- * 発達障害がある場合、どうやって適切な仕事を見つけられますか?
- * 面接が苦手な発達障害の人たちはどのように就職活動をすれば良いですか?
- * 技術者不足の現状に対して、発達障害の人たちがどのように役立つ可能性があるのでしょうか?
英ハーベイナッシュ社と蘭KPMG社の最近の調査によれば技術者の不足は2008年以降、現在最も高いレベルにあります。
データ分析、サイバーセキュリティ、人工知能のスキルをもつ技術者は特に乏しく、成長へのボトルネックとなっています。
ハーベイナッシュとKPMGの調査への回答の65パーセントが、技術者不足が業界に打撃を与えているとしていました。
このまま対策をしなければ、問題は拡大するだけです。
2018年に米コーン・フェリー社が実施した調査によれば2030年までに世界で430万人の技術者が不足することになります。
世界有数の技術者を求める市場である米国では162.25億ドル(約1兆7千億円)の損失が予想されています。中国では444.5億ドル(約4兆7千億円)の損失の可能性があります。
ますます深刻になる、技術者不足の問題があるにもかかわらず、ずっと見過ごされてきたスキルを持っている人たちがいます。
発達障害の人たちです。
発達障害は、英国では100人に一人以上がかかえていると推定されています。
「残念ながら、これらの人たちの失業率は80パーセントにも達する可能性があります」
そう、世界中で活動している非営利団体スペシャリスタン・ファンデーションの創設者兼会長のソキル・ゾンネは言います。
面接を採用にあたって評価手段とするこれまでの採用方法が、発達障害の人たちの大きな壁となっています。
「就職の面接は、発達障害の人に極端な恐怖と不安を引き起こします。
面接は、その最悪なときを見せているのです」
そうオーストラリアのスペシャリスタンのCEOのジュリー・ロバートソンは言います。
「発達障害の成人の多くは、面接ではうまくいかないことがわかっているので、自分にぴったりの仕事に応募することさえもできなくなります」
ゾンネも同意します。
「発達障害の人たちの多くは、就職の面接で上手く行うための社会的スキルを持っていません。
彼らは長所を効果的に伝えることができず、アイコンタクトをとるのに苦労しているため、雇用主に印象づけるのに本当に苦労しています。
そのために、しばしば持っている能力を発揮させることができません」
しかし、ゾンネは発達障害の人たち、とくに自閉症の人たちはとても優秀な技術者になると考えています。
そう考えるのは、それを直接体験してきたからです。
デンマークのソフトウェアベンチャー企業のテクニカルディレクターとしてのゾンネの以前の役割では、適切な人の採用において複数の課題に直面していました。
「私たちは、優れた記憶力、優れた認識力、優れた細部への注意力、反復作業の正確さ、正直で率直で自分のやっていることに誇りを持つ人を見つけたいと本当に苦労しました。
しかし、これらは発達障害の人たちの共通的な特徴です。
とくに自閉症の人はこれらのスキルの多くに関して、多くの発達障害でない人たちよりも実際に優れています」
ゾンネは2003年に、デンマーク語で「スペシャリスト」を意味するスペシャリスタンを設立し、神経多様な人たちに有意義な雇用機会を創出してきました。
「私たちは、さまざまな方法で神経多様な候補者をサポートするように取り組んでいます。
候補となる発達障害の人を見つけ、評価し、できることできないことを完全に理解します。
次に、雇用主と協力して能力に基づく神経多様性に配慮した面接を作成します。
候補者が採用されれば、私たちはその人をサポートできるバディまたはメンターを設けます。
その後数か月および数年の間、継続的なサポートを提供します」
そうアイルランドのスペシャリスタンのCEO兼ゼネラルマネージャーのピーター・ブラバゾンは言います。
ロバートソンは、候補者の才能、情熱、スキルセットを数週間にわたって観察するためには、忍耐強いアプローチが重要であるといいます。
「そうしたアプローチで雇用主は対話し、候補者に求めているスキルセットや特性を観察および育成することができ、より多くの情報に基づいて採用決定が可能になります。
同様に候補者は職種、職務環境、チームについてさらに学び、ポジションの適切性についてより情報に基づいた意思決定を行うことができるようになります」
スペシャリスタンは世界12か国に拠点を置き、国連や世界経済フォーラムを含む多数のパートナーと協力して神経多様な人たち、100万人の雇用を助ける使命のため着実に進んでいます。
スペシャリスタンの最大のクライアントの1つは、グローバルテクノロジー企業の独SAP社です。
SAP社はAutism at Workプログラムを通じて、従業員の1パーセントを自閉症スペクトラムの人にすることを約束しています。
「スペシャリスタンが支援した、SAPの従業員は高い忠誠心をもち、幅広いスキルと才能を提供しています」
