IT業界は、IT業務に誰が適しているかを再考し、テストやサイバーセキュリティ、その他の技術職に神経多様性のある人材を採用するべきです。
そのためには、採用プロセスを見直し、この新しい人材をサポートするための職場環境を整える必要があります。
神経多様性、ニューロダイバーシティな人たちをサポートするために作られたオンラインのキャリア・求人サイト「WorkWider」の創設者であるミシェル・ランザは、ニューロダイバーシティは自閉症スペクトラムの人だけでなく、発達性協調運動障害、ディスレクシア、ADHD、社会不安障害の影響を受けている人も含むものだといいます。
「多様な人によるチームを持つことは、企業イメージを向上させるだけでなく、生産性、イノベーション、従業員のエンゲージメントを大幅に向上させることを、より多くの企業が理解するべきです。
ニューロダイバーシティな人も含む、人口構成を反映した従業員構成にする時です」
ランザの会社は、組織が可能な限り幅広い候補者から採用するよう、採用、選考、キャリア開発方針を最適化し、多様性のあるチームを育成するよう、企業に協力しています。
「神経差のある多様な人材は、未開拓であり、成長を続けています。
米国では、今後10年間で約50万人の自閉症の子どもが成人になります」
ガートナー社の調査によれば、多様で包括的な労働力は企業のパフォーマンスを向上させる可能性が高く、組織は意図的にニューロダイバーシティな候補者を採用活動に含めるようになってきたと伝えています。
ガートナーのHRプラクティスのマネージング・バイス・プレジデントであるローレン・ロマンスキーはこう言います。
「組織は、創造性、横方向思考、異なる視点など、ニューロダイバージェンスと一般的に関連するポジティブな属性から恩恵を受けることができます。
さらに、ニューロダイバーシティな人たちは、高度に専門化されたスキルを持ち、一度習得したタスクを一貫してこなすことができます。
これらはすべて、組織の革新性を高めることができる貴重な特性といえます」
シャリーニ・パワは、米ミシガン州ランシングにあるIBM社のオフィスで、ニューロダイバーシティに特化したIBMの最初の採用プログラムに取り組みました。
パワは、自閉症スペクトラムの人たちがIBMに重要なスキルをもたらすことができることを証明しようと、このパイロットプログラムを始めました。
IBMのIgniteアプリケーション・テスト部門の品質工学およびテスト・コンピテンシーのリーダーであるパワはスペシャリスタン社と協力して、採用方法の基礎を築きました。
スペシャリスタンは、企業が神経多様性のある個人を企業の労働力に取り入れるために、採用プロセスとオンボーディング・プロセスを刷新するのを支援しています。
パワは、まず最初のステップは、自閉症スペクトラムの人々のニーズと能力について、既存のIBMのマネージャーの間で意識を高めることだったと述べています。
「マネージャーや同僚は、成功するためには何が必要なのかという自分の考えをもっているからです。
最初のうちに打開策を講じることが重要です」
次のステップは、資格ではなく能力に焦点を当てるように採用・採用プロセスを変更することでした。
パワによれば、自閉症スペクトラムの人に対する固定観念として「一緒に仕事をするのは難しい」というものがありました。
「多くの人が一緒に仕事をするのは難しいと言いました。
しかし、私たちは初日から一緒に仕事ができていました。
私が一緒に仕事をした人のうち2人は、彼らが行った仕事で特許も出願しています」
このプログラムは現在、「Neurodiversity at IBM」と呼ばれており、米国、カナダ、オーストラリアにあるIBMのオフィスでも実施されています。
ニューロダイバーシティの社員のほとんどはテスト部門にいますが、ソフトウェア開発やサイバーセキュリティの分野で働いている人もいます。
「この3年間で、このプログラムは本当に軌道に乗りました」
最初のパイロットプログラムで採用された人たちは、今では新入社員のコーチをしたり、タスクフォースの一員になったりしています。
パワは、パイロットプロジェクトを実施する過程で、プログラムを成功させるためには、以下の3つのステップが重要だったといいます。
1.あらゆるバックグラウンドと経験のレベルの人たちを採用するために、採用プロセスを改善する
2.入社1年目のニューロダイバーシティの人を支える支援グループを作る
3.生産性の高い職場環境にするため、休める環境を設ける
複数の人事専門家は、ニューロダイバーシティの人の最大の障壁は、標準的な採用プロセスだと指摘します。
それは、世間話をしたり、非言語的な合図を読んだりといった社会的スキルを持った人を対象にしたものだからです。
ニューロダイバーシティの提唱者であるダニエル・サリバンは、ニューロダイバーシティの人たちの採用プロセスは、従来の面接ではなく、仕事に直接関連するスキルについてテストすることだといいます。
「従来の面接に対応するスキルは、発達障害の人の多くにとって求められるスキルとは限りません。
面接の代わりに仕事の本質となるスキルやタスクのパフォーマンスに焦点を当てたテストのほうが、発達障害の人が自分のスキルを示せる機会となります」
TrackingFox社の共同設立者でCEOのマリナス・カバラスカスは、企業は求人情報にニューロダイバーシティの人を応募者として歓迎することを明示するべきだといいます。
また、ニューロダイバーシティの専門家を雇用して、企業のリーダーと相談し、よりニューロダイバーシティなチームができるように組織を準備することも奨めています。
ガートナーのロマンスキーは、組織はすべての従業員のニーズを満たすための採用手順とポリシーを持っていなければならないと言います。
「採用担当者は、ニューロダイバーシティの応募者たちのニーズをより的確に捉え、取り入れるために、現在の採用・採用プログラムの取り組みを監査し、調整する必要があるでしょう」
ロマンスキーはニューロダイバーシティの人を採用し、維持するために以下のようなステップを推奨しています。
1.採用担当者との連携する
ニューロダイバーシティの人が、その職務に近い活動を通じて能力を発揮できるよう、実地でデモンストレーションを実施することなどを検討する。
2.多様性、公平性、インクルージョンのリーダーと協力する
大学、ソーシャルグループ、社内ボランティアなど、ニューロダイバーシティの人に対応できる人たちとつながる。
3.サポートすることを伝える
ニューロダイバーシティの人のためのメンターシッププログラムや既存の従業員のためのトレーニングプログラムがあることを宣伝し、サポートがあることを理解してもらう。
4.仕事の役割は柔軟にする
ニューロダイバーシティの候補者が持っている強みを発揮できるようにしましょう。
「総合的な、汎用的な能力を重視しすぎると、高度に専門的なスキルを持っているニューロダイバーシティの人が不利になる可能性があります」
採用プロセスでニューロダイバーシティな人材を受け入れることができたら、次のステップは、新入社員がオフィス環境に適応できるようなサポートシステムを構築することです。
IBMのパワによれば、入社一年目のニューロダイバーシティな人たちにはサポートグループが重要な役割を果たしてきました。
「1対1のコーチのようなサポート体制を整えることは本当に重要です」
そして、生産性の高い職場環境を作るために環境を整えることは、パズルの最後のピースとなります。
ライブキャリア社の人事担当シニアディレクターであるスーザン・ノートンによれば、休憩室、ノイズキャンセリングヘッドフォン、発達障害の人のために設計されたデスク環境などが一般的なものになるといいます。
(出典:米Tech Republic)(画像:Pixabay)
リモートワークが浸透することで、ただ同じ場所にいるだけは仕事ではないことが明らかになり、一人ひとり、出来ることが求められます。
ニューロダイバーシティの人はますます求められ、活躍していくはずです。
(チャーリー)