発達障害の自閉症と診断されることは、さまざまなかたちで人に影響を与えます。
ある人にとっては、否定的であり、教育や就労にさらなる障壁を設けることになります。
しかし、他の人にとっては、診断はポジティブなものであり、自分や家族が必要とする支援への扉を開くものとなります。また、自閉症コミュニティ内での自己意識や帰属意識を高めることもできます。
その結果をどんなふうに受け取っても、自閉症と診断されることは、医療や支援を受けるか、あるいは何も受けられないかの違いを生みます。
しかし、診断されるまでの道のりは長く、混乱し、イライラすることが多くあります。
そして、早期の療育が自閉症の人とその家族にポジティブな影響を与えることが知られているため、診断されるまでに時間がかかることは問題になっています。
診断への障壁は、女性にとって特に困難なものとなっています。
研究者の間では、現在の診断基準では自閉症の女性が十分なサービスを受けられないことにつながっていることにつながっていることが広く認識されるようになってきました。
女の子が男の子に比べて診断が遅れ、療育などの支援が遅れてしまうのは何が原因なのでしょうか?
私たちの研究チームはそれを調査しました。
“Review Journal of Autism and Developmental Disorders”にその結果が掲載されています。
問題の大部分は、自閉症は「男性のもの」であるという認識が続いていることであることがわかりました。
歴史的に、研究者、医師、その他の専門家は、自閉症を女性のものとして見てきませんでした。
レオ・カンナーとハンス・アスペルガーによる自閉症の記述が最初に出版されたときから、ほとんどの症例は男の子と大人の男性のものでした。
自閉症の有病率の推定では、男子は女子の約4倍の確率で診断を受けることがわかっています。
これらの推定値の算出方法には、自閉症の認知、評価、診断における偏りが反映されている可能性が高くなっています。
これらの偏りを軽減した有病率の推定値では、男女性比は1.8対1となりました。
診断を受ける前の時点で、男の子は女の子の10倍の数で自閉症の診断を紹介されています。
また、特徴的な症状が同程度な場合、女の子は男の子よりも自閉症と診断される可能性は低くなっています。
自閉症の女性は男性よりも、自閉症と診断されることに遅れがあるのが研究で明らかになっています。
この診断の遅れは、医療機関への訪問回数、親が最初に心配する年齢、診断にかかる時間に差がないにもかかわらず、存在しています。
また、診断された後でも、より大きな問題があります。
女性も自閉症をかかえることを、知らない人が多いのです。
英国のバークベックカレッジとキングスカレッジロンドンの私たちの研究チームは、女性の自閉症診断への潜在的な障壁に光を当てる可能性のある結果を求めて、これまでの20の研究論文について系統的に調査しました。
これらの論文を分析した結果、女性は男性に比べて、行動や言語の困難などの特定の特徴が大きく現れている場合にのみ、自閉症と診断されていました。
女性は男性よりも多くの場合、自閉症の特徴を補ったり、隠したりするため、これはとくに問題視する必要があります。
こうして隠すことは、「マスキング」や「カモフラージュ」と呼ばれます。
例えば、学校にいる自閉症の女の子は、社会的な状況でのコミュニケーションの困難さを意図的に、あるいは無意識のうちに隠しているかもしれません。
カモフラージュが、女性が自閉症と診断されにくい主な理由です。
そして私たちは、女性の自閉症の診断に広く影響を与える問題を発見しています。
それは、自閉症は広く「男性のもの」と考えられていることです。
自閉症の女性の親は、自閉症の可能性を心配しても、他の人や医師からさえも自閉症であることには否定的な意見を受け取っていました。
私たちが検討したある研究論文では、こう親のコメントが書かれていました。
「私は医師が、自閉症は通常は男の子のもので、娘は人と少し違うだけだと言っていたのを覚えています」
いくつかのケースでは、親は、診断を得るために自分の娘の特徴を誇張しなければならないように感じたと述べています。
「私は、自閉症の診断を受けられるようにするために、必要な支援を得るために、娘のもつ特徴や障害を実際よりも大きく見せる必要があると感じました」
自閉症についての現在の男性中心の考えは、私たちの社会に蔓延しています。
それは、必要なサポートを求める自閉症の女性とその家族には大きく有害なことです。
それを改善するためには、医師や研究者だけでなく、一般の人たちの自閉症に対する認識を変えなければなりません。
自閉症はすべての性別で発生することを広く認識してもらう必要があります。
私たち研究者は女性の自閉症についてより多くの研究を行うことが求められます。
そして、その知識を親、教師、医師など広く多くの人に知ってもらう必要があるのです。
ジョージア・ロックウッド・エストリン博士
英ロンドン大学バークベックカレッジ研究員
必要な支援が適切に行われるように、これまでの常識も否定できる、確かな研究が行われることは本当に良いと思います。
(チャーリー)