- 自閉症の幼児は音を共有する傾向があるのか?
- 典型的に発達している幼児と自閉症の幼児の間に共同注意スキルの違いはあるのか?
- 自閉症の子どもたちが新しい言葉を学ぶのに音の共同注意がどのように関わっているのか?
新しい研究によれば、そうでない幼児とは異なり、自閉症の幼児は音を含む経験を共有しない傾向があります。
例えば、親と一緒に音楽に合わせて踊ったり、猫の鳴き声に向かって親の注意を向けたりすることなどです。
このように音を共有することは、他の人と意図的に何かに一緒に注目する、共同注意の一形態です。
それは、幼児が社会的スキルとコミュニケーションの方法を学ぶのに役立ちます。
共同注意はまた、例えば親がおもちゃを見て名前を付け、子どもが親の視線に従って、そのおもちゃを見るときにも発生します。
そうして子どもは通常、幼児期に共同注意を発達させますが、自閉症の子どもはそうではないことが多く、そのスキルの欠如が自閉症の初期徴候の一つであると考えられています。
これまでの研究の多くは、親が子どもに顔や特定の物を見てもらうために子どもに注目してもらおうとする状況、視覚的な共同注意に焦点を当ててきました。
今回の新しい研究では、さまざまな音によって誘発される共同注意を調べました。
そして、自閉症の子どもは新しい音に興味を持つことは多いものの、それを共有することにはあまり興味がないことがわかりました。
音を共有するという子どもの経験の違いが、その後の言語発達にどのように関係しているかを発見するための一歩になると、今回の研究を行った米ジョージア州立大学のローレン・アダムソン教授は言います。
この研究結果は、”Autism Research”に掲載されました。
アダムソン教授らの研究チームは、典型的に発達している49人の幼児、46人の自閉症の幼児、自閉症でない、言語障害などの他の発達障害を持つ46人の幼児、全員生後30ヶ月未満で聴覚的な共同関与スキル、共有経験の周りの相互作用と結合された共同注意について調べました。
それぞれの子どもが親や介護者と一緒に遊んでいる間、研究者は隠しスピーカーで次のような音を出しました。
楽器のクラシック音楽、鳥のさえずりや猫の鳴き声、電車やバイクの音、子どもの名前を含む人間のスピーチの録音。
研究者たちは親には、まず音を無視して遊び続けるように指示しました。
その後、子どもが音について親に話しかけたり、親の顔をみて音がする方を指差ししたりするかを見て、子どもが音に気づき、それを親と共有しようとしたかを判断しました。
人のスピーチ以外の音については、すべてのグループのほとんどの幼児が音に気づき、その音の方を向いたり、音源の方を向いたりしていました。
自閉症の幼児の中には、音に気付いて遊びを止めたり、目を見開いたりしても音の方を見ない子もいました。
しかし、人のスピーチが聞こえたときに、有意な違いが表れました。
自閉症の子どもたちは、自分の名前を呼ばれても、声に気づいたり、声の方を向いたりすることが他の2つのグループよりも低いものでした。
また、音声を共有しようとしたのはわずか15パーセントでした。
典型的な子どもたちでは73パーセント、その他の発達障害のある子どもたちでは41パーセントです。
「自閉症の子どもでは、大人が音に注意させようとしているときに音に意識を向けられる子どももいますが、自分から大人に音に注意させようとすることはほとんどありません」
そうアダムソン教授は言います。
今回の研究に関わっていない、米カリフォルニア大学の教育と精神医学のピーター・マンディ教授は、共同注意の研究を音にまで広げることは、自閉症の早期発見の新しい形への扉を開くことになる、またどの脳領域が聴覚と視覚の両方の共同注意に関わっているのかを突き止めるのにも役に立つといいます。
また、今回の研究は自閉症の子どもたちが新しく言葉を学ぶのに必要となる、親からの貴重な合図を逃していることを示唆しています。これは療育などに関係するはずです。
研究チームは、どのようにして子どもたちが音の共同注意を行い、その行動の意味を理解しているかについての評価も行いました。
例えば、にゃーと聞こえたら猫を探そうと周りを見回したりしたかです。
この評価でも、自閉症の子どもたちはそうでない子どもたちに比べて、少ないものでした。
米ボストン・カレッジの教育と社会のクリステン・ボッテマビューテル准教授はこう言います。
「自閉症の子供たちは、親のサポートを受けても、音の周りに関与することが困難であったという事実は、よく考えなければならない重要なことです。
音への共同注意を見ることで、どのような種類の相互作用が自閉症の子どもにとって特に困難であるかを明らかにすることができます。
療育の現場などで、子どもたちが言葉を学ぶためのサポートとなる新しい方法を考案するのにも役立ちます」
たしかにうちの子も音は間違いなく聞こえていますが、何か気づく音があっても自分から教えてくれることはありませんでした。
私にはその理由がわかりませんが、小さなころから、ずっとどこかを見ていることがあります。
思えば、それが私にも気づかせようとしている行動なのかもしれません。
(チャーリー)