フランチェスカ・マンカは息子のサイモンが発達障害の自閉症と診断されたとき、これからは適切なサポートを受けることができると安心しました。
しかし、日常生活はずっと厳しいままでした。
6歳になった息子は、教師にひどい暴言を吐いたり、授業を妨害したりしました。
また、先生がドアのセキュリティコードを使った時に鳴る音から、ドアのセキュリティコードを解読して、外に逃げ出すこともよくありました。
そのために、すぐに退学になってしまいました。
家でも、洗った服を着せようとするといつもパニックを起こしました。
お願いしたり、応援したりすると食事を止めてしまいました。
心理学者からの指導「ルーチンを作ることが彼を安心させます」、それはなんの効果もないことは明らかでした。
学校に行けなくなってから、3ヶ月の間はずっとパジャマで家の中で過ごし、家から出ることはありませんでした。
「私は自閉症の子を育てるための本をたくさん読みました。どれも効果はありませんでした。
その校長先生からはこう言われました。
『生徒を拒否することは初めてです。
しかし、私たちには彼にどう対応していいのかわからないのです』」
そのときに、校長からは自閉症の一種である病的要求回避(PDA)について教えられました。
「まさにそれだと思いました。それは息子のことを記述していました。
息子は自閉症です。
感覚過敏にも悩まされていて、人の食べ物を噛む音にも耐えることができないため、
一緒に食事をすることもできませんでした。
しかしそれだけではないのです。
どんなお願いも拒否するのです。
歯を磨いて。服を着替えて。
何かを頼むとすぐに不安になりました。
昼食は何を食べたい?学校ではどうだった?
そうした質問も要求だととらえて、同じようになりました」
その後、サイモンは自閉症の一種であるPDAと診断されました。
英国自閉症協会によれば、PDAをかかえる人は他の自閉症の人に比べて、コミュニケーションスキルをもっているように見え、むしろ得意であるように見えることもあります。
しかし、そのためにかかえている困難が隠れてしまうことがあります。
フランチェスカは息子のサイモンもそうだといいます。
「医師の前では、うまく隠してしまうのです」
これまでに、お願いをする代わりにご褒美を与えるような方法も試しましたがサイモンには適しませんでした。
そこで、お願いするのを止めました。
「私は、
『お昼に私はブロッコリーを食べる』
と言うようにしました。
息子が嫌いな食べ物を残しても何も言わないようにしました。
『私が30秒後にパスタを食べる』と言うと、
息子も食べると言うようになり、問題はなくなっていきました。
『公園に遊びに行く』と言って私は家から出るようになりました。
すると息子も出ます。
最初は10分間だけです。
そして、徐々に時間を伸ばしていきました。
今では学校に息子を迎えに行くと、自分から今日はとてもいい一日だったと言うようになりました。
そして、その日のことを自分から話してくれるようになりました」
サイモンのニーズに合った学校はなかなか見つかりませんでしたが、8歳のときに自閉症スペクトラム障害を含む社会的、感情的、行動的な困難をもつさまざまな少年少女のための学校「ウェスト・キルビー・レジデンシャル・スクール」を見つけました。
「『素晴らしい鳥を飼っている、家庭教師の先生をしている友だちに、私は会いに行く。』
そうやって息子を騙して、その学校に行きました。(学校では鳥を飼っているのです)
最初は短い時間でしたが、徐々に時間を長くして通えるようになりました。
先生たちも手伝ってくれて、学校の授業を受けるようになるまでには1年かかりましたが、今では落ち着いて授業を受けています。
しかし、まだ問題はあります。
息子はときどき、私が誘導していることに気づくようになりました。
先日はシリアルの入った皿を出しておいたのですが、自分に食べさせようと置いているのかと言って食べなくなりました。
今は、息子が好きな食べ物と嫌いな食べ物の両方を出して、私が食べるために置いていると言っています。
すると、また食べてくれるようになりました」
11歳になった今、フランチェスカは劇的に変わったといいます。
「とても知的になりました。
電子機器が大好きです。
そして、ゲーム実況をするユーチューバーになると、綿密なビジネスプランを考えて私に見せてくれます。
どうやって視聴者を獲得するか、商品を販売するかの戦略を考えています。
数年前の子どもとは同じ子どもだとは思えません」
PDA協議会のビッキ・スレファル評議員はこう言います。
「PDAを診断することは簡単ではありません。
それは、見逃されたり、誤解されてしまうためです。
私たちの2018年の調査では、自閉症でPDAをかかえる人の多くは、家族にも誤解されていました。
そして、PDAの子どもの70パーセントは学校に通っていなかったり、通うことに困難をかかえています」
ビジネスコンサルティングを自営業で行っているフランチェスカは、新型コロナウィルス感染拡大による閉じこもりの時期に、息子のサイモンのような特別支援教育が必要な高校生のために、起業のためのビジネスプログラムを作ることを思い立ち、情熱をもって現在取り組んでいます。
地元の7つの学校と2つの自閉症の人のためのセンターで、ワークショップを提供しています。
「私は、卒業後の子どもへの支援が十分でないと感じています。
そこでビジネスのアイデアが持っていれば起業するための方法を教えています。
特別支援を必要としている大人たちが、私のブログを見てメッセージを送ってくれます。
『自分はずっと間違った仕事をしている、何年もの間、必要とする支援を受けることがありません』
私は特別支援を必要とする子どもの母親です。
それぞれの子どもたち、そしてそれぞれのニーズを理解する重要性を知っています。
そして、ビジネスコンサルティングの仕事を22年行ってきた経験があります。
特別支援を必要とする人がビジネスのアイデアを持っていたら、私は他のクライアントと同様に、どうすれば実現できるか、どうやってマーケティングするかを一緒に考えていきます。
そして、もっている彼らの強みと弱みを見極めることも手伝います。
たとえば数字の管理は得意でも、営業に必要となるコミュニケーションが苦手であれば、それを解決するために販売代理店と組むような方法を検討するのです。
私は誰もが自分の可能性を最大限に発揮できるようにサポートがあるべきだと考えています」
日本ではあまり聞き慣れない、病的要求回避(PDA)。
今では、この親子さんはうまくいっているようで何よりです。
親としては、これは本当に疲れるだろうと察します。
ジキルとハイドになる子、発達障害に伴う病的要求回避(PDA)
(チャーリー)