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自閉症の人の多くが「失感情症」社会的困難や不安症に強く関連

time 2020/11/14

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

自閉症の人の多くが「失感情症」社会的困難や不安症に強く関連
  • 自閉症の人が感情を識別することにどんな困難を抱えているか?
  • 失感情症が自閉症の人に与える影響は?
  • 失感情症をかかえる自閉症の人を支援する方法は?

自分の感情を識別するのに苦労している自閉症の人がいます。
“alexithymia”(失感情症)として知られている状態です。

新しい研究によればそうした人は、不安や抑うつ、社会的コミュニケーションの問題を抱えている可能性が高くあります。

また、失感情症は精神衛生の悪化にも寄与する可能性があります。
重度の失感情症をかかえる人は、そうでない人に比べて時間の経過とともに不安症をかかえる可能性が高くなります。

失感情症は「感情を言葉で表すことができない」、自分の感情を特定して説明するのが難しいという特徴があります。

自閉症でない、重度の失感情症を持つ人は対人関係に問題を抱えている可能性が高く、不安や抑うつのリスクが高くなっています。

それは自閉症の人たちでも同じです。
しかし、どのように失感情症が時間をかけて自閉症の人たちの精神的健康に影響を与えるかについての調査研究はほとんどありませんでした。

今回の研究に関与していない、英オックスフォード大学の認知神経科学、ジェフ・バード准教授は今回の研究は重要だと言います。

「失感情症と不安症との関係が示されました、私たちはもっと失感情症について注目しなければなりません」

今回の研究を行った英キングスカレッジロンドンの研究員であるベサニー・オークリーはこう言います。

「失感情症を軽減できる治療方法があります。
それを自閉症の人たちにも行うことで、精神的健康と生活の質を改善できるはずです」

研究チームは、ヨーロッパ縦断的自閉症プロジェクトの12〜30歳の179人の自閉症の人と比較対象とする158人のそうでない人たちについて分析しました。

社会的コミュニケーションの問題や不安や抑うつの兆候がないかどうかを検査しました。
そして、内的な感情状態にどれだけ注意を払っているか、自分が感じる感覚にしばしば混乱しているかどうかなど、自分の感情を認識して説明する能力について質問もしました。

自閉症の人たちは平均してこれらについて困難をかかえていることが明らかになりました。
そして、有意に失感情症である可能性が高くありました。

自閉症でない人では4パーセントであったのに対し、自閉症の人では29パーセントが失感情症でした。

また、自閉症の男性では21パーセントであったのに対し、自閉症の女性ではもっと多く、約半数が失感情症と診断できるレベルにありました。

自閉症の人も、そうでない人も、失感情症が重度になると社会的コミュニケーションの困難さ、重度の不安、そしてうつ病をかかえていました。
感情を伝えることができない困難である失感情症は、自閉症の人のコミュニケーションの問題に最も関係していました。

研究チームが1年から2年後に研究に参加した人を追跡調査したところ、参加者の失感情症の程度に変化はありませんでした。
これは「状態ではなく、特徴である」ことが示唆されます。

研究に参加した自閉症の人は最初の時点での失感情症のスコアが高ければ高いほど、その後に社会的コミュニケーションの困難さをかかえていました。
自閉症の人でもそうでない人でも、初期の感情の識別の困難さは、その後の不安症と関係していました。

「これは非常に重要なことです。
失感情症は人生において、より長期的な問題になる可能性があります」

そうオークリーは言います。

研究調査結果では、自閉症の人に見られるいくつかの社会的コミュニケーションの難しさ – 他の人の感情を認識することができない、または他の人の感情に応答することができないなど – それも、失感情症のためかもしれないことが示唆されると英オックスフォード大学のバード准教授は言います。

「自閉症の人の中には、失感情症であっても、それは診断されていない人もいるでしょう」

自閉症の人たちの不安やうつ病を治療する医師は、失感情症について考慮するべきだと研究チームは言います。

不安をかかえる自閉症の人は、例えば認知行動療法を受けるよう紹介されることがあります。
しかし、このアプローチでは自分の感情を識別し、話し合うことができるようになることが求められます。

「自閉症の人すべてが失感情症の治療法の恩恵を受ける可能性があるわけではありません。
しかし、それで助けられる自閉症の人がいます」

そう、英キングス・カレッジ・ロンドンの心理学のエヴァ・ロス准教授は言います。

社会的・感情的な相互作用を持つ自閉症の人たちを助ける療育においても、失感情症をかかえる率が高いことを考慮する必要があると、英アングリアラスキン大学のカールリン・ムル講師は言います。

それは、英国の療育では、参加者が自分の感情を比較することによって他人の感情を理解するように求めることが多いためです。

「少なくない自閉症の人が失感情症をかかえているとすれば、そのような療育は効果がありません。
それどころか、そのような療育は精神的に不幸にするものです」

今回の研究では6年の追跡調査が行われます。
失感情症と精神的な健康との関係について、さらに明らかになるかもしれません。

(出典:米SPECTRUM)(画像:Unsplash

“alexithymia”は「失感情症」と訳されることが多いようですが、これは「感情がない」のではありません。

感情を理解したり表現することがうまくできない障害です。

自分の感情について伝え、知ってもらうことができなければ、誰でもその困難や人生に与える影響は想像できるはずです。

幸せに生きていくために役立つ支援、その実現につながる研究は心から応援しています。

自閉症の人は失感情症を考慮しても共感性が低いが悪いことでない

(チャーリー)


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