- 自閉症の人にとって、定期的な社会的交流は何をもたらす可能性があるか?
- きょうだいが自閉症の人の適応機能に与える影響は何か?
- 自閉症の子どものいる家族が考える、きょうだいの存在の影響についてどのような示唆がされているか?
自閉症の人が日常生活を送る上で「きょうだい」がいることが助けになる可能性があることが、新しい研究で明らかになりました。
この研究結果は、今週開催された第2021回国際自閉症学会の年次総会で発表されました。
自閉症の人の多くは、適応機能、すなわち、コミュニケーションや社会性、日常的な作業を年齢相応のレベルで行う能力に困難をかかえています。
しかし、仲間との定期的な社会的関わりは、これらのスキルを向上させるのに役立つことが研究で示されています。
米カリフォルニア大学ロサンゼルス校のキャサリン・ロード研究室の大学院生であるニコル・ローゼンは学会で次のように述べています。
「自閉症の人にとって、定期的な社会的交流は、きょうだい、兄弟姉妹を介して行われることもあります。
とくに、きょうだい関係は一生続くものであり、最も変化に富み、意味のある関係の1つであると考えられます」
きょうだいは、自閉症の人の心の理論的能力や社会的スキルに良い影響を与えると考えられます。
今回の研究では、きょうだいが適応機能にも同様に良い影響を与えることが示されました。
ローゼンは、自閉症の人がこれらの能力を向上させるための「重要な媒体」をきょうだいが担っているのではないかと言います。
ローゼンらの研究チームは、自閉症やその他の発達障害をもつ208人を対象に、9歳から26歳までの間に6回、日常生活能力、年齢に応じたコミュニケーションや社会性を測定する介護者用の質問票に答えてもらいました。
きょうだいのいる参加者は、一人っ子の参加者に比べて、時間の経過とともにそのスコアが向上しました。
研究チームは、自閉症ではないきょうだいに最も近い年齢の参加者は、速い速度でスコアが向上したことも発見しました。
また、同性のきょうだいに年齢が最も近い参加者は、異性のきょうだいに年齢が最も近い参加者よりも、さらに早くスコアが向上していました。
一方、出生順ときょうだいの数は、参加者のスコア向上の速度に影響を与えていませんでした。
また、すべての人種の自閉症の人が、きょうだいがいることで恩恵を受けていましたが、その効果はアフリカ系の人で最も大きくなっていました。
しかし、きょうだいが適応機能に及ぼす影響を調べた初めての研究となるため、人種間の違いの解釈には注意が必要だとローゼンは述べています。
また多くの親は、家族が増えることが自閉症の子にどのような影響があるかを心配していますが、今回の結果は、きょうだいは、大きな助けとなることを示唆しています。
きょうだいが自閉症の子の適応機能を形成するのに助けとなるのであれば、きょうだいにも療育に参加してもらうことで、その力を最大限に発達させることができるかもしれないともローゼンは述べています。
うちの子のきょうだいも何だかんだで、いろいろ助けてくれます。
親としては助かるというよりも、感謝をしつつ、そういう優しい人であることをとてもうれしく思います。
(チャーリー)