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自閉症とこれまで注目されていなかった脳の領域「脳幹」の関係

time 2020/08/28

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自閉症とこれまで注目されていなかった脳の領域「脳幹」の関係

発達障害である自閉症の人の中には、体の動きを調整するのが難しい人もいます。
日常の音が耐えられないほど大きく聞こえるような感覚過敏、不整脈や睡眠リズムの問題などもかかえていることもあります。
これらの一見バラバラな問題のすべてに、脳幹と呼ばれる脳の小さな領域が関係しています。

脳幹は自閉症に大きく関係するとされる時期、初期段階で形成される脳領域の一つです。
脳と脊髄の間の結節点に位置する脳幹は運動と感覚情報の中継拠点として機能し呼吸、脈拍、睡眠などの重要な無意識の機能を司る自律神経系を調整します。
脳幹はまた、自閉症に関係する他の様々な脳領域を接続するハブとしても機能しています。

「自閉症は異常な接続性の状態であると考えると、たくさんの接続が集まり、信号が通過する領域の脳幹に違いを見つけることができるかもしれません」

そう、米イェール大学の臨床心理学の講師、ロジャー・ジョウは言います。
これは論理的な考え方にもかかわらず、これまで脳幹は注目されていませんでした。
英ストラスクライド大学の自閉症イノベーション研究所のディレクター、ジョナサン・デラフィールド=バットはこう言います。

「神経科学は大脳皮質と皮質機能に焦点を当ててきました。
小脳についても膨大な量の研究が行われてきました。
しかし、その間の脳幹は見過ごされてきました」

ジョウとデラフィールド=バットは、脳幹の発達の乱れが重要な接続を乱し、自閉症の行動の原因となるか、あるいは少なくとも一部の自閉症の行動に関係するかどうかを研究している研究者です。
脳幹の大きさは小さく、そしてその位置の問題から、この理論の検証は簡単ではありません。
しかし、画像技術とソフトウェアの改良により、研究者はこの領域をより詳しく知ることができるようになってきました。
自閉症との関連性だけでなく、これまでの研究で、自閉症の人が脳幹が制御する身体機能の障害、例えば心拍数、呼吸、睡眠-覚醒サイクルについても問題をかかえることを明らかにしています。

自閉症における脳幹の役割についての理論は新しいものではありません。
1960年代初頭、アメリカ海軍の研究者バーナード・リムランドは、感覚知覚をフィルターする脳幹の一部が、感覚過敏などの自閉症の行動特性の一部に関係しているという仮説を立てています。
これは、自閉症の原因についての最初の脳に基づく理論でした。
しかし、リムランドはそれを検証することはなく、すぐに忘れ去られてしまいました

1980年代から1990年代にかけて、10数件の死後の脳組織や画像研究により、自閉症の人の脳に構造的な異常があることが示唆されましたが、記載された異常点は研究ごとに異なってなっており、ときには矛盾することもありました。
しかし、矛盾のいくつかは、脳幹が脳の画像でキャプチャすることが困難なことが原因であった可能性があります。
米ウィスコンシン大学の運動学、ブリタニー ・トラバース助教授はこう言います。

「脳幹は呼吸と循環によって一定の動きをしている主要な血管と脳脊髄液に囲まれています。
そのため、脳のスキャン画像にノイズが現れます。
また詳細を明らかにするためには、長いスキャン時間が必要となるような、とても小さく高密度で複雑な配置で詰め込まれた複数の組織タイプが含まれている部位でもあります。
さらには、これまで誰も脳幹を画像化しようともしてきませんでした」

そのために、画像化ソフトウェアも脳幹を正しく画像化できるようにはなっていませんでした。
それでも、過去10年ほどの間に発表されたいくつかの研究では、脳幹に焦点を当て、その大きさや発達の軌跡が自閉症の人では変化していることを示唆しています。

2009年と2013年に発表された研究のペアによると、自閉症の子の脳幹の成長は15歳までにそうでない子どもに追いつきますが、8歳から12歳の間は自閉症の子の脳幹はそうでない子に比べて小さくなっていました。

