- 自閉症の子どもはなぜ他人の気持ちを見誤るのか?
- 自閉症の子どもは顔の表情をどのように認識しているのか?
- 自閉症の子どもが感情を理解するための効果的なアプローチは何か?
自閉症の子どもが他人の気持ちを見誤るのは、背景にある感情を識別するために文脈を利用していないからだという研究結果が発表されました。
今回の研究は、自閉症の子どもたちが、ある感情が、文脈上の手がかりからしか識別できない別の感情を隠している場合に、それを認識できるかどうかを調べた初めての研究となります。
例えば、娘の結婚式に出席した男性が、悲しくて泣いているのではなく、うれしくて泣いているというような場合です。
感情表現と感情の違いを見極めることは、社会的な交流を効果的に行うために不可欠なツールであると研究者たちは言います。
英アングリア・ラスキン大学の心理学上級講師、スティーブン・スタッグ博士は次のように言います。
「自閉症の子どもたちは、顔の感情を認識できないのではなく、顔の手がかりに頼りすぎて、文脈的な手がかりが損なわれているために、他人の感情を誤って判断している可能性があることが示唆されました。
実際に、自閉症の子どもたちは、顔の感情の静止画像を認識する能力は通常の発達段階にある子どもたちと同じように高いことがわかりました。
しかし、日常生活の中で、顔の表情は何もないところに表示されるわけではありません。
そのため、感情を正確に認識するためには、顔の表情と文脈上の手がかりの両方を処理する必要があります」
この研究には13歳から15歳の、自閉症の子とそうでない子の20名ずつが参加しました。
2つのセクションに分かれた実験です。
まず、恐怖、怒り、幸福、悲しみ、嫌悪、驚きといった静的な感情を示す人々の写真を見せました。
その結果、どちらのグループの子どもたちも同じように正しい感情を識別することができました。
続いて、6本の短編映画を見てもらいました。
この映画では、登場人物がその場面の状況に合った表情をしていました。
登場人物は、シーンの後半で、先ほどの表情を覆い隠すような表情を見せましたが、そのシーンの文脈では社会的に受け入れられる反応として理解できました。
あるシーンでは、俳優がコーヒーを買うと、別の俳優が彼にぶつかり、コーヒーをこぼしてしまいます。
主人公は、最初は怒った顔をしていますが、謝罪を受けた後は強制的な笑顔を見せます。
この実験では、2つのグループのスコアに統計的な差は見られませんでしたが、映画の中で表現されている感情を識別するように求められた場合、自閉症の子どもたちは俳優がどのように感じたかを正しく言うことができませんでした。
例えば、コーヒーをこぼした後に飲んでいる男性のつくり笑顔を、「幸せ」と認識していました。
スタッグ博士はこう言います。
「私たちの研究では、自閉症の子どもたちは、俳優の気持ちを表現するように言われると、苦労しました。
これは、自閉症の子どもたちが、物語と表情を統合することが難しく、目に見える感情だけで判断してしまうからだと考えられます。
これは、文脈などのより複雑な刺激は、処理能力に与える認知的要求が高いことが一因だと考えられます」
この研究成果究成果は”Journal of Autism and Developmental Disorders”に掲載されています。
(出典:英Advertiser)(画像:Pixabay)
自閉症の方とそうでない方との間で、表情に対して「誤解」が生ずる可能性がある。
それは程度の差はあっても、自閉症の有無に関係なく誰との間でもありそうなことです。
見ず知らずの人とでは難しいと思いますが、そうでなければ、誤解がある前提であったほうがコミュニケーションがうまくいくかと。
(チャーリー)