- 自閉症の症状の重さの変化には個人差があるのか?
- 男の子と女の子で自閉症の症状の変化に違いはあるのか?
- 症状の重症度が変化することがある場合、その要因は何か?
自閉症の男の子、女の子の症状の重さの変化を探る研究が行われました。
“Journal of Autism and Developmental Disorders”に掲載されたこの研究では、約30パーセントの子どもたちが、3歳のときよりも6歳のときのほうが症状が軽くなっていることがわかりました。
また、自閉症の女の子は、男の子に比べて症状の重さが減少する傾向にあり、症状の重さが増加する傾向にはありませんでした。
自閉症スペクトラム(ASD)は、コミュニケーション、社会性、反復行動などの持続的な障害を特徴とする発達障害です。
自閉症は、症状が個人によって大きく異なり、症状の重さも軽度から重度まで様々であることから、スペクトラム障害と考えられています。
エイナット・ワイズバルドーバトロフ研究員らは、自閉症の子どもたちの症状の重さの変化に関しての研究がこれまでにないため、今回の研究を行いました。
自閉症の子どもたちの多くは、時間の経過とともに症状が安定する傾向にあるという研究結果がある一方で、多くの子どもたちが症状の重症度に大きな変化を示しているという証拠が増えています。
そのため、この軌跡を明らかにすることで、自閉症の子どもの症状が増加、減少、あるいは安定する可能性を示す兆しを特定することができるかもしれません。
それは、医師などがどのような子どもにどのような介入プログラムが有効であるかを特定するのに役立ちます。
今回、ワイズバルドーバトロフ研究員らは、”Autism Phenome Project”と呼ばれる大規模な縦断的研究に参加した125人の自閉症の子どものデータを分析しました。
自閉症の男の子が86人、自閉症の女の子が36人のデータです。
3歳頃と6歳頃に、自閉症の症状の重症度と認知能力(IQ)が評価されました。
また、適応機能も評価され、社会性、コミュニケーション、運動能力、日常生活能力のスコアが評価されました。これらの評価は、ASDを専門とする訓練を受けた医師が実施または監督しました。
研究者たちは、最初の評価から追跡調査までの間に、各子どもの症状の重症度がどの程度変化したかを計算し、重症度変化スコアを各子どもに割り当てました。
その結果、重症度の変化が1ポイント以下の「重症度安定群」(54パーセント)、2ポイント以上の「重症度低下群」(29パーセント)、2ポイント以上の「重症度上昇群」(17パーセント)の3つのグループに分けられました。
この結果は、多くの自閉症の子どもが症状の重症度の変化を経験していることを示唆する最近の研究結果と一致しています。
今回対象となった自閉症の子どもたちの約46パーセントに有意な変化が見られました。
次に研究チームは、3つのグループの違いを示す特徴を調べました。
注目すべきは、療育歴が3つのグループ間で違いがなかったことです。
しかし、重症度が低下したグループには、女の子が多く含まれていました。
また、このグループでは3歳のとき、6歳のときの両方で平均IQが高い子どもが多く、6歳のときに適応機能が高い子どもが多くなっていました。
一方、重症度が増加したグループでは、女の子が少なく、平均IQスコアも低く、適応能力も低下していました。
最後に、重症度が安定していたグループでは、男女の比率が同じで、適応能力も安定しており、時間の経過とともにIQが上昇する傾向が見られました。
また、今回の研究でわかった、女の子が男の子よりも症状の重症度が減少する傾向が強く、増加する傾向が低いことは驚くべきことだと研究チームは述べています。
自閉症の女の子たちが、自分の症状をマスキングする傾向が強いことと関係しているのかもしれません。
マスキングとは、社会的な場で自分の症状を隠すという対処法のことをいいます。
今回の研究では、女の子たちがすでに症状をカモフラージュする術を身につけており、症状が軽減しているように錯覚させているだけかもしれません。
研究チームは、今後の追跡調査でさらに縦断的な関連性を調べ、自閉症の女の子と男の子で症状の重症度が異なる理由について、より深い洞察を得たいと考えています。
測定した限りでは、女の子の自閉症の程度は成長するにつれ、軽くなった。
ということです。
その原因はマスキングによるものかもしれず、本当はそうとは言えないかもしれないことも言及しています。
つねにその可能性をもって、必要なときには適切な支援がなされることを願います。
発達障害の人の「マスキング」大きな代償が必要なマスクはとろう
(チャーリー)