- 自閉症スペクトラム障害(ASD)をかかえる成人は、積極的なプロアクティブ認知制御を示すか?
- 自閉症の人がうつ病である場合、プロアクティブ・コントロール能力はどうなるか?
- 反復運動や不安障害、注意欠陥・多動性障害は、自閉症の人の認知能力に影響するか?
米カリフォルニア大学デービス校の研究によれば発達障害である自閉症スペクトラム障害(ASD)をかかえる成人は、そうでない成人と変わりない積極的なプロアクティブ認知制御を示します。
しかし、自閉症の人がうつ病である場合にはそれは少なくなっていました。
認知制御とは、自分の目標や意図に合わせて思考や行動を調整する一連の精神的プロセスです。
認知制御の一つにプロアクティブ・コントロールがあります。
目標に関連する情報に前もって焦点を当てて、積極的に準備をする能力です。
「プロアクティブ・コントロール は、注意をどのように向けるかを計画し、準備することを可能にするとても重要な認知機能です。
それによって他に気を取られることなく指示に従うことや、目標を達成することを可能にしています」
そうこの研究を行った、米カリフォルニア大学デービス校MIND研究所のマリー・クラッド、プロジェクトアシスタント研究者は言います。
“the Journal of Abnormal Psychology”に掲載されたこの研究では、プロアクティブ・コントロールの能力が思春期にあるASDの青年とそうでない青年とで違いがあるかを調べました。
また、ASDの症状である反復行動や心理的障害(うつ病、不安障害、注意欠陥・多動性障害など)が、プロアクティブ・コントロール能力とどのように関係しているかを調べました。
12歳から22歳までのASDの44人とそうでない44人の88人が研究に参加しました。
研究チームは、絵と言葉のテストを用いて、プロアクティブ・コントロール能力を評価しました。
絵の中に動物の名前が描かれている動物の名前を答えるテストです。
研究チームは動物の名前とその絵の中に書かれている名前が一致しない場合、一致している場合の反応時間の差を測定しました。
そして、一致する場合の反応時間をもとに、一致しない場合の反応時間からプロアクティブ・コントロール能力を評価しました。
ASDの人において反復行動、不安障害、注意欠陥・多動性障害と、プロアクティブ・コントロール能力との間に、関係は認められませんでした。
しかし、ASDでうつ病の症状が重い場合にはプロアクティブ・コントロールの能力は低くなっていました。
自閉症の人はそうでない人に比べてうつ病になる可能性が4倍高くなっています。
うつ病の主な症状の一つに、否定的な考えに思いをめぐらせてしまうことがあります。
これは、プロアクティブ・コントロールに必要なことを消耗したり、制限させる可能性があります。
プロアクティブ・コントロールが特に求められる、動物の名前とその絵の中に書かれている名前が一致しない場合にその能力の減少が顕著に現れたのです。
この研究に参加した米カリフォルニア大学デービス校の精神医学と行動科学のマージョリー・ソロモン教授は、こう言います。
「この研究は、認知能力と自閉症の人の課題を理解するのに役立つものです。
また、うつ病などが自閉症の人に与える影響についての手がかりにもなるもので、それを治療する方法の開発に貢献します」
(出典・画像:米カリフォルニア大学デービス校)(画像:Pixabay)
うつ病になれば、自閉症に関わらず誰であっても認知能力に影響はありそうです。
なので、
自閉症の人によくある反復運動や不安障害、注意欠陥・多動性障害は、自閉症の人の認知能力には影響がない。
ことがわかったと捉えればよいかと。
反復行動は自閉症の人が私たちの世界で過ごすために必要な方法
(チャーリー)