- 自閉症の人はなぜ人の顔に興味を示さないのか?
- 自閉症の人とそうでない人の視線の動きはどのように違うのか?
- 自閉症の特性が社会的な注意やコミュニケーション能力にどのように影響するのか?
自閉症の人もそうでない人も、社会的な場面が写された写真を見ると、一般的には最初に人の顔を見てから画像の他の部分に視線を移動させます。
そして、自閉症でない人は数秒後に視線を人の顔に戻しますが、自閉症の人は戻しません。
視線追跡の新しい研究でそれがわかりました。
この発見は、自閉症の人がそうでない人よりも顔を見ている時間が全体的に少ない傾向がある理由を説明するのに役立つかもしれません。
それは、人の顔に興味がないということではなく、社会的な刺激が同じように注意をひかないということです。
これまでの研究では、人の学習能力や異なる刺激を処理する能力などの特定の原因が、自閉症の人の社会的注意力にどのように影響するかを調べてきました。
しかし、「見るパターン」がどのように変化するかを評価したものはほとんどありませんでした。
自閉症でない人は、成長していくのにあわせて、人の顔への興味が増加していきます。
しかし、自閉症の人はそれもありません。
そして、それらの傾向が強い自閉症の人ほどコミュニケーション能力も低くなっていました。
この研究を行った、英ロンドン大学の神経発達のエミリー・ジョーンズ教授は、この結果からわかるように視線追跡のデータから得られることは多いといいます。
ジョーンズ教授らの研究チームは、自閉症のバイオマーカーを特定するための多国間の取り組みである欧州縦断的自閉症プロジェクト (LEAP) に参加している6歳から30 歳までの650人の自閉症の人とそうでない人の視線の追跡データを集めました。
視線追跡装置を使用して、コンピュータの画面上に無作為に並べられた6枚の社会的場面の写真(例えば、子どもたちが遊んでいるところ、大人が子どもにおもちゃを渡しているところなど)を20秒間ずつ見せ、それを見る視線を追跡しました。
研究者チームは、1秒ごとに写真の社会的要素(人の顔、頭、髪など)を見るのに費やした時間と、シーンの他の部分を見るのに費やした時間の割合を測定し、その割合が時間の経過とともにどのように変化したかを計算しました。
そして、これらの見るパターンが年齢によってどのように変化するかについても調べました。
すべての年齢の自閉症の人たちは、自閉症でない人と同じく最初に人の顔を見る可能性が高くなっていました。
それは、自閉症は、人の顔を見つける能力に影響を与えないという以前の研究結果を支持するものです。
しかし、時間が経つにつれて、自閉症の人とそうでない人とで、見ているところが違ってきました。
写真の中の他の要素も見渡したあと、自閉症でない成人は人の顔に視線を戻しました。
しかし、自閉症でない子ども、全ての年齢の自閉症の人はそうしていませんでした。
研究は”Biological Psychiatry: Cognitive Neuroscience and Neuroimaging”に掲載されました。
この研究結果から、最初の見るパターン、次に見るパターンと視線には2つの異なるメカニズムがあることが示唆され、自閉症が影響するのは後者のみだと、ジョーンズ教授はいいます。
そして、個人差も調べることで、ジョーンズ教授らの研究チームは、自閉症でない人ともっとも異なる見方をしていた自閉症の人は、コミュニケーション能力と社会に関わる能力が低いことも発見しました。
今後、ジョーンズ教授らは自閉症の人とそうでない人の社会的注意のパターンに性別による違いがあるかどうかも研究する予定です。
自閉症の人も人の顔に注目するものの、それは最初だけだったという研究結果です。
人の顔を見なければ、コミュニケーションは必ずしもできないわけではないと思います。
顔を見ないからコミュニケーションがとれない。
そんなふうに考えてしまうことが、コミュニケーションがますますできなくなってしまうことにつながるはずです。
無理して顔を見る必要はなく、顔を見ないままコミュニケーションすれば良いと私は思っています。
自閉症の子どもたちはモノよりも人の顔から情報を得るのが難しい
(チャーリー)