そうブラバゾンは言います。
一方、IBMも複数の国のスペシャリスタンのチームと協力してきました。
「私たちは世界中とオーストラリア国内の両方でIBMと長い付き合いを持っています。
米国での成功したプログラムに続き、IBMはオーストラリアのスペシャリスタンと提携して、オーストラリアにあるクライアントイノベーションセンターでIBMニューロダイバーシティ・プログラムの取り組みを行っています。
ソフトウェアのテスト、開発、データ分析、ビジネス分析など、IT分野では10のさまざまな役割があります。
オーストラリア全国からこれらの役割の求職に、自閉症の人たちから大きな関心が集まりました。
候補者のスキルは、IBMが作成および管理する事前選択アクティビティを含むさまざまな実践的なアクティビティで、3週間にわたって行い評価されました」
そうロバートソンは言います。
また、ソフトウェアエンジニアリングおよびテクノロジー企業のNagarro社とTricentis社はオーストリアのスペシャリスタンと協力して、ソフトウェアテストの職種に向けて、神経多様性の人たちを育成しています。
国際的な資格を取得するために(ITの経験がない人も含めて)8週間のプログラムを作成しています。
このプログラムは現在5年目となり、就職率は80パーセント以上です。
IT業界の先駆者は、神経多様性の人たちが組織にもたらすことができる大きな利点を示しています。
SAP社は、大幅な革新を生み出したチームの一員だった発達障害の従業員の例を報告しています。
一方、HPE社の取り組みでは神経多様性の人たちによるソフトウェアテストチームの生産性が他のチームより30パーセントも高いことを示唆しています。
多国籍のプロフェッショナルサービスのアーンストヤング社が、専門家がサポートした作業につて、神経多様性の人たちとそうでない人たちとの作業を比較しました。
品質、効率、生産性は同等でしたが、神経多様な従業員はイノベーションに優れていました。
最初の1か月で、技術トレーニングの時間を半分に短縮するプロセスの改善を確認しました。
彼らは専門家よりもはるかに速くプロセスを自動化する方法を見つけました。
次に、結果として生じた空き時間を使用してトレーニングビデオを作成し、すべての人がこの自動化について迅速に学習できるようにしました。
オーストリアのスペシャリスタンのマネージングディレクター、クリスティン・クラウツァーはこう言います。
「神経多様性のチームは優れた資産であり、卓越性と革新性が求められる場所でビジネス価値を高めることができることを証明しました。
企業は、求める職種に完全にマッチできる人を採用できるだけでなく、チーム全体の生産性が向上する可能性も高くなるのです。
多様な人材を採用することで、エラーの最小化、プロセスの最適化、ひいてはコスト削減につながります。
一方で、発達障害の人は自己決定的な、経済的に独立した生活を送ることができるようになります。
それは明らかに双方にとって良いことです。
国連の持続可能な開発目標であるインクルージョンと労働市場へのアクセスの平等は、社会全体にとって大きなメリットをもたらします」
ますます多くのテクノロジー企業が神経多様性の従業員を雇うことの利点に目を向けています。
しかし、スペシャリスタンを創設したゾンネは、まだやらなければならないことがたくさんあると考えています。
「一般的に、企業は採用にあたって依然として、コミュニケーションスキルにばかりに過度に注目しています。
これは変える必要があります。
私たちは自閉症の人を、非自閉症の人のように振る舞える訓練をすることはしません。
私たちは企業側を、変えるように取り組んでいます。
そのほうが大きなメリットがあるからです。
適切なサポートさえあれば、神経多様性の人たちは仕事を続け、素晴らしい従業員になることを企業に理解してほしいと考えています。
神経多様性、ニューロダイバーシティのチームを作ることは、多くのテクノロジー企業がかかえている、さらに深刻化する技術者不足の問題の回避にもなります」
発達障害などの人向けの、企業への就職支援を行う企業が今たくさんあります。
そしてとても立派な理念を掲げているところも少なくありません。
表示するだけでなく、その理念にあわせて、
障害者の法定雇用率を埋めるための採用枠を狙うだけの、発達障害の人をそうでない人のように振る舞えるようにする同質化させる訓練をするよりも、
IBM、SAP、マイクロソフト、オーティコン、スペシャリスタン等が例になるように
違うことの強み、多様な人たちが集うことの強みを企業側に示し、もっと企業側を変えようと取り組んでほしいものです。
素晴らしいビジネスマナーを身に着けさせようとするよりも、その人の素晴らしい強みを見つけ、素晴らしくそれを企業に伝えてください。
同質化は多様な人たちを苦しめるばかりか、競争力のある企業はむしろそれは害だと考えています。
(チャーリー)