- 自閉症の人の音に対する脳の反応は成長とともに改善するのですか?
- 言語に関わる問題は自閉症の神経反応の遅れと関係していますか?
- この聴覚反応の遅れは治療可能ですか?
新しい研究によれば、自閉症の子の音に対する脳の反応の遅れは成人になってもなくなることはありません。
この遅れが言語に関わる問題の原因の一つと考えられます。
人が音、例えば音楽や誰かの話などを聞くと約50ミリ秒後と100ミリ秒後の2回、重要な神経応答が確認できます。
これまでの研究で、自閉症の子どもではこの反応が数ミリ秒遅れることが示唆されています。
これはそれほど大きな影響はないように思うかもしれませんが、5ミリ秒の遅れでさえ会話をすることを壊滅的に難しくする可能性があると米ペンシルバニア大学のティム・ロバーツ教授は言います。
「できるだけ早く音を取り入れて、意味や解釈のプロセスにつなげる必要があるのです。
脳は音の取り込みをできるだけ早くしたいのです」
発達障害などのない子どもでは、年齢とともに神経反応は速くなります。
これまで、発達障害である自閉症の子どもについてもこれが当てはまるのかは研究されていませんでした。
今回の研究ではロバーツ教授の研究チームは6歳から42歳までの132人について調査を行いました。
この中には58人の自閉症の子ども、19人の自閉症の成人が含まれています。
脳活動による磁場の変化を記録する「脳磁図」やMEGと呼ばれる技術を用いた測定を行いました。
自閉症の子どもと成人について、1回めの50ミリ秒後の応答では6ミリ秒の遅れ、2回めの100ミリ秒後の応答では10ミリ秒遅れが生じていることを発見しました。
この研究結果は”Developmental Neuroscience”に掲載されています。
自閉症の子どもと大人、どちらも同じく遅れが生じていることは、脳の聴覚皮質の発達の遅れが原因ではないことを示していると、米イースタンミシガン大学の心理学のレニー・ラジネス・オニール教授は言います。
「重要なことです。これは単なる脳の成熟の問題ではないと否定するものだからです」
この音の遅延の測定の前にロバーツ教授の研究チームは研究に参加した人たちについてのIQも評価しました。
自閉症の子どもと成人の両方で、聴覚反応の遅延は言語に関わるIQの低さと関係を示しましたが、非言語のIQや全体的なIQとの関係は認められませんでした。
この聴覚の遅延は、脳の成熟とは異なる、脳の何らかの生物学的な違いが原因だと推定されます。
ロバーツ教授の研究チームは今後、拡散テンソルイメージングや磁気共鳴分光法などの技術を使用して、これを調査する予定です。
遅延の原因を特定できれば、言語障害を治療するためのターゲットを見つけるのに役立ちます。
ロバーツ教授はこう言います。
「私たちが興味をもっているのは、その人を助けるのにもっとも適切な方法を見つけ出すことです」
(出典:米SPECTRUM)(画像:Pixabay)
うちの子も大きいですが、言葉はずっとありません。
こうした研究が進み、いつか一言でも言葉が聞けたらいいなと思います。
知的障害の人がかかえる絶望感をまわりはわかっていないのかも
(チャーリー)