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女の子の自閉症の診断を見落しを減らす。脳と遺伝子の性差研究

time 2021/06/04

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

女の子の自閉症の診断を見落しを減らす。脳と遺伝子の性差研究
  • 自閉症の女の子と男の子では脳の活動に違いがありますか?
  • なぜ自閉症の女の子は自閉症の男の子より少ないのですか?
  • 自閉症の診断が女の子には見落とされることがありますか?

自閉症の女の子と自閉症でない女の子の脳の違いは、自閉症の男の子と自閉症でない男の子の脳との違いとは異なることが、新しい研究で明らかになりました。

この性差は、発達初期の遺伝子発現パターンの違いに起因すると考えられます。

今回の研究成果は、自閉症の生物学的ルーツが性差に表れるいう考えを裏付けるものです。
このような違いは、自閉症の女の子が少ないことを説明するのに役立ち、また、女の子の自閉症の診断を見落とすことを減らす可能性もあります。

米ジョージ・メイソン大学心理学のアリソン・ジャック助教授は、自閉症の女の子の脳活動や特徴をより深く理解することで、医師が自閉症の女の子をより簡単に診断できるようになり、女の子が極端に少ない偏りを減らせるかもしれないと述べています。

2016年の研究によれば、人が歩いているような「生物学的な動き」を印象づける動くドットの動画に対して、自閉症の男の子と自閉症でない男の子の脳は異なる反応を示しました。

今回の新しい研究では、同じ動画を使って、自閉症の女の子と自閉症でない女の子の脳活動の違いを調べました。

研究チームは、45人の自閉症の女の子と47人の自閉症の男の子、そして同数の自閉症でない男の子と女の子の子どもたちがビデオを見ているときに、脳をスキャンしました。
参加した子どもたちの年齢は8歳から17歳です。

その結果をジャック助教授はこう言います。

「自閉症ではない女の子の脳ではすべての部分が活性化していたのに対し、自閉症の女の子の脳はそれほど広く活性化されていませんでした。
この違いは、『感覚運動領域』と『線条体(社会的報酬の処理に関わる脳領域)』の一部で特に顕著に見られました」

自閉症の男の子と自閉症でない男の子との間では、このような違いは見られませんでした。
実際には、2016年の研究で報告されたような違いも見られませんでした。
おそらく、新しい研究ではより正確な方法になったためではないかとジャック助教授は言います。

研究チームは、研究参加者のDNAサンプルを調べ、彼らの遺伝子に希少な変異がないかどうかも調べました。
その際、コピー数変異(CNV)の大きさに着目しました。
CNVとは、染色体の一部が複製されたり削除されたりすることです。

今回の研究に参加した、米イェール大学小児科のアバ・グプタ助教授はこう説明します。

「CNVが大きければ大きいほど、より多くの遺伝子要素が破壊されていることになります。
つまり、より多くの遺伝子や、遺伝子発現に重要な非コード領域が破壊されている可能性があるということです」

研究チームは、死後の脳組織から調べた遺伝子発現パターンのデータベースである「BrainSpan atlas」を用いて、自閉症の女の子と自閉症でない女の子とで反応の違いがある領域について、胎児期および生後2年間に発現した遺伝子を含むCNVを同定しました。

その結果、自閉症の男の子と比べて、自閉症の女の子は平均して大きなCNVをもっていました。

それは、これまでの知見を裏付ける結果です。
この結果は、自閉症の特徴を示すためには、女の子は男の子よりも大きな遺伝子の影響を必要とするという、女性保護効果の理論を補強するものだと、ジャック助教授は説明します。

この研究に参加していない、米カリフォルニア大学デービス校MIND研究所のクリスティーヌ・ウー・ノーダール准教授は、「女性保護効果を意味のある形で評価するための重要な一歩だ」と述べています。

女の子では、発達初期に線条体で発現する遺伝子を含む、大きなCNVを持っていることが、自閉症となる主な原因であることがわかりました。

この研究成果は”Brain”誌に掲載されています。

「画像解析の結果は非常に興味深いものです。
遺伝学的な結果も同様です。
全く異なる二つのアプローチから結論づけられたことで、自分たちの結果には自信が持てます」

そう、グプタ助教授は言います。

今回の研究に加わっていない、カナダ・トロント大学の精神医学のメンチュアン・ライ助教授は、今回の研究の限界として、自閉症との関連が知られているかどうかにかかわらず、すべてのCNVを対象としたことを挙げています。

「これでは、どのように臨床に結びつければよいのかという問題があります」

もう1つの問題は、今回の結果が生物学的運動課題に特有のものであるかどうかだと、ライ助教授もノーダール准教授も指摘します。

「それが、どのようにして感覚処理に作用しているのでしょうか?
実行機能にはどう作用するのか?」

これらはすべて、この分野全体にとっての疑問であり、他の研究者も調べる必要があるとライ助教授は言います。

今回の研究を行ったジャック助教授、グプタ助教授らは、自閉症の女の子と自閉症でない女の子との間で線条体と他の脳領域との結合性がどのように異なるか、また、非典型的な遺伝子発現がどのようにこれらの違いに寄与しているかについて、さらに研究を続けています。

また、自閉症をできるだけ早期に発見するために、これらの知見をより侵襲性の低い技術にどのように応用できるかも研究する予定です。

(出典:米SPECTRUM)(画像:Pixabay

自閉症の女の子は少ない。そうした自閉症の男の子との違いには次の原因があった。

 

①自閉症の女の子はそうでない女の子と比べて、脳の「感覚運動領域」と「線条体」の活動がとくに違う

→ これは自閉症、自閉症でない男の子との違いとも異なる。

②自閉症の女の子は「線条体」にも関わる、より多くの遺伝子要素が破壊されていた

→ 自閉症の特徴を示すためには、女の子は男の子よりも大きな遺伝子の影響を必要とする「女性保護効果」の理論を補強。

 

そうしたことがわかったという研究です。

自閉症の女の子を見過ごさない診断、それに役立つ研究がますます進むことを期待します。

自閉症と診断された母は72歳。もっと早く診断されていれば

(チャーリー)


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