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ARとおもちゃで自閉症の子が長く遊べ、ことばの学習も進む

time 2020/06/19

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

ARとおもちゃで自閉症の子が長く遊べ、ことばの学習も進む
  • 自閉症の子供が言語を学ぶために効果的な方法は何ですか?
  • 拡張現実(AR)技術が発達障害の子供たちにどのような影響を与えますか?
  • 自閉症の子供が視覚的な支援を受けるための効果的なツールは何ですか?

米コンピュータソフトウエア会社PTCは、米ボストン小児病院と協力して、発達障害である自閉症の子の学習とコミュニケーションを支援する拡張現実(AR)アプリケーションのプロトタイプを開発しました。
臨床試験の結果、活動への注意、3語のフレーズで話す、まねっこ遊びに参加する、または単純な作業の指示に従うという点で自閉症の子どもたちの大きな改善が示されました。
ボストン小児病院のコミュニケーション強化センターのディレクターであるハワード・シェーン博士によれば、自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもの多くはほとんど話せないか限られたことしか話せないものの、電子メディアの画面には強く興味をもつといいます。
「彼らの発達を見ると、幼少期には発声はあったものの非常に限られていたことがわかります。
かなり静かな子どもだと言えます。
それは多くの場合、彼らの発達に問題があることを示す最初の指標の一つになります。
これらの子どもたちはまた、視覚的なものに対して非常に強い好みを持っています。
インターネットは彼らにとってとても魅力的なものです。
彼らはコンピュータグラフィックス、アニメーション、動画が大好きです。
一方で、彼らは話し言葉を理解するのが並外れて困難です。
彼らの学習の多くは見ることで行われます。
彼らは学習において、聴覚より強力な視覚のプロセスを持っています。
視覚を利用することが、話し言葉の能力と理解能力を再構築する方法となります。
そのため、拡張現実技術は本当に期待できるものです」
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2018年にPTC社の社員たちが自閉症の人に効果的なARソリューションの研究開発をボランティアで始めました。
彼らは伝統的な子どものおもちゃのバーチャルなレプリカを考えました。
男の子、馬、納屋、鶏、卵など、さまざまなキャラクターがいる農家の風景を模したおもちゃです。
このARおもちゃで遊ぶとユーザーはタブレットを使って、動物を連れて出したりすることをARで体験できます。
農家にカメラをあてるとARアニメーションで見ているものについて、関連するいくつかの動詞、名詞、および前置詞が表示されます。
表示されるアイコンを使って、3語の文章を作ることもできます。
すると、ARでその文章に従ったアニメを見ることができます。
たとえば、「少年」「乗る」「馬」という文章をアイコンで作ると、「少年は馬に乗っている」と音声で話しアニメが表示されます。
ボストン小児病院の言語病理学者のクリスティーナ・ユーはこう説明します。
「自閉症の子どもにこのおもちゃを視覚的な手がかりや指示なしで与えても、うまく遊べません。
自閉症の子どもは様々なキャラクターを手にするだけで、鶏を卵の隣に置いたり、男の子を馬に乗らせたりすることはできないかもしれません。
しかしARを使用した視覚的サポートがあれば、子どもたちは視覚から情報を処理しおもちゃと適切に対話し遊ぶことができます」
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PTC社の戦略的提携担当のドン・ビジーク上級副社長は次のように言います。
「PTC社ではプロトタイプを構築し、小児病院のチームはいくつかの臨床試験に取り組んでいて、臨床評価フィードバックに基づいてアプリをアップデートしています。
現在は社員のボランティア活動から正式なプロジェクトに移行し、次世代のプロトタイプの開発にも取り組んでいます」
シェーン博士とクリスティーナ・ユーが率いるボストン小児病院のチームは、一連の臨床検査を行いました。
自閉症スペクトラム障害の6歳の女の子、ジェシカも参加しました。
チームは、ARアプリなしとARアプリありでおもちゃを遊んでもらいました。
ARアプリなしの場合では、ジェシカはわずかな時間しか遊びませんでした。
少年、牛、豚などに名詞のラベルを付けることはできましたが、単語を組み合わせて完全なフレーズにすることはできませんでした。
そのため彼女は「少年が馬に乗っている」とは言えませんでした。
まねっこ遊びに関しては、ジェシカは一つの行動だけすることができました。
男の子を納屋に入れましたが、自閉症などでない6歳の子どもがするような、まねっこ遊びはどれも行いませんでした。
またジェシカは「ニワトリを巣の隣に置いてください」などの単一ステップの指示に従うこともできませんでした。
そして、ARアプリで遊べるようにすると、ジェシカは長い時間遊ぶことができました。
ジェシカは飽きることなくすべてのものに名詞のラベルと付けることができ、アイコンを使って2〜3語の文章を作ることもできました。
3つのアイコンを並べて「豚は納屋にいる」という文章を作り、ジェシカは声に出すことを繰り返しました。
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クリスティーナはこう言います。
「言語療法で1年間以上2〜3語のフレーズに取り組んできました。
ジェシカの両親も自宅で一生懸命取り組んできました。
今回のできごとは本当にすごいことです。
このARアプリは、ジェシカが興味をもって学べるようにしてくれます。
興味をもって学べれば、より早く学習が進みます」
まねっこ遊びは、自閉症の子どもは通常行わないとクリスティーナは言います。
しかしARアプリを利用することで、ジェシカはは多くのまねっこ遊びも行いました。
そして単純な指示による作業を行うことについても、
今までは医師が「男の子を馬の隣に置くことはできますか?」とジェシカにお願いしてもそれを行うことができませんでした。
しかし、ARアプリを利用するとジェシカはできたのです。
シェーン博士はこう言います。
「テクノロジーとさまざまな発達障害を持つ子どもたちとの歴史を踏まえると、ARアプリは彼らの能力の向上を支援する上で重要な役割を果たします。
ARが重要なテクノロジーであることがわかり始めています」
米国疾病管理予防センター(CDC)によると、米国では88人に一人の子どもが発達障害をかかえています。
それは10年前に比べて78パーセントの増加です。
(出典・画像:米Medical EXPO
ARであれば、そこにあるモノに説明をつけたり、動かしたり、ないものを出現させることなど簡単です。
発達障害の子どもたちにもうまく活用されてほしいと思います。
ただ現在は、スマホやタブレットをかざしたり、ヘッドセットをかぶったりしないといけないので、幼い子どもも含めて手軽に遊べるかというと難しいでしょう。
メガネのような小さくて、軽くて、丈夫で、そして安価なデバイスが出てきたら、本当に使えるものになると思います。
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(チャーリー)

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