- 自閉症の人たちは社会から疎外されていますか?
- 自閉症の人たちは仕事に就くのが難しいのでしょうか?
- 自閉症の人たちには特別な才能やメリットがありますか?
自閉症の人たちは、あまりにも多くの場合で、社会から疎外されています。
学校でいじめられ、ほとんどの資格を得ずに学校を去っていきます。
ある調査では、イギリスでは自閉症の成人でフルタイムの仕事に就いているのは16パーセントだけだと推定されています。
別の調査では、3分の2が自殺願望を感じており、3分の1が実際に自分の命を奪おうとしていたことがわかりました。
しかし、人類の発明の歴史を振り返れば、自閉症の人たちは主役になっています。
認知神経科学者のサイモン・バロン=コーエン教授は、自閉症に関するこれまでの研究により、最近ナイト爵を授与されました。
コーエン教授は以前、物理学者のアルバート・アインシュタインとアイザック・ニュートンがともにアスペルガー症候群を患っていた可能性を示唆しています。
ビル・ゲイツは自閉症の特徴を持っているのではないかという憶測もあります。
また2人の偉大な発明家、トーマス・エジソンとニコラ・テスラも発達障害をもっていたと考える人たちもいます。
コーエン教授は自閉症の人の脳には多くの輝かしいメリットがあることを言います。
「自閉症は障害です。
しかし、自閉症は単なる障害ではないことがわかっています。
そして、私は自閉症であることのメリットが軽視されてきたと思います」
自閉症は、生涯にわたる発達障害です。
人々のコミュニケーションや世界との相互作用に影響を与えます。
イギリスでは70万人の人そうであると推定され、100人のうち一人の子どもが自閉症スペクトラム障害と診断されています。
英国自閉症協会の成人向けサービスでサポートされている女性と男性の比率は1:3となっています。
幼児の自閉症の兆候には、名前に反応しない、アイコンタクトを避ける、笑っても微笑まない、他の子どもほど話さないなどがあります。
大人では、他人が何を考えているのか、何を感じているのかを理解するのが難しい、社会的状況に非常に不安になる、無愛想、無礼、また他人に興味がないように見えるなどが含まれています。
コーエン教授は主張します。
私たちの学校や企業は現在、脳の種類の多様性を受け入れられるようになっていないことを。
「国のカリキュラムに従うということは、すべての子どもが同じように教えられることを意味しています。
それは一人ひとりが深く学べるよりも、広く多くの人が学べるようにすることを優先しています。
多くの自閉症の人にとって、それは真逆の学習スタイルになっています。
自閉症の人たちは、ベルが鳴ったからといって30分ごとに学ぶことを変えようとは思いません。
また、他の子どもたちが笑って話しても、他のことに夢中になっていてそれを望んではいないかもしれません。
そしていじめられるようになると、学校で学ぶことはできなくなります。
高い知能があっても、自閉症の子どもの多くが学業不振であることは驚くことではありません」
コーエン教授は、3歳の子どもたちがシステマイザー(実験をして、実際の方法で学ぶことを好む)またはエンパスザー(社会活動やコミュニケーションを通じてより良い学習が行える)であるかどうかを確認し、それに応じて教育を適応させるためのシステムを提案しています。
「学校や先生が限られているなか、教育を個別化することは難しいことです。
しかし、良い教育を受けることができないために、子どもたちの一定の割合が学校から去ってしまっている状況は、別の場面で社会コストを増加させていると考えています」
コーエン教授は1999年にケンブリッジ大学ライフスパンアスペルガー症候群サービスを設立しました。
それは発達障害が疑われる大人のための国立の最初のクリニックでした。
それ以来、1000人以上の患者の診断に貢献してきました。
600以上の査読付き科学論文を発表し、5冊の本の著者です。
設立した自閉症研究センターには、知覚と認知、神経科学、遺伝学、ホルモン、スクリーニングと診断、療育の6つのプログラムがあります。
コーエン教授が診ている男性の中には、400回以上応募しても未だに失業状態のままの人がいます。
その男性は、音だけで車のエンジンのどこが故障しているのかを識別し、どの部品を交換する必要があるかがわかる能力をもっているにもかかわらずです。
自閉症の人たちのスキルは、古い慣習が通用しない、新しい企業においては生産性を向上させる可能性があります。
コーエン教授は自閉症の従業員は平均的により正直で道徳的である可能性が高いと主張しています。
「従業員の誰かがルールを破ったときには、自閉症の人が内部告告発者となることがよくあります。
他の人たちは、絶対に従わなければならないルールと、少々従わなくてもよいと考えるルールがあると考え、柔軟です。
しかし、自閉症の人にとっては全てのルールが絶対に従うべきものなのです。
なので、生きていくなかでは、会社に限らず多くの欺瞞が満ちていることにはとても混乱しています」
コーエン教授はより多くの人に自閉症の人の多様性を理解してもらいたいと考えています。
「一人の自閉症者に会っても、それはたった一人の自閉症の人に会っただけ。
そういうフレーズがあります。
スペクトラムという言葉が使われているのは、まさにこのような理由からです。
自閉症の程度やその影響の現れ方は非常に多様なんです。
例えば、10代の自閉症の人は、コミュニケーションに困難を感じるかもしれませんが、大好きなことにはすごく夢中になっているかもしれません。
私が働いているクリニックでは、多くの自閉症の人たちが友だちがいたことがないと言います。
それは彼らが友だちを望んでいないわけではなく、友だちを作り、その関係を維持する方法がわからないだけです。
一人だけでも友だちがいれば、自閉症の人たちにとって大きな意味をもちます。
自閉症の人への偏見はますます孤立を深める可能性があるので、十分に注意する必要があります」
コーエン教授が自閉症の研究を行う理由は、2014年に亡くなるまで24時間体制でのケアを必要とし、言葉を話すことができなかった妹のスージーの存在です。
「明らかに異なる個性を持つ妹と一緒に育ったことが、幼い頃から私に影響を与えたのでしょう。
人は脳の性質に応じて、世界を異なるかたちで経験するという事実に私は影響を受けました」
現在62歳になるコーエン教授が35年前に人間の心の研究を始めたとき、彼の専門分野はほとんど理解されていませんでしたが、今では多くの人が自閉症という言葉を知るようになりました。
「次の5〜10年で、自閉症への偏見がなくなるはずです。
自閉症の古い見解は家族にとって悲劇で壊滅的なものでした。
しかし親はこう考えるようになっていくでしょう。
『たしかに障害をかかえています。サポートが必要です。
しかし、私の子どもが他の子どもと違うことは大切にしたい。
他のみんなと同じようにはなってほしくない。
自閉症はその人の一部をなすものであり、自閉症は弱みだけでなく強みもあるユニークなもの』
こうした考えは、自閉症の子どもたちに限らず私たち全員にもあてはまるものです。
私たちみんなに才能があるのです。
私たちみんなが、私たちみんなが持っている強みを現れるようにする必要があるのです」
アインシュタインはこういったと言われています。
「誰もが天才です。
しかし、木に登る能力で魚を判断すれば、
魚は、自分が愚かであると信じてその生涯を生きることになるでしょう」
ある自閉症の男性は、コーエン教授にこう言いました。
「塩水の中に入れば、あわてて動き回り、苦しみ、もがいて、死ぬでしょう。
しかし、淡水の中に入れば、私たちは活躍します」
コーエン教授は私たちに、魚を変えようとするのをやめて、水を変えようと言っています。
たびたびお名前を拝見する著名な先生ですが、「きょうだい」だったのですね。
私も、水が変わってほしいと願っています。きっと変わるとも思っています。
(チャーリー)