- テクノロジーを利用した虐待を受ける認知障害や知的障害を持つ女性は、どのような支援を求めているのか?
- 虐待の加害者がテクノロジーを悪用する事例を防ぐために、どのような対策が必要なのか?
- 支援者や関係者が虐待の被害に遭っている女性を理解し、サポートするためには、何が大切なのか?
認知障害や知的障害を持つ女性が、テクノロジーを利用した虐待を受けることが増えています。
女性の行動を監視し、その動きを追跡したり、裸の画像を見せるよう促したりすることが起きていることが、オーストラリアの新しい研究で明らかになりました。
携帯電話、スマートフォン、ソーシャルメディア、出会い系アプリ、さらには車いすにこっそり取り付けられたGPSデバイスなどが、女性を「犠牲にし、支配する」ために利用されています。
研究者たちは、知的障害のある女性や彼女たちをサポートするドメスティック・バイオレンス・ワーカーから、加害者が家庭の照明をコントロールしたり、個人情報を開示すると脅したり、さらには補聴器をいじったりする事件について、直接話を聞きました。
オーストラリアの擁護団体イーセフティー・コミッショナーから委託され、豪クイーンズランド工科大学(QUT)が、知的障害のある女性への虐待に関しての研究調査を行い、社会の彼女たちに対する認識の「大きなギャップ」を埋め、彼女たちの権利を守ることにつながる、ツールの開発を行いました。
ジリアン・オブライエンは、過去9年間にわたり、豪ブリスベンで認知・知的障害のある女性を、虐待や性的暴力から守るための支援活動を行ってきました。
「私たちが目にする最も顕著なものは、画像に関連する虐待です。
パートナーや元パートナー、見ず知らずの人たちが、ソーシャルメディアで女性を探し出し、
画像や動画を送るように圧力をかけてくるものです」
オブライエンは、QUTの研究パートナーである知的障害や学習障害をかかえる人たちの支援団体で、性暴力からの守る活動を行っています。
「障害のある女性も年齢にあわせ、性的関係を持つ権利やセクスティングをする権利があります。
しかしそれには、強制や圧力を受けずに、十分な情報を得た上で選択できることが必要です」
オブライエンは、GPS追跡装置が車や車椅子に付けられたり、おもちゃに隠されたりすることが「ますます一般的になっている」と述べています。
虐待の加害者が会話や行動を監視するために使用する機器としてベビーモニターも利用されています。
今回の研究を主導したブリジット・ハリス准教授によると、障害のある女性は一般の人たちよりもかなり高い確率で暴力を経験し、より深刻な影響を受けているといいます。
「私が驚いたのは、認知障害や知的障害を持つ女性が、いかに沈黙し、そして見過ごされているかということです。
彼女たちは、自分の能力や信頼性について、偏見に満ちた思い込みに遭遇することが多く、それが加害者に利用されてしまうのです」
今回の研究調査によれば、知的障害のある女性も、娯楽、ゲーム、出会い、銀行、フィットネス、健康管理など、生活のさまざまな場面でテクノロジーを利用していることがわかっています。
ハリス博士はこう言います。
「テクノロジーの使用をやめろというのは現実的ではありません。
それは、彼女たちの生活や孤独に与える影響を無視しています」
ハリス博士によれば、話を聞いた女性たちはテクノロジーを用いた虐待の被害にあっていることを言っても信じてもらえなかったり、そのために、子どもの親権を失うことつながるのではないかと恐れていました。
イーセフティー・コミッショナーは、こうした障害のある女性が助けを得られるように、サポートワーカー向けのビデオ、ポスター、会話のきっかけなどを開発、提供しました。
イーセフティー・コミッショナーのジュリー・イマン・グラントは、今回の大学の研究によって、実際に求められる、役に立つ支援ツールの種類が明らかになったと言います。
「ドメスティック・バイオレンス・ワーカーと障害者サポート・ワーカーに、テクノロジーによって促進される虐待がどのようなものかを見分ける訓練をする必要があります」
そして、障害を持つ俳優を起用したビデオが今回作成されました。
サポートワーカーがクライアントと一緒に見られるようになっています。
このビデオは、夫に行動を監視されながらも、子どもの親権を奪われることを恐れる母親のケース、職員に裸の撮影を迫られたグループホームで生活する女性のケース、騙されてソーシャルメディアで男性の友人と裸の画像を共有した女性のケースなど、今回の研究調査で明らかになった、実際にあったさまざまな虐待のシナリオを取り上げたものになっています。
特別支援学校の夏休み前に、SNSでこうした被害があることを伝える注意喚起のプリントをもらったことがあります。
自分勝手な欲望を満たすために、人の弱みに付け込む。
絶対に許せません。
こうした被害があることを広く認識し、そして多くの人に、そんなことから守る意識をもって頂きたいと願います。
(チャーリー)