- 年齢とともに他人の思考を理解する能力は、自閉症の人と自閉症でない人で違いがあるのか?
- 自閉症の人の脳の老化と認知スキルの発達について、どのような関係があるのか?
- 自閉症の人が他人の感情や思考を理解するために、異なる認知戦略を使っている可能性はあるのか?
発達障害である自閉症の人が他人の思考を理解する能力は、自閉症でない人とは違い、年齢とともに低下しないことが新しい研究で明らかになりました。
研究チームは、自閉症の若い人と自閉症でない若い人の「心の理論」(他人の精神状態を推測する能力)を評価しました。
多くの自閉症の人たちが、このスキルに困難をかかえていることが研究で示されました。
自閉症でない若い人は、自閉症の若い人や自閉症でない高齢の人よりも、他人の精神状態を推測する能力が高いことを示しました。
自閉症の若い人と自閉症の高齢の人を比べると、その能力にほぼ違いはありませんでした。
「私たちの結果は、自閉症の人では年齢とともに他者の心を理解することに有意な低下はないように思われることを示しています」
今回の研究を行ったトルコのアンカラ社会科学大学の心理学のエスラ・ジブラリ・ヤマー助教授はそう言います。
この発見はまた、自閉症の人の脳は少なくともいくつかの脳機能については、自閉症でない人の脳のように老化しないことも示唆しています。
今回の研究に関与していないイギリスのユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの認知発達学のユタ・フリス名誉教授はこう言います。
「自閉症の高齢者についての研究は歓迎されます。
私たちには年齢による認知の変化についてはわかっていないので」
ヤマー助教授らはこの研究で、参加者を4つのグループに分けました。
18歳から50歳までの自閉症の29人と自閉症でない20人、50歳以上の自閉症の29人と自閉症でない19人、と4つのグループです。
その人たちは、感情を識別する能力を評価するための20項目と、共感力を評価するための28項目のアンケートに答えました。
さらに以下の4つの追加テストで、他人の精神状態を推測する能力のさまざまな側面を調査しました。
・人の目の写真を見ることによって別の人の思考や感情を識別する
・ビデオの中のアニメーションの三角形の間の相互作用を説明する
・ビデオの中の二人のキャラクターが何をしようとしているのか、それの動機について説明する
・5つの写真を並べ、そのストーリーを説明する
研究者チームは、これらの課題を正確さだけでなく、参加者がそれぞれのシナリオの中でどのように考えや感情を表現したかで採点しました。
そこから、各参加者の他人の精神状態を推測する能力のパフォーマンスの複合スコアを考案しました。
全体的に、自閉症の参加者は他人の精神状態を推測する能力と共感の測定値が低く、失感情症(自分の感情を伝えることが困難)のスコアも高くなっていました。
年齢別にグループを解析すると、これらのスコアは自閉症でない人では時間とともに変化しますが、自閉症の人では変化しないことがわかりました。
今回の研究では、自閉症の人とそうでない人がなぜこのように異なるのかを説明するために設定されたものではありませんが、わけではないが、ヤマー助教授は2つの仮説をもっています。
・自閉症の人は脳の成長が異なる
・自閉症の人は認知スキルを異なるかたちで発達させてきた
「自閉症の人たちはよく、他人が何を考えているかを理解することは、頭の中で算数をするようなものだと言います。
もしかすると、これが加齢の影響を受けないようにしているのかもしれません」
今回の研究に関与していないユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのフリス名誉教授はこう言います。
「他人の精神状態を推測する能力の測定テストに対して、答えるときに頭の中で起きていることが、自閉症の人とそうでない人では異なっているという可能性があります」
自閉症の人と自閉症でない人で行動は同じように見えても、根本的な戦略が大きく異なる可能性についてです。
自閉症でない人は、考えることなく他人の心の状態を理解するかもしれないのに対し、自閉症の人はそれを学んで考えて行っているかもしれないという違いです。
そうであれば、加齢によって衰えることもないと考えられます。
今回の研究を行ったヤマー助教授らは、その問いに対する答えにつながるものとして、自閉症の高齢者における精神医学的健康と生活の質の関係について研究調査を始めています。
やはり、自閉症でない人とは違って、人の感情を苦労しながら考えて推測できるようになられた人が多いのではないかと察します。
なので、計算するのと同じように考えるために加齢の影響が直感よりも現れにくいのかなと。
ご苦労されて身につけられてきたぶん、そうした優れた点があるのだと思います。
(チャーリー)