新しい研究によれば、発達障害である自閉症の人は目に映るものすべての詳細を見ようとするために、視線が定まらない問題をかかえる傾向があります。
これまでの研究では「サッカード」と呼ばれる視線の高速な切り替えについて、特定の視聴条件で自閉症の人たちには違いがあることがわかっています。
今回の新しい研究は、自閉症の人たちは日常生活の中でよく見る光景のビデオを見たときにも、この視線の乱れがあることを示す最初のものになります。
この発見は、自閉症の人たちは社会的動機が低いので顔などの社会的刺激を見るのを避ける、というこれまでの考え方に異論をとなえるものかもしれません。
人の顔などへの関心がないのではなく、自閉症の人が社会的刺激に注意を払おうとしても、この視線を乱す眼球の動きがそれを妨げている可能性があると研究チームはいいます。
ドイツのゲーテ大学の臨床研究責任者ニコ・バストはこう言います。
「誰も眼球運動が何を意味するのかについては、実際には調べていませんでした。
自閉症の人たちは、この眼球運動によって社会的な刺激をきちんと見ることができていないのかもしれません」
目の動きの調整欠如は、社会的な相互作用を妨げる可能性があります、
今回の研究には関わっていないスウェーデンのカロリンスカ研究所の臨床心理学者のヨハン・ルンディン・クレバーグはこう言います。
「これは、自閉症の人の脳の視覚系が別の方法で発達していることを示す、生物学的な証拠だとも考えることができます」
バストの研究チームは、142人の自閉症の人と同数のそうでない人の視線を分析しました。
参加者は、木の枝に止まっている鳥や、路上でインタビューを受ける人々など、日常風景のビデオを見ました。
アイトラッカーを用いて、実験者は参加者の瞳孔の拡張と特定のポイントに視線を固定する時間、およびサッカードの持続時間と距離を測定しました。
自閉症の人とそうでない人との間で瞳孔拡張や固定時間に違いは見られませんでした。
しかし、自閉症の人たちにはそうでない人に比べて、小さくて短いサッカードが見られました。
これらの結果は、自然の光景のビデオや人が写っているビデオで違いはありませんでした。
それは、社会的動機の欠如が原因ではなく、眼球運動パターンの一般的な混乱に起因することを示唆しています。
この研究は”the Journal of Child Psychology and Psychiatry”に掲載されました。
バストはこう言います。
「自閉症の人は、現在の注目点から遠く離れている刺激を知覚する基本的な知覚の難しさを持っているのかもしれません」
この研究ではさらに、理由は明らかになっていませんが、この眼球運動の問題は反復行動の程度と関連していることが示されています。
この研究に関与していない米カンザス自閉症研究訓練センターのマシュー・モスコニ所長はこう言います。
「これが自閉症の中核症状とどのように関係しているのかを発達的に理解することが重要です。
長期的な実験を行えば、脳が眼球運動の違いにどのように適応するかについての洞察を得ることができるでしょう。
この視線の動きの問題が、医療上の大きな問題とどのように関係しているのか、また、どのように発達に影響を与えるのかがわかってくるはずです」
眼球運動を制御することで知られている小脳とポンズ内の神経回路であるポンズ小脳ネットワークが自閉症の人に見られる視線の動き、サッカードに関与している可能性があると、今回の研究を行ったバストは言います。
小脳が自閉症の中核的特徴のいくつかを形成する上で重要な役割を果たしていることが示唆されていることもそれを裏付けるものになります。
バストの研究チームはこの仮設を検証するために、脳スキャンと眼球追跡技術を組み合わせて行う、眼球運動と視線パターンの間のリンクをよりよく理解するための研究に現在取り組んでいます。
小さな頃のうちの子を思い出しても、やはり関心がないのが原因のように個人的には思ったりします。
多くのことに関心がなく、わずかなものにだけ関心をもつという感じです。
正しく困難を理解するために、こうした研究がますますされていくことを望んでいます。
(チャーリー)