- どのような療育を受けるべきか?
- 週に何時間療育を受ければよいか?
- 療育方法や時間による効果の差はあるのか?
米カリフォルニア大学デイビス校医学部が主導した共同研究では、発達障害である自閉症のための2つの著名な早期療育モデルの効果は同じ程度であることを明らかにしました。
研究チームは、早期集中行動介入(Early Intensive Behavioral Intervervention: EIBI)またはアーリー・スタート・デンバー・モデル(Early Start Denver Model: ESDM)のどちらかで、1年間の1対1の療育を受けた自閉症の幼児の発達と症状の改善を比較しました。
さらには、療育を週に15時間受けても、25時間受けても、効果に有意な差がないことも発見しました。
「子どもが自閉症であると診断を受けると、多くの親は尋ねます。
『どのような療育を受けるべきか?週に何時間受ければよいか?』
医師として、これらの疑問に答えるための十分に信頼できる実験研究のデータが今までありませんでした。
この研究は科学的な調査による、これらの質問に答えるための最初の研究となります」
そう、米カリフォルニア大学デイビス校のMIND研究所、精神医学と行動科学のサリー J. ロジャース名誉教授は言います。
“Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry”に発表されたこの研究では、療育の種類も実施の量も、子どもたちの進歩に有意な差をもたらさないことを明らかにしています。
2つの療育方法は、その実施スタイルと基礎となる理論が大きく異なっています。
EIBIは応用行動分析に基づいており、シンプルで構造化された指示を用いて子どもたちを指導します。
ESDMは自然主義的で、発達と行動科学に基づいており、遊びと典型的な日常生活の両方の日常活動に組み込まれた対話型のスタイルをとっています。
これまでの研究でどちらの療育方法も、子どもの言語理解と使用、学習率、認知能力や適応能力の向上に大きな効果があることが報告されています。
しかし、療育の週当たりの推奨する時間数は、実験から得られた証拠に基づくものではなく、仮定に基づいたものでした。
ロジャース名誉教授はこう言います。
「私たちは、初期の子どもの特性、治療スタイル、治療強度が子どもの長期的な進歩に及ぼす影響について客観的な答えを提供するために、この研究を行いました。
私たちは主要な発達と症状の指標を測定することで、療育の効果を評価しました」
3つの大学の施設の87人の自閉症の幼児(生後12ヶ月から30ヶ月の間)が研究に参加しました。
年齢と発達レベルに基づいて、子どもたちは4つの療育グループ(ESDMを週に15時間または25時間、EIBIを週に15時間または25時間)のいずれかに入りました。
そして、家庭や保育現場で1年間、1対1の療育が行われました。
また、月に2回の1.5時間のセッションを通じて、家族に介護者のコーチングも行いました。
ロジャース名誉教授によれば、ESDMもEIBIのどちらの療育でも最高の質で治療は最高の質で行われたとのことです。
「セラピストは療育マニュアルに沿って、各療育の原則を忠実に守っていました。
また、頻繁に監督を受け、保護者が介入策を使用し、療育で得られた子どものスキルを家庭や地域社会での日常生活の中で一般化できるように指導しました」
子どもたちは、登録時から6ヶ月間隔で4回評価を受けました。
セラピストは毎日進捗状況を評価し、子どもたちの変化する発達や行動のニーズに合わせて頻繁に療育内容を変更しました。
研究チームは、この研究で発達程度を測るために用いた4つの指標、
・受容的言語能力(読む・聞く)
・表現コミュニケーション能力
・言語に関わらない能力
・自閉症の症状の変化
については、療育方法も時間の量も全体的には差がないことを明らかにしました。
また、どちらの療育方法でもセラピストは個々の子どものニーズを満たすために、柔軟にそれを利用し対応していました。
どちらのモデルも、必要とする子どもにはより大きな構造と実践を提供し、準備ができている子どもにはより多くの子どもの選択と自然主義的な指導を提供する傾向がありました。
「この2つのような細かく指定された療育アプローチの中でも、セラピストは個々の子どものニーズに合わせて調整していることは、保護者は心強く感じるはずです」
療育スタイルや時間がその効果に関係がないことは、発達遅延の初期重症度と自閉症の症状の重症度の影響を受けることもありませんでした。
今回の研究結果による現在の知見は、研究対象となった幼児期の子どもにのみ適用されるものかもしれません。
これらの知見は、再現試験によって検証される必要があります。
療育方法の違い、療育を受ける時間とその効果の関係についてより理解するためには、幼児だけでなくもっと大きくなた子どもたちでも行う必要があるでしょう。
(出典:米カリフォルニア大学デイビス校医学部)(画像:Unsplash)
療育の方法、そして受ける時間で、療育の効果の差はほとんどない。
今回の研究は幼児に限ったものになりますが、そういうことです。
療育の先生が重要だということには変わりないようですが、それらにあまり悩む必要はないというのは助かりますね。
(チャーリー)