「僕の脳はアンディの脳と同じように働いているんだ」
そう、7歳の息子が去年私に言いました。
アンディは息子の友だちで、自閉症です。
私は知っていましたが、当時、息子は自分が自閉症であることは知りませんでした。
なので、愕然としました。
その頃、私は自閉症という診断結果にまだ納得できていませんでした。
そして、いつ、どのようにして息子にそのことを伝えれば良いのかもわかりませんでした。
息子に自閉症であることを伝えるべきでしょうか?
私は、Facebookのグループで質問しました。
回答を読んでいるうちに、最初から率直に話すべきだという意見に惹かれました。
「なぜ言わないのですか?
恥ずかしいのですか?」
若い自閉症の男性の方は、そうコメントしていました。
息子に伝えよう。
息子のニューロダイバージェンスを誇りにしよう。
自閉症を祝い、自閉症のコミュニティに参加しよう。
私はそう決めました。
息子に自閉症だと診断されたことを伝えたのは、ある朝、一日を始める前にベッドに入ってきた息子を抱きしめたときでした。
私は、この静かな時間が息子に伝えるのに良い機会だと考えました。
「最近、ローズマリーに会ったことを覚えてる?」
「はい」
「彼女はあなたにたくさんの質問をして、あなたと一緒にゲームをしたよね?」
「はい」
「ローズマリーは君が自閉症かもしれないと思ってた」
断定的でない表現を使うことにして、息子が拒否する余地を作りました。
息子は反応しませんでした。
「自閉症という言葉を聞いたことはある?」
「どういう意味?」
自閉症の脳を持つ人は、多くの人とは考え方が違うことを説明しました。
息子は重いため息をつきました。
私は息子を抱きしめました。
「悪いことじゃないよ。
考え方が違う人がいるのはいいことだよ。
たくさんの自閉症の人たちが、いろいろな素晴らしいことをしている。
そして、他の自閉症の子どもたちもたくさんいるよ」
「たとえば誰?」
私は困ってしまいました。
息子には自閉症の友だちが何人かいます。
しかし、その子たちの親は自閉症であることを伝えていないからです。
私はその子たちの名前を教えて、自閉症であることを教えることはできませんでした。
私の友人のアマンダは、最近、髪を切ってもらっているときに、ある人が「知的障害か自閉症」と表現されている会話を耳にしました。
アマンダは、娘のイービーに自閉症であることを伝えられないのは、こうしたことがあるからだと言います。
「多くの人が娘をきちんと見ようとせず、自閉症ということだけで判断するのが怖いのです。
すべての人が思いやりを持っているとは思えません」
また、アマンダは娘のイービーが自分自身について違った考え方をするようになって、自分の可能性を狭めてしまうのではないかと心配もしています。
しかし、それらが間違っていると思ったときには、自閉症であることをイービーに伝えたいとアマンダは言っています。
自閉症および神経多様性支援の専門家であるクリスティ・フォーブスは、家族は子どもに自閉症であることを伝える前に、基礎を築く必要があると言います。
「ポジティブな自閉症のアイデンティティは、まず家庭の中で育まれます。
そのためには、自閉症の子どもがポジティブな自閉症のアイデンティティや文化に触れることができるように、家族が時間とエネルギーを費やす必要があります。
自閉症のメンターを見つけたり、自閉症の仲間とのつながりを持ったり、医学的な障害モデルから脱却した物語を一緒に知ったりすることです」
フォーブスは、自分が自閉症であることを知ったことは、大きな変化だったと言います。
「私は自分が多くの点で他の人とは違うことを知っていました。
しかし、自分の違いは弱点であり、克服すべき個人的な課題やトラウマであるとしか考えられませんでした。
私は、自分の中にある本質的な欠陥を克服しようと、あらゆる種類の専門家に相談しました」
最終的に、自閉症を専門とする医療従事者のチームに診てもらい、自閉症と認められたとき、フォーブスは生まれて初めて「普通」だと感じたと言います。
「私は、自分が多くの人のなかでの壊れたバージョンではなく、完全に『完全な自閉症の人』であることを理解しました」
もっと早く診断を受けていれば、何度も自殺未遂を起こしたり、薬物やアルコール中毒になることもなかっただろうとフォーブスは今考えています。
「自分が自閉症であることを知ることは、自分に合ったライフスタイルを設計することになります。
それは自分が成長するのに役立つ方法で構成できるということです」
心理学のトニー・アトウッド教授は自閉症は「欠陥」ではなく、「左利き」と同じような違いだと表現しています。
また、自閉症であることを伝えるタイミングとしては、「子どもが自分が仲間と違うことに気づき、感じ始めたとき」が良い。
そうすることで、知らないことに起因する不適応な行動を防ぐことができるといいます。
アトウッド教授はこう言います。
「自分が人と違うことに気づいたとき、二つの内発的な反応が起こります。
まず、『自分には何か問題があるのではないか』という憂鬱な気持ちです。
そして、想像力に逃避したり、社会的・学習的な出来事を無視したりすることです」
アットウッド教授は、子どもに自分が自閉症であることを伝えることに躊躇する親の気持ちは理解できるといいます。
しかし、自分の診断名を知らないと、自閉症の人たちが自分の本当の性格を隠して周囲に溶け込んでしまう危険性があることを、アットウッド教授もフォーブスも同意します。
「他人を観察し、真似をして、仮面を作ります。
社会に溶け込むための手段として行われますが、疲れますし、偽物です」
そう、アットウッド教授は言います。
フォーブスは、自閉症のアイデンティティを誰と共有するかは、個人の自由だといいます。
アットウッド教授は子どもが幼い場合には、まず先生や祖父母など、知る必要のある人とだけと診断を共有すべきで、他の子どもたちにすぐに知らせる必要はないといいます。
「他の子どもは『僕が退屈にしているのがわからない人間だ』と言うかもしれません。
先生は『ジェイコブは分け合うのが苦手な人なんだ』と言うかもしれません。
それから、誰にいつ話すかを決めればよいのです」
私はよく息子に『ファーガスとデライラ』という本を読んであげます。
デライラはフレンドリーで人気者の女の子です。
物語の中では自閉症のファーガスと仲良くなろうと努力しています。
ファーガスは一人で遊んだり、仲間と違う遊び方をすることが多いです。
ある夜、私は息子に、自分はファーガスに似ていると思うかどうか尋ねました。
息子は「違うよ」と答えました。
「僕はデライラに似ている」
(笑)。
私は息子におやすみのキスをして、電気を消しました。
息子の自閉症のアイデンティティーについてはこれくらいにしておこうと思います。
自分が自閉症であることを息子や他の人に伝えたことが正しかったのかどうか私はまだ疑問に思います。
しかしこれは、発達障害など神経多様性を持つ子どもを持つ親が、子育ての過程で直面する多くのジレンマや悩みの一つにすぎないでしょう。
息子は、自分にはアンディのような頭脳があり、デライラのような性格があると思っています。
成長するにつれて、その自分のアイデンティティが人に愛されていると感じられるか、安全であると感じられるかということが重要になってくるはずです。
そしてそれは、一緒に人生の旅をしていく中で、親の私がこの美しく個性的な少年に絶対に保証できることの一つです。
うちの子は重度の発達障害、自閉症、知的障害もあり、お話することもできません。
いろんなことを考えているのかもしれませんし、考えてもいないかもしれません。
どれだけ、私の言っていることを理解できているのかも正直わかりません。
ただ、たくさんの笑顔が表れるように、これからも一緒に過ごしていきます。
(チャーリー)