- 言語能力を高めるために自閉症の赤ちゃんや兄姉にどのようなサポートが必要か?
- 言語理解能力と視線のパターンの関係はあるのか?
- 言語の療育において、どのようなアプローチが効果的なのか?
自閉症の兄姉がいる赤ちゃんも、大人が話しているときに口元をよく見ているものの、言語学習の効果がうまく得られていないことが新しい研究で明らかなりました。
一方、自閉症の兄姉がいない子は、赤ちゃんのときに話し手の口元をよく見ているほど、幼児の時点で話し言葉をよく理解できている傾向がありました。
この結果は、赤ちゃんの「きょうだい」も含めて、自閉症と診断される可能性が高い子どもたちには、言語能力を高めるために特別なサポートが必要であることを示唆しています。
この研究責任者の米イェール大学のハンナ・フェイナ研究員が2021年国際自閉症学会の年次総会でこの研究結果を発表しました
自閉症の人は、自閉症でない人とは場面や画像の異なる部分を見ていることが多くあることが、これまでのアイトラッキングの研究でわかっています。
そして、赤ちゃんについては特徴的な視線のパターンが、自閉症の診断を予測することにつながることも明らかになってきています。
赤ちゃんがどこを見ているかは、言語学習にも関係します。
自閉症でない乳児は、大人が話しているときにはその口元をよく見て、聞こえる声に関する視覚的な手がかりを得ています。
今回の研究は、生後12カ月の「きょうだい」赤ちゃん90人と、自閉症の兄姉がいない赤ちゃん61人を対象に行われました。
研究チームは、おもちゃに囲まれた中で人が話をしている動画、を見るときの赤ちゃんの視線を追跡しました。
赤ちゃんが画面を見ている時間、そしてそのうち人の顔や口を見ている時間の割合を計算しました。
また、12ヵ月後と18ヵ月後に、赤ちゃんの表現力と理解力のテストも行いました。
その結果、きょうだいの赤ちゃんと自閉症の兄姉がいない赤ちゃんとでは、人の顔を見つめる時間はほぼ同じであることがわかりました。
しかし、きょうだいの赤ちゃんはそうでない赤ちゃんに比べて、18カ月の時点では言語を理解する能力が劣っていました。
また、顔や口を見つめる時間は、自閉症の兄姉がいない赤ちゃんでは言語理解能力と相関していましたが、きょうだいの赤ちゃんではそのような相関は見られませんでした。
共同研究者のイェール大学児童精神医学のカタジーナ・シャワルスカ教授はこう言います。
「きょうだいの赤ちゃんは、そうでない赤ちゃんが言語を話したり理解したりするのに役立つ言語的な手がかりを観察はしても、それを自分のものにできないのではないかという仮説が考えられます。
注意は学習の糧になります。
しかし、注意するだけでは、刺激に関する情報(その構造や価値)が抽象化され、記憶され、利用できるようになるわけではありません」
この理論が確認されれば、自閉症と診断される可能性が高い子どもたちに合わせた、言語の療育を行うことができるようになると、シャワルスカ教授は述べています。
意識して、たくさん声をかけて、お話をする。
親ができることはそういうことだと思います。
うちの子のきょうだいは、人の話を聞いていないこともよくありますが、口は達者です。
(チャーリー)