- 乳児が物をおかしな感じに見ることが、後に自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断される可能性につながるのか?
- 異常な視覚行動とは具体的にどのような行動を指すのか?
- 乳児の早期物への関心が自閉症と関連しているのか?
生後9カ月以上の乳児が物をおかしな感じに見ることが、後に自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断される可能性につながることが、米カリフォルニア大学デービス校の研究で明らかになりました。
物をおかしな感じに見る、異常な視覚行動は、以下のように定義されます。
- 目尻で見ている
- 顔を物体に近づけて見る
- 片目を閉じて見る
- 10秒以上、ずっと途切れることなく見つめる
本研究の筆頭著者である、カリフォルニア大学デービス校精神医学・行動科学科およびMIND研究所のメーガン・ミラー准教授はこう言います。
「異常な視覚行動は、長い間、自閉症との関連が指摘されてきましたが、生後9カ月前までの早い時期にはまだありませんでした」
この研究は”Journal of Abnormal Psychology”誌に掲載されています。
「この研究結果は、自閉症の主要な理論を裏付けるものであり、乳幼児が物に過度に集中することで、人への関心が犠牲になっているのではないかという仮説を支持します。
本研究は、自閉症に特徴的な社会的症状が現れる前に、物を異常に見ることがあることを示唆するものです」
米国では、子どもの54人に一人が自閉症です。
また自閉症の子どもの弟妹は、約5人に一人の割合で、自閉症と診断されるリスクが高いとされています。
研究者らは、兄姉が自閉症である89人の乳児(自閉症の高リスク群)と、定型発達の兄姉を持つ58人の乳児(低リスク群)を評価しました。
生後9カ月、12カ月、15カ月、18カ月、24カ月、36カ月の乳児を対象に、物を使ったさまざまな遊び方を測定しました。
その結果、生後早期に物への関心が高まることは、自閉症の子どもによく見られる社会的関与行動が減少することと関連していました。
各評価セッションの後に、各乳児の社会的関与行動を評価しました。
乳児のアイコンタクトの頻度、他者への笑顔の頻度、社会的反応の全体像などを測定しました。
また、対象物の異常な視認、回転、旋回などの行動をとった回数も集計しました。
回転行動とは、物を落としたり、投げたり、操作したりして、回転させたり、ぐらつかせたりすることです。
36カ月時点で、乳幼児は3つのグループに分類されました。
- 自閉症と診断される可能性が低い58人
- 自閉症と診断される可能性が高い72人
- 自閉症と診断された17人
調査の結果、自閉症と診断された乳児は、通常とは異なる視覚検査の違いが最も顕著で、一貫性があり、最も早くから存在していることがわかりました。
9ヶ月の時点で、自閉症と診断されていた乳児は、他の両グループよりも高い頻度でこの行動を行っており、この行動はすべての年齢で高い割合で継続していました。
回転行動の頻度の違いは、後になって現れるものでした。
そして、より時間的に限定されたものであり、乳児の自身の自閉症診断ではなく、自閉症の兄姉をもつことと関連していました。
本研究の主任研究者である、カリフォルニア大学デービス校精神医学・行動科学科およびMIND研究所のサリー・オゾノフ教授はこう言います。
「生まれてから早い時期に物に注目することは、社会的行動に悪影響を及ぼす可能性があります。
本研究で得られた知見は、物を異常に視覚的に探索することが、自閉症の早期診断、診断ツールとして有用であることを示唆しています」
(出典:米カリフォルニア大学デービス校)(画像:Pixabay)
うちの子も小さなころから、目尻で見る、横目で見る、様子があります。
早期療育のために、こうした研究が進み、共有されることを期待しています。
人形には自閉症の子どもたちの注意をひきつけ維持させる力がある
(チャーリー)