この大きさの変化は、自閉症の特徴の重症度と関連しているようです。

そうでない子に比べてより大きく脳幹が異なっていた、12歳より前の自閉症の子は味や食感についてより多くの感覚過敏をかかえていました。
小さい脳幹を持つ自閉症の子供たちは、全体的により顕著な自閉症の特徴を持つ傾向があるとトラバース助教授は言います。

また、脳幹の白質-脳の領域を接続する神経線維-が自閉症の人たちでは異なっている可能性があります。

自閉症の少年や男性で脳幹の白質の組織化が不十分な人は、より重度の自閉症の特徴をもち、握力が弱くなっていて脳幹と自閉症の運動障害との間のリンクを示唆しています。
自閉症の少年はそうでない少年よりも脳幹の白質が少ないことも示唆されていて、運動技能のテストの成績の悪さと関連していました。

自閉症の人では基本的な身体機能が異なっていることを示す研究結果が増えており、これらのプロセスを制御する脳幹に注目が今は集まってきています。

例えば、多くの研究で自閉症の人とそうでない人とでは心拍数に違いがあることを示唆しています。
ある研究チームは、心拍数の違いは社会的な合図を認識する能力に影響を与えている可能性があることを発見しています。

同様に複数の研究で、自閉症の人が眠りにつくのに問題をかかえることも示されています。
また、自閉症に関連した遺伝子疾患であるレット症候群の子どもたちに見られる呼吸困難は、脳幹の異なる回路に関連している可能性があることがマウスの研究で示唆されています。

脳幹は運動を調整する役割を持っています。
その機能不全が自閉症の運動障害に関係している可能性があると主張する研究者もいます。

自閉症の人たちは、脳幹の感覚と運動情報の統合に問題があることが示唆される、サッカードと呼ばれる眼球運動に違いがあることもわかっています。
また、自閉症の人は腕を前後に振るなどの単純な動作をするときに、そうではない人とは加速と減速が異なっています。

上丘と呼ばれる脳幹のもう一つの部分は、視覚的注意の重要な役割を果たしています。
ここは目の網膜から情報を受け取り、顔、生物学的な動き、感情的な刺激に対する反応に対する注意を調整します。
ここの発達の問題が自閉症におけるこれらの機能の障害の根底にある可能性があると、一部の研究者は主張しています。

さらに、脳幹は音の処理にも貢献しています。
過去50年間の複数の研究により、自閉症の子どもや後に自閉症と診断された乳児では、音に対する脳幹の反応が小さく、遅くなる傾向があることが示されています。
その結果、

「音声音の処理には時間がかかる可能性があり、そのパスは自閉症を持っている人の中で少し異なる可能性があります。
それがコミュニケーションを困難にしている可能性があります」

そう、米レイク・エリー・カレッジ・オブ・オステオパシック・メディスンの解剖学のディレクター、ランディ・クレザは言います。
死亡した自閉症の人の脳をみると、そうでない人に比べて聴覚脳幹ニューロンが少なくなっていたことをクレザの研究チームが発見しています。

脳幹によって制御されているスタペディア反射として知られる音に対する反応が、自閉症の子どもたちではよりゆっくりと起こり、低い音量でトリガーされることが2013年に報告されています。

この反射の違いが音に対する過敏症に影響を与えている可能性があります。
そして、音に対する脳幹の反応の違いは乳児においての自閉症の診断に利用できる可能性があります。

これらの知見は、脳幹が大きく自閉症に関係していることを示唆していますが、これまでのほとんどのイメージング研究は脳幹については不十分でした。
トラバース助教授は、ウィスコンシン大学のイメージング専門家と協力して、脳幹内の小さな構造をより詳細に観察するための新しいイメージングソフトウェアを開発しています。

「私は、脳幹を見るというルネッサンスの中にいることを期待しています。
5年後、10年後には、脳幹がやはり問題だったのだと思えるようになるかもしれません」

(出典:米SPECTRUM)(画像:Pixabay

かかえている困難を軽減できるサポートにつながるように、ますますの研究を期待しています。

うちの子も幼いときにMRIで脳をスキャンしてもらい、その画像からは異常は見られないと言われたときのことを思い出しました。

赤ちゃんの脳波の異常で自閉症の診断を予測できる可能性。研究

(チャーリー)


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