- コミュニケーションの困難が自閉症の攻撃性に影響しているのか?
- 自閉症の男の子と女の子で攻撃性とコミュニケーションの関係は同じ?
- 攻撃性の背景にあるものを考慮することで、自閉症の人をどうサポートするのか?
コミュニケーションの困難から、自閉症の男の子の攻撃性を予測する新しい研究結果が発表されました。
自閉症の女の子については、コミュニケーションと攻撃性は関係ないかもしれません。
米ワシントン大学の精神医学・行動科学のエミリー・ノイハウス助教授は、この研究結果が実証されれば、攻撃的な行動をとる少年が必要な支援を受けるのに役立つだろうと言います。
「挑戦的な行動の背景に何があるのか、医療機関や教育者、親がよく考えるきっかけになるかもしれません」
学齢期の自閉症の子の3分の1から3分の2が攻撃性を示します。
攻撃性とは、侮辱や脅迫などの言語的行動と、物的損害や他人を傷つけようとするなどの身体的行動を含みます。
しかし、自閉症の人がこうした行動をとる要因はよくわかっていません。
今回の研究には関与していないベルギーのルーベン大学育児・特殊教育学のイルゼ・ノーンズ教授はこう言います。
「自閉症の人の問題行動を目にしたとき、その行動だけに注目するのではなく、その行動の下にあるものを考えなければなりません。
問題行動自体に焦点を当てるのではなく、その背景にあるものを考え、どうやって助けるかを考えなければなりません」
自閉症の人はコミュニケーションに困難をかかえています。
自閉症の人の約3分の1はほとんど言葉を話しません。
研究チームは、自閉症の人のコミュニケーションと攻撃性の関係を明らかにするために、自閉症の性差に関する多施設共同研究GENDAARのデータの中から、自閉症で言葉を話すことができる8歳から17歳の、80人の男の子と60人の女の子を分析しました。
「これらの子どもたちは、語彙や文法などの中核的な言語能力が高いため、言葉について支援が必要だとは認識されてはいません」
データセットには、各参加者について、言語能力に関する3つの尺度と、攻撃性に関する1つの尺度が含まれていました。
その中の1つであるVineland Adaptive Behavior Scalesは、社会的な場でのコミュニケーション能力や筆記能力を評価するテストです。
このテストのスコアから攻撃性を予測できることがわかりました。
しかし、それは男の子だけを対象とした場合にのみで、女の子を対象とした場合にはそうなりませんでした。
自閉症の研究では、自閉症と診断される頻度が高い男の子のサンプル数が多いことがよくあります。
サンプル数が多ければ、統計的に有意な結果を得ることが容易になるからです。
しかし、今回の研究で使用されたサンプルは、典型的なものとはかけ離れていたとノイハウス助教授は言います。
「この研究の強みの一つは、歴史的に見ても、これまで十分な研究ができなかった数の女の子のグループを得られたことです」
この研究成果は”Journal of Autism and Developmental Disorders”誌に掲載されました。
研究チームが攻撃性を評価するために使用した児童行動チェックリスト(CBCL)のスコアを見れば、男の子と女の子は同等でした。
しかし、CBCLのスコアは、個人の攻撃性のレベルを、同性・同年齢の他者と比較して示すものです。
つまり、同年齢の男の子と同じCBCLスコアをもっていても、女の子の場合であれば、実際にはその男の子よりも攻撃的な行動が少ないかもしれません。
「攻撃性のスコアに男の子と女の子の違いは見られませんでした。
しかし、それは日常生活での問題行動の頻度については何も語るものではありません」
今回の研究結果は、自閉症の男の子については、コミュニケーションでかかえている困難が攻撃的行動の原因になっていることを示唆している可能性を示します。
しかし、ノイハウス助教授が使用したCBCLとVinelandのどちらも親の報告に基づいたものです。
ノイハウス助教授は、医師や教師が報告した指標など、他のデータを用いることで、今回の結果が単なる偶然ではないことを確認できるといいます。
コミュニケーションがうまくできないために、攻撃的な問題行動をとる。
当たり前のように思いますが、そうなんでしょう。
女の子がそうなってしまう場合は、より複雑のようですね。
猫を飼うと自閉症の子は共感力が高まり問題行動が減少した。研究
(チャーリー)