- 自閉症の人たちの感情のコントロールに関する問題は、どのような影響を及ぼすのか?
- 自閉症の男性と女性で感情のコントロールに差があるのはなぜか?
- 感情のコントロールに関する治療方法は、どのようなものがあるのか?
精神医学的な問題のために入院した子どもたちを対象とした新しい研究によれば、発達障害である自閉症の男の子よりも女の子のほうが感情のコントロールができていないことがわかりました。
なお、この研究を行った米ピッツバーグ大学の精神医学と心理学のカーラ・マゼフスキー准教授は、この研究では対象となった人数が十分でないため、その原因までは説明することはできないと伝えています。
しかし自閉症の子どもや若者の感情コントロールに関わる問題を扱うことの重要性は訴えるものです。
「私たちは、自閉症の人たちが感情のコントロールがうまくできないことに注意を払い、それを把握して治療の対象とする必要があります」
自閉症の子どもは、そうでない子どもよりも感情をコントロールするのに苦労しています。
これまでの研究でも、障害をかかえる子どもの感情のコントロールの問題が、その後の人生での社会的スキルの問題につながることが示唆されています。
それにも関わらず、自閉症の人の感情コントロールの困難に対応する取り組みはほとんどありません。
感情コントロールの問題は、うつ病、不安障害、社会的困難など、自閉症の人の生活の質に関するさまざまな問題に影響を与えると、英ロンドン大学ユニバーシティカレッジで臨床心理学の上級講師を務めたウィリアム・マンディは述べています。
「感情のコントロールの問題は、自閉症の人たちが抱えるあらゆる種類の問題の発症に関係する重要なものだとか考えられる十分な証拠があります。そのために、療育の対象とするべきものだと考えます」
今回の研究ではマゼフスキー准教授らの研究チームは、4歳から20歳までの722人について、2013年から2018年までの間に収集されたデータを調査しました。
このデータには146人の女の子と若い女性が含まれています。
このデータは、米国内の6つの精神科に入院された自閉症の人についてのもので、自閉症の子どもについての遺伝的情報、症状についてデータ収集を行っている現在進行中のプロジェクトによるものの一部となります。
親や介護者が、その子どもたちの感情的な反応、強さ、全体的な傾向に関する30の質問についての回答も行いました。
すべての年齢で、自閉症の女の子は自閉症の男の子よりも感情反応性の尺度で高いスコアを示し、感情的になりやすいと考えられました。
自閉症の女の子はまた、抑うつ気分の尺度でも男の子より高いスコアを示し、13歳以上になるとその差は明らかに大きくなりました。
この研究結果は”Autism Research”で発表されました。
しかし、同様の性差は自閉症でない一般集団にも存在するため、性別による違いは自閉症の人に限ったものではないという指摘もあります。
また、米ミズーリ大学のトンプソン自閉症・神経発達障害センターの准教授であるクリスティン・ソールはこう述べています。
「虐待歴や家族構成など、子どもの家庭環境の要因によって、感情のコントロールに関する問題が引き起こされる可能性もあります。
性別に起因する部分を説明するには、すべての社会的決定要因を本当に検討する必要があります」
今回の研究を行ったマゼフスキー准教授らの研究チームは、その後、自閉症の人たちのさらに多くのサンプルデータを分析し、この研究結果を裏付けています。
「自閉症の男性よりも女性のほうが感情的な反応と不安の度合いが高い」
英ロンドン大学ユニバーシティカレッジのマンディによればマインドフルネスなど、感情のコントロールに対処する治療方法は、性別を問わず自閉症の子どもたちを助ける可能性があります。
今回の研究を行ったマゼフスキー准教授もは自閉症の子どもたちにそれらが有望であることに同意します。
「この分野はまだ始まったばかりです。
まだ、感情のコントロールについて測定する療育などは行われていませんでした。
しかし、感情のコントロールも療育などで改善できると考えられます」
(出典:米SPECTRUM)(画像:Pixabay)
うちの子もときどき、発狂しているようになります。
しかし、うちの子はお話ができないので、伝えられれない不満とともに数少ないコミュニケーション手段としてもそうするのでしょう。
他の子も同様にそうした結果、感情のコントロールができないように見えてしまうことがあるはずです。
自閉症の人は表情や感情がわからないのではない。違うだけ
(チャーリー)