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自閉症の子の母たちを30年間も苦しめた「冷蔵庫マザー」理論

time 2020/08/22

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

自閉症の子の母たちを30年間も苦しめた「冷蔵庫マザー」理論

「冷蔵庫マザー」

これは、1940年代から60年代にあった、現在は否定されている理論です。
発達障害である自閉症の子どもの原因は、子どもに対して冷たい、無視をするなどの行動の結果だと母親を非難するものでした。

冷蔵庫マザー理論は、米ジョン・ホプキンス大学の精神科医レオ・カナー博士が作りました。
自閉症が神経学的条件であることを発見しました。
症状は一般的に3歳前に始まり、原因を特定することが困難でした。
カナー博士は、神経学的な原因を見つけることができず、自閉症は環境要因の結果であると考えていました。

カナー博士以前は、自閉症による行動は統合失調症や精神病と同じカテゴリーに分類していました。

カナー博士は、自閉症という新しい領域に識別しました。
しかし、カナー博士は多くの自閉症の子どもたちを艦猿することはなく、限られた子どもたちを何十年も観察していました。
カナー博士が治療した子どもたちは、すべて白人、上流階級または中流階級で、高学歴の家庭の出身でした。
カナー博士は自閉症はこの特定の人口層の子どもたちにだけ、起こる可能性が高いと仮定しました。

さらに誤ったことに、カナー博士はまた、これらの子どもたちの両親、とくに母親が感情的に冷たく、子どもを養っていないと思い込んでいました。
カナー博士は子どもに対する母親の行動を、まるでロボット的で愛情のないものと表現しています。
そして、冷蔵庫の中の冷たい温度に言及して、「冷蔵庫マザー」という言葉を思いつきました。

それから、冷蔵庫マザー理論は何十年にもわたって支持されるものとなりました。
カナー博士は自閉症について、初期の頃からの専門家であり、信頼されていたためです。

それ以降、自閉症もアスペルガー症候群もこの理論が原因であると医師たちに信じられるようになりました。

米シカゴ大学のブルーノ・ベッテルハイム博士は、「冷蔵庫マザー」という言葉をさらに煽りました。
ベッテルハイム博士は30年間、行動障害のある子どもたちのための住宅治療施設の施設長を務め、多くの成功と名声を得ました。

ベッテルハイム博士は「冷蔵庫マザー」という言葉が好きで、それをさらに発展させました。
ベッテルハイム博士の理論は、自閉症の子どもの母親をさらに非難するものでした。

ベッテルハイム博士は、自閉症は母親が十分に愛情を持っていないことによって引き起こされる、感情的な障害であると考えていました。
さらには、ベッテルハイム博士は自閉症の子どもたちの生活をナチスの強制収容所に住んでいた子どもたちと比較しました。

彼らの母親はナチスの看守のようなものであり、ナチスと同じように子どもたちを扱っていると言いました。
ベッテルハイム博士は第二次世界大戦中に強制収容所に10ヶ月間滞在した経験があります。
そうした経験に加えて、当時は名声を得ていたため、その考えはますます支持されました。

冷蔵庫マザー理論について出版すると、当時のメディアのおかげでそれは成功を収めました。
その結果、冷蔵庫マザー論はさらに受け入れられ、広まっていきました。

もちろん、これは自閉症の子どもを育てる母親にはまったく役に立つ理論ではありませんでした。

現在知られているように、自閉症は発達障害で、症状の範囲やレベルは様々です。
多くの場合、自閉症の子どもたちは社会的スキル、行動、言語に困難をかかえていて、話すことができないこともあります。
自閉症の原因はまだ特定されていませんが、遺伝的要因と環境要因の組み合わせであり、母親の行動のせいではありません。

残念ながら、冷蔵庫マザー理論は1960年代まで精神科医には広く受け入れられていました。

バーナード・リムランドという名の心理学者が、カナー博士とベッテルハイム博士のこの理論に挑戦しました。
リムランド博士には自閉症の子どもがいました。
そのため、はるかに信憑性をもって、自閉症の子どもについてよく知っていました。

リムランド博士は研究を行い、冷蔵庫マザー理論は仮定と状況証拠だけで考えられたものだと結論づけました。
1964年に、リムランド博士は研究結果を発表しました。
「冷蔵庫マザーについて疑問視する。自閉症に対する本当の理論について」

そして、リムランド博士は自閉症は偶然に起こった生物学的条件であり、誰も非難することはできないことを示唆しました。

リムランド博士のおかげで、自閉症の子どもの親は罪悪感を感じたり、避難されるべき理由はなくなりました。

当時、リムランド博士の研究は冷蔵庫マザー理論のときのように注目はされませんでしたが、自閉症の子どもの親たちを支えるものとなりました。

「冷蔵庫マザー」

本当に自閉症の子どもをもつ、すべての母親を傷つけてきた言葉でした。
自閉症のついてまだ何もわかっていなく、早期療育の術もなく、何もなかった時代でした。

そして自閉症の子どもをもつ親たちが、リムランド博士の研究を知り、ボランティアで活動を始めて、現在の全米自閉症協会(ASA)が築かれています。

「冷蔵庫マザー」現在では完全に否定されています。

しかしそれによって、自閉症の子どもの母親たちが30年間も傷つけられてきた時代があったのです。

(出典:米moms)(画像:Unsplash

「冷蔵庫マザー」という言葉は知らなくても、今でも「しつけが悪いから」「かまってやらなかったから」そんなふうに言う人はいます。

そんなことを言われると、100パーセント私はそうではなかったとは言い切れないはずです。
考えてしまいます。発達障害の子の親に限らず、親であれば誰でも。

なので結局、そんな人は失礼ながら全力でスルーするのが一番良いですね。

発達障害の子のママでも楽観的であれば、うつ病などになりにくい

(チャーリー)


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