- 知的障害は、胎児期の早い段階で起こるゲノムの変化によって引き起こされるのか?
- 知的障害は両親のDNAには変化が見られないのか?
- 知的障害の人の兄弟姉妹が知的障害であるリスクはごくまれなのか?
知的障害は、胎児期の早い段階で起こるゲノムの変化によって引き起こされることがほとんどです。
両親のDNAには変化は見られません。
フィンランドのヘルシンキ大学で行われた研究によれば、知的障害の人の妹や弟が知的障害であるリスクはごくまれなものでした。
さらに、フィンランド人は他のヨーロッパの人と比較すると、遺伝性の発達障害のリスクは高くなく、新しいことを学んだり理解したりすることが難しいという意味での知的障害の率は、人口のおよそ1から2パーセントでした。
重度の知的障害を持つ人は、生涯を通じて、日常生活において他人の助けを必要とします。
このような障害は、遺伝子の変化や外的要因によって引き起こされます。
推定では、知的障害の原因となる遺伝子は約2500個あり、そのうち約半数は未解明です。
近年、ゲノムの全塩基配列を解読する技術が進歩したことにより、知的障害の診断法が向上しました。
これらの技術は、他の診察や検査では見つけられない知的障害の原因を特定するのにも役立ちます。
また、エクソームシーケンス、つまりゲノム上の遺伝子のタンパク質をコードする領域の塩基配列を決定することで、新たな病原性遺伝子変異の同定も可能となります。
遺伝子を特定することは、病気のメカニズムを明らかにし、治療法を開発するための前提条件となります。
ヘルシンキ大学で行われた研究では、エクソームシーケンスを利用して、知的障害の潜在的な遺伝的背景を明らかにしました。
対象となったのは、認知機能の発達が遅れ、明確な原因が特定されていない家族を持つフィンランド人家族です。この結果は”Human Genetics”に掲載されました。
この研究結果では、参加者の64パーセントにおいて、発達障害の原因が既知の知的障害遺伝子であることがわかりました。
そのうち75パーセントは、胎児期に発生したランダムな突然変異と、両親のゲノムには存在しない変異の結果でした。
イルマ・ヤルヴェラ博士はこの研究結果は、多くの家族にとって重要であり、安心できる情報であると言います。
「今回の調査結果によれば、個々の家族の次の子どもに知的障害が再発するリスクは、通常は低いと考えられます」
ヤルヴェラ博士は、知的障害の診断において、主要な検査方法としてエクソームシーケンスを使用することは、十分に正当化されると考えています。
この技術により、障害の原因を従来よりも早く調査することが可能になり、家族が感じる不安や心配が軽減されるだけでなく、医療費の節約にもつながります。
「知的障害の原因とその遺伝性について理解が深まれば深まるほど、このような深刻な障害に直面している家族をよりよく支援することができるようになります」
フィンランドでは、創始者変異と呼ばれる単一遺伝子の欠損によって引き起こされる劣性遺伝性の重篤な疾患が多く、これまでに約40の疾患が知られています。
今回発表された研究では、フィンランド人においても、知的障害の原因として、胎児期に生じた新規変異が最も多いことが明らかになりました。
「フィンランド人は知的障害についての遺伝という点では他のヨーロッパ人との違いはありませんでした。
現代の遺伝子研究に照らし合わせると、フィンランドの病気の遺産はますます希少なものになっているようです。フィンランドで行われている関連研究は、医学的に高い水準にあります」
今回の研究は、フィンランドで知的障害者の治療に携わる医師、ヘルシンキ大学医学遺伝学科、および米国コロンビア大学とベイラー医科大学の協力を得て行われました。
(出典:フィンランド ヘルシンキ大学)(画像:Pixabay)
こうした研究は、困難をかかえるご本人や家族へのよりよい医療的な助けにつながるだけでなく、障害と遺伝の関係についての偏見や思い込みも正すことで助けてくれます。とても感謝します。
(チャーリー)