28歳のギスレン・バンダー・エルストは自閉症です。
そう診断されるまでに、何年もかかりました。
彼女の心理的な問題は不安障害やうつ病と混同され、その結果の治療はうまくいきませんでした。
20歳になってやっと、自閉症かもしれないという可能性が示されました。
自閉症は、女性よりも男性に認められることが多くなっています。
それは女性のほうが、社会的に望ましい行動をとる可能性が高いと言われているからです
ギスレンはそれを理解しています。
「私は人を見て、真似て正しい行動をすること心がけてきました。
そのため、特に問題はありませんでした。
しかし、高校生になると同級生との交流はほとんどありませんでした。
なぜなら、人付き合いが難しくなったからです。
それからは目立たないようにしていました」
今では、自分の悪いところがわかっているので、うまく対処できるようになったといいます。
「それまでは、何かうまくいかないことがあると、よくがっかりしていました。
今はそうなる原因が理解できています。
なので、何かに追われているときには休むことで気持ちが楽になりました」
ギスレンはボーイフレンドのアルウィンと一緒に、YouTubeのドキュメンタリー「About autism」を制作しました。
ギスレンは、アルウィンに自分の診断結果をしばらく伝えないようにしていたと、その中で語っています。
「その理由は自閉症をググると、自閉症であっても私が感じていないことが出てくるからです。
例えば、私は他人に共感できます。
なのに、ググって自閉症を知れば、彼が私を他人には共感できない人だと思うかもしれません。
私は私の自閉症を誤解されたくなかったのです」
ギスレンは彼女の自閉症は二人の関係には影響を与えていないといいます。
「アルウィンは、私がよく疲れていることは知っています。
私はすごく早く寝てしまうこともあります。
また、声の大きさをコントロールできずに大声を出してしまうことがありますがそれくらいで、私が自閉症であることは他人に気づかれることはほとんどありません」
自閉症の人に対する大きな誤解は、社会性を持てない、あるいは社会的接触において全く異なるというものだと、ギスレンは言います。
「自閉症の人は目を合わせなかったり、一つのことをずっと話し続ける、そうしたものです」
ギスレンは、自閉症の人が主役となっているシリーズや映画を見るのが好きではありません。
「一人のキャラクターが全ての自閉症の人の代表になってしまうことが気になるのです。
自閉症は本質的には内面的なものです。
とくに自閉症の女性がもっと理解されるといいなと思います」
36歳のビアンカ・チベスも「自閉症」のステレオタイプに悩まされています。
「世間では、私たちはみんな感情がなく、鈍感で、共感できないと思われています。
違います。本当はできるんです。
ただ、感情の処理の仕方が違うだけの場合もあります。
私たちはロボットではありません」
ギスレンと同じく、多くの自閉症女性と同様に、自閉症と診断されるまでには長い時間がかかりました。
ビアンカは26歳のときに診断されました。
当時の彼女は、社会的なぎこちなさやうつ病、摂食障害など、さまざまな問題に何年も苦しんでいました。
25歳の頃がきっかけでした。
写真の仕事が順調な一方で、いつも失敗しているような気がしていました。
物事の流れが速すぎて、自分では対処できなかったのです。
彼女はそのことをブログに書くと、友人が自閉症の女性についての記事を紹介してくれました。
その後、自分で調べ自分を知り、その後にようやく正しい診断を受けることができました。
小学校の最初の教室ですでに自分は「変わっている」ことに気づいていました。
「私は、何かが公平でないと思うと、激怒しました。
他の子どもたちとコミュニケーションをとることが難しかったのですが、モンテッソーリ教育を受けるようになってからは、状況は好転していきました。
しかし、大きくなるとよくいじめられました。
いくつかの点で、私はとても幼かったのです。
中学1年生のときには、スーパーマリオのTシャツを着て、バッグにはおもちゃを入れていました」
ビアンカは自分の自閉症についての本を書きました。
「でも、あなたは全然そんなふうには見えない。
私たち自閉症の女性は、よくそのように言われます。
褒め言葉のつもりかもしれませんが、実際に言っていることはこうです。
本当の自分を上手に隠せるなんて、なんて賢いんだろう」
また、子ども向けの本も書きました。
「多くの本は、自閉症のp欠点に焦点を当てています。
自分のやり方でやってもいいんだよ。
ということを子どもたちに教えてあげたいと思っています」
ビアンカ自身もそうしています。
できるだけ自分に合った方法で生活を整理しようとしています。
「診断を受けてから、私はだんだんとうまく対処できるようになりました。
例えば、電車での移動は、混雑しているときだと非常に疲れてしまいます。
なので、できるだけラッシュ時を避けて移動しています。
自分の仕事もそれに合わせています。
オフィスでフルタイムで働くことはできません。
それはとてもストレスになります。
また、写真の仕事でも一日中撮影していると頭が痛くなって寝込むこともありました。
なので、今はウェブサイトを作ることをメインの仕事にしています。
心の余裕も生まれます」
オランダ自閉症協会で経験豊富な専門家として働いている心理学者のアニメック・コスターは、女性は長い間、自閉症と診断されることがあまりに少なかったと言います。
「女性よりも男の子や男性に多いと思われていました。
しかしこれは、自閉症の症状の現れ方が女性と男性では異なるからでしょう」
コスターによれば、自閉症の女性たちは自分の症状を隠し、まわりが期待するものに合わせる傾向があるそうです。
その結果、女性は自閉症と診断されるの遅れ、多くのフラストレーションや誤った治療を受けることにつながってしまいます。
「現在は、自閉症の女性に対する関心が高まっており、女性の自閉症についての認知度も上がっています。
以前はもっと少なかったのですが、現在では自閉症患者の約4分の1が女性です」
また、コスター自身も自閉症です。
それがわかったのは、60歳の誕生日を迎えてからでした。
「判明するまでに6年間の精神分析と多くの個別療法を受けました。
そうして初めて、自分の人生に自閉症であることを含め、自分自身の成長を始めることができました」
(出典:COMMENTARY BOX SPORTS)(画像:Pixabay)
発達障害、自閉症、それぞれの人ごとにそれによる特性も違ってきます。
一括にしないで、それぞれの人をそれぞれに尊重して頂きたいと願います。
(チャーリー)