- 自閉症の子どもたちの学業成績を向上させる方法はありますか?
- 注意力を鍛えるトレーニングが自閉症の子どもたちにどのような影響を与えますか?
- 効果的な注意力トレーニングプログラムはどのように構成されていますか?
自閉症の子どもたちへの注意力のトレーニングが、学業成績が大幅に向上させるという研究結果が発表されました。
英国のバーミンガム大学とブラジルのサンパウロ大学の研究者らは、8歳から14歳の自閉症の子どもたちを対象に、基本的な注意力を鍛えるためのコンピュータを使ったプログラムに参加してもらいました。
その結果、参加した子どもたちは、トレーニングを受けた直後と3ヶ月後の評価において、算数、読み書き、全体的な注意力の向上を見せました。
この研究成果は”Autism Research”に掲載されました。
主任研究者であるバーミンガム大学人間脳健康センターおよび心理学部のカーメル・メボラッチ博士はこう言います。
「自閉症の人たちが、社会との関わり方などに加えて、注意を払う方法に注目し始めたのは、ごく最近のことです。
注意は基本的な認知プロセスであり、それをうまくコントロールすることで、他の行動や学習能力にも影響を与えます」
今回の研究には、小児専門の治療施設であるサンパウロASDリファレンスユニットで、自閉症スペクトラム障害(ASD)をかかえる26人の子どもたちが参加しました。
子どもたちは、45分間のトレーニングセッションに週2回、8週間参加しました。
このプログラムは、バーミンガム大学がイスラエルのテルアビブ大学の研究者と共同で開発したもので、CPAT(Computerised Progressive Attentional Training)と呼ばれています。
比較対象となる子どもたちには、通常のコンピューターゲームをプレイしてもらいました。
この試験は、子どもたちやその家族、評価する研究者のいずれにも、どちらのグループに属するかがわからないように行われました。
子どもたちには「学校で役立つゲームをするんだよ」とだけ伝えられました。
トレーニング終了直後、CPATに取り組んだ子どもたちのグループは、10分間で正確に識別する単語の数に改善が見られました(約44語から約53語に増加)。
また、書き写しできる単語の数も約18から約25に増加しました。
算数では、CPATに取り組んだ子どもたちのグループのスコアは50パーセント以上、向上しました。
これらの向上は、プログラム終了から3カ月後の再テストでも維持されました。
対照的に、CPATに取り組まなかった比較対象の子どもたちは、いずれにおいても改善の兆候が見られませんでした。
CPATプログラムは現在、ギリシャ、スペイン、イスラエル、英国のパートナーが参加するTTAA(Teacher Training in Attention in Autism)Erasmus+プロジェクトで開発が進んでいます。
各国の学校でパイロットプロジェクトを実施しており、教師が最適と思う方法でプログラムを導入できるようにしています。
メボラッチ博士はこう言います。
「先生方にCPATを自由に試していただくことで、その潜在的な効果がより明確になることがわかりました。
自閉症は個人差が大きいため、特定の個人や環境に合わせた方法を開発することが、成功の鍵となります」
この研究の次の段階は、より大規模な臨床試験を実施し、潜在的な影響を確立することです。
CPATの特徴や主な内容について、広く知られるように、今後わかりやすくお伝え頂けることを期待しています。
(チャーリー)