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発達障害を障害とすること等への批判。良い変化につなぐには

time 2020/10/16

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

発達障害を障害とすること等への批判。良い変化につなぐには
  • 精神医学の過剰医療化に対して、どんな反応があるか?
  • 反拡大主義と利用主義の違いは何か?
  • 社会による障害の医療化の根本的な問題は何か?

「精神医学分野の過剰医療化」

そう私が呼んでいる心配なことがあります。

人のさまざまなあり方を病気や障害とみなす傾向が強まっていることを意味するものです。

これに対して2つの反応があります。私はそれに関心をもっています。

私が「反拡大主義」と呼んでいる反応があります。
新しい診断名ができるたびに、精神医学の範囲の拡大を批判をします。

そしてもう一つの反応「利用主義」は、ニューロダイバーシティの推進が最もな例になります。
ニューロダイバーシティの提唱者は、発達障害、自閉症、ADHDのような分類を受け入れる傾向があります。
そして、世界をよりニューロダイバーシティに適したものにしようと、これらの診断名を利用していきます。

これは、障害者の権利擁護の社会モデルの伝統に基づいており、マイノリティグループに障壁や汚名を着せる態度を特定し、それに挑戦するものです。
反拡大主義とは異なり、専門家ではなく当事者によって主導されているのが特徴です。

どちらもある意味で、同じです。
反拡大主義も利用主義も、病気や障害ではないと理解しているものがそうされることへの反応です。
しかし、それぞれが実際には他方と矛盾することが多く、また、問題の根本的な分析の暗黙の違いが明らかにあると私は思っています。

私は反拡大主義に賛成です。

例えば、境界性パーソナリティ障害は、間違いなく精神保健の専門家でさえもそれは病気とはしないほうが良かったと考えています。
それは、同性愛を精神疾患とするための壊滅的な誤りでした。
また、いくつかの精神疾患の分類は、患者の利益よりも利益を求める製薬会社に利用されていることについての懸念もあります。

しかしそれでも多くの場合、反拡大主義的な批判は、利用主義に比べると劣るものだと訴えたいと思います。

私は利用主義にはもっと賛成です。

それは反拡大主義が、原因よりも症状に焦点を当てているのに対し、利用主義はその両方を扱う可能性が高いからです。

精神科医は、社会で暗黙のうちに「病的」とみなされている人の違いを病気や障害として扱わなければなりません。

例えば過去、精神科医は同性愛を精神疾患として分類していました。
それはその時代、社会が深く同性愛嫌悪に陥っており、ゲイであることは根本的に悪いことであり、病気であると決めつけていたからです。
当時、精神科医は病気として扱わなければなりませんでした。

現在において、もしイギリスの精神科医がゲイであることを病気として扱おうとしても、社会がそれを許すことはありません。それは精神疾患ではありません。

発達障害についても同様なことが考えられるでしょう。

誰が病気、障害なのかを決めているのは社会です。精神医学ではありません。

ほとんどの場合、精神科医は、社会によってすでに病的とみなされている(疎外されている)人のあり方を、病気や障害と公式に認定するだけです。

根本的な問題は、社会がそれまでそうでなかったものを病気や障害と考える、社会による「医療化」にあります。

この私の考えが正しければ、反拡大主義のように精神医学そのものを批判することによって、精神医学の分類の拡大を止めようとしてもそれはあまり意味がありません。

反拡大主義では、精神科医が実際の力よりもはるかに大きな力を持っていると誤解しています。
精神科医が病気や障害を増やしていると考えています。
そのために、原因よりも分類や診断名に焦点を当てることになってしまうのです。

しかし、過去にあった同性愛に対しての医療化のように、原因は社会の同性愛嫌悪でした。
このように分類や診断名だけでなく、原因にも焦点を当てることが必要な場合があります。

分類や診断名に焦点を当てすぎると、原因への対処から遠ざかってしまいます。

そして、反拡大主義によって特定の分類をなくすことに成功したとしても、それは有害なものになるはずです。

たとえば、反拡大主義の人の多くが完全に廃止するべきだと主張する「自閉症 」や「ADHD」 のような分類をなくしても、その人たちは疎外され、困難をかかえ続けるはずです。
そして、適切なサポートを受けられなくなる可能性が高くなります。

対照的に、利用主義であるニューロダイバーシティの視点では、その分類を利用することで、「自閉症 」や「ADHD」の人がかかえる困難を認め、その困難を引き起こしている社会構造に挑戦する基盤を提供します。

そして、これを支持する人たちが増えれば増えるほど、社会は、何が正常であるかという概念と、それに適合するための構造と実践の両方を変えることを余儀なくされていきます。

その最も明確な例が自閉症といえます。

まだ非常に長い道のりがありますが、スーパーや映画館に「感覚にやさしいスペース」ができるなど困難の重要な除去につながっているだけでなく、学校や職場で自閉症の人たちについて考えるようになってきました。

これらはとても小さな一歩ですが、最終的には、発達障害の人たちに優しい社会にならざるを得なくなり、そうなっていくほど、私たちが「正常」と考える範囲も広がっていくはずです。

少なくとも、神経多様性を持つ人たちの苦しみが、マイノリティによるストレスや疎外によって引き起こされているのであれば、それをなくそうと挑戦していくことで、社会がより良く繁栄し、精神医学分野での新しい分類や診断は必要なくなります。

有害な精神医学的の分類や新たな診断名に反対することは極めて重要です。

そして、意味のある良い変化を起こしたいと願うのであれば、その分類や診断名だけでなく、その根本的な原因とも闘う利用主義のほうが、多くの場合により良い戦術となるはずです。

英ブリストル大学哲学科 博士 ロバート・チャップマン

(出典:米Psychology Today)(画像:Pixabay

障害をかかえていても、社会、人が変わることで減らせる困難は多くあると思います。

そうした困難はできる限りなくなることを願います。

一方で、それですべての困難がなくなるわけではありません。

すべてを社会の変化に委ねるのも、それは違うと私は思っています。

自分vs社会ではなく、自分も含めての社会です。

発達障害当事者の私が思う「ニューロダイバーシティ」の問題点

(チャーリー)


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