- 自閉症と不眠症の遺伝的要因は重なっているのか?
- 環境的要因が自閉症と不眠症に与える影響はあるのか?
- 自閉症や不眠症の親族もリスクを抱えている可能性はあるのか?
自閉症の人とその親族を対象とした新しい研究によれば、自閉症に影響を与える遺伝的要因は、不眠症の原因となる遺伝的要因と重なる可能性があることがわかりました。
一方、自閉症と不眠症の環境的な影響については、重なりはほとんど見られません。
スウェーデン・ストックホルムにあるカロリンスカ研究所の精神科疫学研究者であるマーク・テイラーは、今回の結果は、自閉症と睡眠問題が頻繁に併発することの説明に役立つだろうと述べています。
これまでの研究では、自閉症の人の最大90パーセントが睡眠に問題をかかえており、約30パーセントは睡眠障害と診断されています。
「自閉症の人がかなり一般的に不眠症と診断され、睡眠を助けるためにメラトニンを処方されていることが示されています。
今回の研究では兄弟や親戚も対象としました。
そして、自閉症の人の親戚も不眠症を発症するリスクが高いことがわかりました」
そう、テイラーは言います。
今回の研究には参加していない米スタンフォード大学の精神科・行動科学のフィリップ・モーレン准教授は、自閉症と不眠症が重なることが多いことから、自閉症の人の睡眠問題を診断し、治療することの重要性を強調します。
「睡眠の問題が見過ごされています。
実際には、睡眠不足は脳の発達に影響を与え、自閉症の特徴の重症度にも影響を与えます」
テイラーらの研究チームrは、スウェーデンの国民健康保険登録簿を用いて、50097人の自閉症の人と、その約56000人の両親が同じきょうだい(一卵性双生児60人、二卵性双生児340人を含む)、31699人の異母きょうだい、214665のいとこを特定しました。
また、比較対象とする500970人(性別や年齢は一致しない)のデータも分析し、不眠症と診断された人や、メラトニンを服用した人を特定しました。
メラトニンは、スウェーデンでは2021年5月に市販されるまでは処方箋が必要でした。
自閉症の人の23パーセントが不眠症を患っていたり、メラトニンを服用していました。
一方で、比較対象とした人たちでは1.1パーセントしかいませんでした。
さらに、自閉症者の親族も不眠症になる確率が高く、近親者であればあるほど、その確率は高くなっていました。例えば、一卵性双生児の場合、不眠症になる確率は通常の6.6倍であるのに対し、いとこの場合は通常の約1.3倍でした。
また、スウェーデンで現在行われている双子研究での30558人の一卵性双生児と二卵性双生児のデータでの分析も行ったところ、同様の結果が得られました。
このデータに含まれる423人の自閉症の双子のうち、39パーセント不眠症でメラトニンを処方されていたのに対し、自閉症ではない双子では、それはわずか4パーセントでした。
研究チームは、双子の片方が自閉症または自閉症の特徴を持つ場合、もう片方の双子が不眠症であることが多いことも発見しました。
この傾向は、遺伝子の半分しか共有していない二卵性双生児よりも、ほぼすべての遺伝子を共有している一卵性双生児の方が顕著でした。
また、遺伝的要因の共有が相関の94パーセントを占めたのに対し、環境的要因の共有はわずか6パーセントでした。
この研究は、米国の科学誌”Journal of Child Psychology and Psychiatry”に掲載されました。
米フィラデルフィア小児病院の自閉症統合医療プログラムの臨床委員長であるアマンダ・ベネットはこう言います。
「自閉症と睡眠障害の遺伝的な相関関係を発見したことは、私たちが医療の現場でよく見ていることを裏付けるものです。
自閉症と睡眠障害の併発を予測し、積極的に対処するための遺伝子変異を発見できれば、いつかは診断方法を大きく変えることもできるでしょう」
テイラーの研究チームは、自閉症やその他の特性と、不安、うつ病、統合失調症、双極性障害などの精神疾患との併発を調べています。
感覚過敏、多動性、不安などのいくつかの特徴は、自閉症の人の睡眠不足の原因となり、自閉症と遺伝的に相関していると言います。
つまり、不眠症は自閉症と遺伝的に直接相関しているのではなく、他の併発する症状と相関している可能性が残っています。
うちの子もなかなか眠らないことがずっと続きました。
生まれてから何年も。
ここ2年ほどはメラトニンや薬を飲むようになり、よく眠るようになりました。
起きているときにぼーっとしている様子もなくなりました。
家族もよく眠れるようになり、とても助かっています。
性同一性障害と自閉症スペクトラム障害を同時に抱えることは多い
(チャーリー)