ゲームには娯楽以上に、うまく使えばこうした力があります。
楽しくゲームをして、成長していく。
こんな療育方法もますます増えていくといいなと願います。
(チャーリー)