- 自閉症の子どもにはなぜ睡眠障害が多いのか?
- 睡眠と脳の発達にはどのような関係があるのか?
- 良い睡眠をとることで自閉症の症状が軽減できるのか?
新しい研究によれば発達障害の自閉症の子どもは、そうでない子どもよりも幼児期に眠りにつけないなどの問題をかかえる可能性が高いことを確認しました。
そして、これらの子どもは6ヶ月から24ヶ月まで記憶をつかさどる脳の海馬が成長していました。
この研究は、後に自閉症と診断された乳児についての、睡眠の問題と脳の発達の変化を関連付けた最初の研究となります。
自閉症の子どもには睡眠障害がよく見られます。
自閉症の未就学児の80%近くが睡眠に問題をかかえています。
しかし、人生の初期段階における睡眠と脳の発達の相互作用についてはほとんど知られていないと、米ワシントン大学の自閉症センターの責任者である主任研究員のアネット・エステスは言います。
今回の研究チームは、自閉症の兄姉を持つ乳児の睡眠パターンと脳スキャンを調査しました。
自閉症の兄姉を持つ子どもは、そうでない子どもと比べて自閉症と診断される可能性が20倍高く、人生の早い段階で自閉症の兆候をみせる可能性があります。
この研究は、自閉症の赤ちゃんの睡眠の問題と脳の構造との関連を示しています。
しかし、睡眠のトラブルが脳の変化や自閉症の特徴に寄与しているのか、あるいはその逆であるのか、あるいはいくつかの共通の要因が3つすべての根底にあるのかどうかを述べるのは時期尚早だとエステスはいいます。
また、今回の研究結果ともっと成長した自閉症の子どもにみられる睡眠の問題との関係についても明らかではありません。
「これはまだ研究を行う必要がある、研究結果です」
エステスの研究チームは自閉症の兄姉を持つ子どもとそうでな子どもの、脳の発達を追跡する乳児脳画像研究に登録された432人の子どものデータを分析しました。
研究チームは子どもが6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月のときに撮影した脳スキャン画像をみて、海馬を含む脳内のさまざまな構造の大きさを評価しました。
また、子どもの社会的行動や眠りに関わる困難について、親に行った質問の結果も評価しました。
今回の研究対象となった305人の自閉症の兄姉を持つ子どものうち71人は2歳で自閉症と診断されました。
研究チームはこれらの子どもは、他の自閉症の子どもや自閉症でない子どもにくらべて眠りにつくことが難しかったことを発見しました。
すべての子どもたちの中で6ヶ月と12ヶ月で睡眠障害の多い子どもは、24ヶ月で社会的コミュニケーション能力が低くなっていました。
この研究結果は”American Journal of Psychiatry”に掲載されています。
そして自閉症の兄姉を持つ子どもの中で、より睡眠に困難をかかえた子どもは生後6〜24ヶ月の間で、海馬がより多く成長していることがわかりました。
そうでない子どもたちや、他の脳の部位にはそのようなことはありませんでした。
「海馬の大きさは、睡眠開始の課題と強く関連していました」
そうエステスは言います。
研究者はしばしば睡眠障害を自閉症の結果としてのみ見るが、今回の新しい研究はそれらが自閉症の特性に先行して現れ、影響を与えているかもしれないと、今回の研究には加わっていない米スタンフォード大学の神経生物学のフィリップ・モレーン准教授はいいます。
モレーン准教授はさらなる研究では、親が報告した睡眠の追加の測定値(子どもが夜に眠りから覚醒する頻度など)を含める必要があると述べています。
また、大きさについて確認していなかった脳の各領域の接続性などの他の測定値の確認も必要だと指摘します。
「もっと多くのことが調べることが必要です」
今回の研究は、乳児期の睡眠の問題に対処することで、自閉症の子どもたちがかかえているいくつかの困難を軽減できる可能性があることを示唆していると今回の研究に参加していない米イェール大学の睡眠医学プログラムのディレクター、クレイグ・カナパリは言います。
「知りたいのはこういうことです。
良い睡眠がとれれば、自閉症の症状を軽減できるのでしょうか?」
今回の研究を行ったエステスは学齢期の子どもたちについても、彼らが成長するにつれて彼らの睡眠と発達がどのように相互作用するかを、今後研究したいといいます。
センサーを使用して夜間の子どもの動きを追跡し、親からの報告される情報を補強するなど、睡眠の客観的な測定値も含めたいと考えています。
うちの子は2歳くらいまでは言葉が出ていました。
その後、消えていきました。
成長していくなかで、脳内に大きな変化があっただろうことは実感しています。
自閉症スペクトラム障害の子が睡眠障害になる可能性は2倍も高い
(チャーリー)