- 自閉症の人の感覚反応にはどんな遺伝子と環境要因が影響しているのか?
- 自閉症の人が特定の感覚問題に直面している理由は何か?
- 自閉症の感覚問題に関連する遺伝子がもつ情報はどのようにして治療やサポートに役立てられるのか?
自閉症の人の感覚反応について、遺伝子が影響し環境要因が刺激を求める傾向をもたらしていました。
双子による新しい研究でそれが示唆されました。
自閉症では、騒音に過敏に反応したり、特定の手触りを求めたりするような感覚の問題がよく見られます。
自閉症の人の69〜95パーセントがこの問題に直面しているといわれています。
しかし、これらの特徴の根底にある要因は、まだよくわかっていません。
今回の研究では、自閉症の人に見られる特定の種類の感覚の変化が明らかになりました。
そして、これらの特徴の出現における遺伝子と環境が果たす役割を解明しました。
スウェーデンにあるカロリンスカ研究所の女性と子どもの健康部門のジャニナ・ノイフェルド助教授はこう言います。
「この研究は、どこを調べればよいかの手がかりを与えてくれます。
感覚過敏の遺伝子をもっと調べる価値があるでしょう」
今回の研究には参加していない、英グラスゴー大学心理学のデイビッド・シモンズ講師はこう言います。
「感覚処理の違いによって、自閉症の人の中には日常的に影響を受けている人がいます」
今回の研究は、自閉症の人が特に敏感に反応する刺激を特定する道を開くものだと言います。
研究者や医師が自閉症の人の刺激に対する処理がわかれば、治療で変えられること、変えられないことを理解するのに役立ちます。
研究チームは、自閉症の感覚特性に遺伝子と環境がどのように影響するかを調べるために、スウェーデンの133組の一卵性双生児と50組の非一卵性双生児、および1組の非一卵性三つ子を調査しました。
この269名の参加者のうち、60名は自閉症、84名は注意欠陥多動性障害(ADHD)などの発達障害を少なくとも1つかかえています。
残りの125名は発達障害をかかえていません。
研究に参加した双生児たちは「成人/青年期の感覚プロファイル」と呼ばれる質問票に記入しました。これは、参加者が騒音、光、匂いなどの特定の環境の手がかりに気づき、探し、回避し、反応する頻度を測定します。
そしてその親は、社会的応答性尺度を使用して、子供の自閉症の特徴を評価しました。
また、経験豊富な臨床医が2つの異なる診断ツールを使用して双生児たちを評価しました。
一卵性双生児の中で、自閉症の特徴のレベルが高くなると、環境の手がかりを避けたり、気づかなかったりする傾向があることがわかりました。
一卵性双生児はほとんどすべての遺伝子を共有しているため、感覚情報を避けたり気づかなかったりする傾向の違いは、環境要因による可能性が高いとノイフェルド助教授は言います。
また、感覚の問題は自閉症でない発達障害をかかえる人にも共通して見られました。
しかし、自閉症の人は感覚を避ける傾向が特異的に強いことがわかりました。
この研究は”Autism”に掲載されています。
今回の研究は、遺伝子と環境が感覚の違いにどのように影響するかを明らかにするものですが、いくつかの疑問点も残されているとノイフェルド助教授は言います。
例えば、今回の研究では、自閉症の特徴と感覚を求める行動との間に負の関連があることがわかりました。
自閉症の人の多くが、感覚を求めるような行動をとることはよく知られているので、それは予想外の結果だと、この研究に関与していないシモンズ講師は言います。
このような結果になったは、研究チームが使用した感覚に関する質問票は、もともと自閉症における感覚の違いを調べるために作られたものではないために、自閉症に関連する行動のニュアンスを捉えきれていないことを示唆していると指摘します。
「それらの質問が、自閉症の人たちにとって正しい質問になっていたのか疑問が残ります」
ノイフェルド助教授は、今後、遺伝学者と協力して、自閉症の人の感覚に対する過剰反応を引き起こす可能性のある特定の遺伝子に迫る予定です。
また、自閉症の人がどのような環境で嫌悪行動を起こし、機能することが困難になっているのか、特に学校のような環境ではどうなのかをもっと知りたいとも言います。
「自閉症の人がどのような環境で嫌悪行動を起こし、機能しにくくなっているのか、特に学校のような環境ではどうなっているのかをもっと知りたい。
自閉症の人たちが避けているものはいったい何なのか、そして、私たちにできることは何なのか。
例えば、学校の環境でこうした感覚の問題が起きないようにするためにできることを見つけたいのです」
困っていることを理解し、それを減らす、なくす研究にはますます力を入れていただきたいと願います。
(チャーリー)