- 自閉症の人たちにはどんな多様性があるのか?
- 自閉症は「治す」べきものなのか?
- 自閉症の人たちの雇用についてどのような考え方が必要か?
自閉症の子どもは世界で160人に1人と推定されています。
毎年4月2日の「世界自閉症啓発デー」が近づくと、世界各地でブルーのライトアップが行われます。
しかし、自閉症の人たちは置き去りにされてしまうことがあります。
今なお自閉症の人たちは、個別支援、学校、働き口などの面で、障害のない人たちとの格差が続いています。
彼らを置き去りにしないためには、自閉症の人に対して一般的に考えられている以下の3つの誤解を解くことがまず第一歩となります。
第一の誤解:「レインマン」のような人
1988年にアカデミー賞を受賞した映画「レインマン」は、自閉症の人たちを世間に知らしめるきっかけとなりました。
確かに、自閉症のサヴァン症候群にはこのような特徴が見られます。
100年前のカレンダーを記憶したり、独り言を言ったり、体を反復的に動かしたり、常に落ち着きがなく、他人の目を見ることができず、人と関わることを避けてしまう。
しかし、行動、知的能力、言語能力、他人との付き合い方の好みや能力、あるいは自己孤立などは、自閉症の人たちの間でもはるかに多様です。
自閉症の人の中には、知的障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、身体障害などの疾患を1つ以上併発している人もいますが、そうでない人もいます。
従来、自閉症と診断される人数は、男性が女性の6〜7倍と言われていました。
しかし、診断におけるジェンダーバイアスが指摘されるようになってから、その比率は減少しています。
アジア太平洋障害者センター(APCD)タイのネットワーキング・コラボレーション担当のヌヌ・スパアノンは、自閉症をかかえていますが、講演者としても人気があります。
ヌヌは「レインマン」とは全く異なり、この誤解を笑い飛ばしています。
第二の誤解:治すべき
自閉症は「治す」ために努力しなければならない、悲惨な病状であると考えられることがあります。
ここでもヌヌは、この考えを笑い飛ばします。
「自閉症は共に生きていくためのもの」
実際、WHOでは「病気」とはしていません。
「社会的行動、コミュニケーション、言語についてのある程度の障害をかかえ、その人に固有の狭い範囲の関心と繰り返し行われる行動をを特徴とする一連の状態」
と定義しています。
自閉症の当事者研究を行う心理学者のジャック・デン・ハウティング博士は、「ニューロダイバーシティ・パラダイム」という言葉を紹介することで、自閉症を人間の多様性の一部として受け入れることを強調し、それぞれの自閉症の人にあわせたサポートやケアを主張しています。
第三の誤解:雇用は難しい
自閉症の人に対する強い固定観念から、自閉症の人を雇用することは難しいという考えがあります。
しかし、自閉症の人の才能を活用しようとする企業の動きが活発化していることは、その考えの否定となるでしょう。
例えば、世界150カ国で事業を展開するデジタル・マネジメント・ソリューション企業のSAPは、2013年に「Autism at Work Encourages Workplace Neurodiversity」(職場での神経多様性を高める自閉症)を開始しました。
自閉症の人たちが、エンジニアを含むあらゆる職種でトレーニングを受け、雇用されています。
自閉症の兄弟が経営する日本のヘラルボニーは、自閉症の人たちの知覚やデザインの特徴である豊かさ、革新性、既成概念にとらわれない感性を活かし、スタイリッシュな製品としてブランド化するとともに、社会的にも経済的にも優れた事業として展開しています。
自閉症の当事者であるデビッド・サバレーゼはこう言っています。
「インクルージョンはくじ引きではありません」
そして、これまでの優れた事例を共有して見習うだけでなく、自閉症の人の福祉や社会参加を進める上で、社会は包括的な立法と制度、そして人的なサポートが必要です。
アジア太平洋地域における障害者の権利を実現するための「仁川戦略 −障害者インクルーシブ開発に関する地域的使命−」では、自閉症の人がかかえる問題を含めることを明確にし、自閉症の人を支援しています。
ブルーのライトアップは、自閉症についての意識を高めるのに良い方法だと思います。
しかし、このキャンペーンにとどまらず、具体的な変化を生み出すための多くのアクションが起こることを期待しています。
(出典:国連アジア太平洋経済社会委員会)(画像:Pixabay)
誤解はなくなりつつあると思います。
そして、青く照らすことよりも、自閉症、発達障害の人に直接貢献するアクションが行われていくことを願っています。
発達障害などニューロダイバーシティのメリットを企業が得るには
(チャーリー)