- 自閉症診断の増加は、実際に自閉症の発生率が増加しているのか、それとも認知度が上がったためなのか?
- 自閉症診断の増加が女性や成人で起きた理由は何か?
- 自閉症の診断が増えるにつれて支援体制はついていけているのか?
英国では自閉症と診断される人の数が過去20年間で、787パーセントの増加、つまり約8倍になったことが新しい研究で明らかになりました。
1998年から2018年の間に急激に増加したのは、男性よりも女性の方が多く、大人の間で最も増加していました。
研究者らは、イングランドの900万人以上の医療記録から、自閉症の人の数を調べ比較しました。
“Journal of Child Psychology and Psychiatry”誌に掲載されたこの研究結果によれば、2013年にその診断名が正式に廃止されるまで、知的障害を伴わない自閉症の一種であるアスペルガー障害の診断が適用されるケースが増えていました。
研究では、この大きな増加の原因は診断することが増えたことが原因ではないかと考えています。
本研究は、自閉症診断の傾向を20年間にわたり、発達段階、重症度、および性別ごとに分析した初めての研究です。
自閉症診断の増加率がサブグループ間で異なっていることから、自閉症の発生率が実際に増加している可能性は否定できないものの、主に自閉症についての認知が広まったことが影響していると考えられます。
そして、2009年に導入された英国の成人向け診断施設への投資政策が、成人診断の増加を支えているのかもしれません。
英エクセター大学のジニー・ラッセル教授はこう言います。
「自閉症が成人や女性で実際に増加するもっともらしい理由は見当たりません。
今回の研究では、実際に発達障害の人が増えたのではなく、自閉症の認知度が上がったことによる変化だと考えられます。
しかし自閉症は、発見を待っている大陸のようなものではありません。
自閉症の定義が時代とともに変化してきました。
20年前には女性や大人が自閉症だと思われることはあまりありませんでした。
慈善団体の活動やメディアの報道に加え、政策の変更により、成人になって診断することが増え、多くの女性や少女が自閉症と診断され、それが知られるようになりました。
その結果、現在は自閉症の診断の需要がかつてないほど高まりました」
今回利用した英国の医療データでは、2018年に自閉症と診断された人は65665人でした。
また、時間の経過とともに診断の年齢が上昇していることも浮き彫りになりました。
低年齢の子どもの自閉症の診断は明らかに難しいものとなっており、それは家族のペースで進める必要があることがその理由だと考えられます。
また、神経多様性運動や親を中心としたロビー団体による活動により、自閉症に対する偏見が小さくなり、支援を受けるために自閉症の診断の需要が高まりました。
それは現在の医療機関の対応能力を上回っている可能性があります。
自閉症はこれまで一般的に「男性」の障害として考えられてきましたが、今では女性も診断することを勧められるようになりました。
今回の研究から、男性に比べて女性の診断数が顕著に増加していることから、こうした取り組みが効果を上げていると考えられます。
これまで見過ごされてきた人が、そうでなくなってきたのは良いことです。
必要とする人に適切な支援がなされるようになる。
増加したことは悪いことではなく、むしろすごく良いことです。
(チャーリー)