- 自閉症の人が成人期に自立した生活を送れるかを予測するには、どんな要素が重要か?
- 幼少期と成人期、どちらの時期のデータを評価することが重要か?
- 成人期に自立した生活を送るために必要なスキルや療育は何か?
新しい研究によれば、発達障害である自閉症の人について小児期に2つのことを評価するだけで成人になったときに自立した生活を送れるか予測できるといいます。
知能指数(IQ)と多動性などの行動上の問題がその2つとなります。
成人期の予測ができることで、早いうちから適切な療育を行うことでより良い生活を送れるように改善することにつなげられます。
米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の精神医学及び教育分野で著名なキャサリン・ロード教授はこう言います。
「優れた認知能力があるからといって、成人期に良い結果が得られるとは限りません。
しかしIQが低い場合であれば、成人になっても自立できる可能性はとても少ないです」
キャサリン教授らによる研究チームは、発達障害である自閉症の123人のデータを分析しました。
3歳未満の頃のデータ、同じ人の22歳から27歳の頃のデータを評価しました。
「これは重要な研究です。こうした期間に渡って評価を行った研究は多くないからです」
そう英キングス・カレッジ・ロンドンの臨床小児心理学のパトリシア・ハウリン名誉教授は言います。
研究チームは幼少期の、自閉症の重症度、IQ、問題行動の存在などについて自閉症の人たちのデータを評価しました。
そして、自立した生活が送れているか、仕事をしているか、友だちがいるかなど成人期になってからの生活の質について評価しました。
この研究に参加した自閉症の人たちは生活の質にもとづいて4つのグループになりました。
最高の生活の質の人たちは、自立した生活を送り、仕事をし、複数の友だちがいました。
生活の質が最も高くない人たちは、どれもできていませんでした。
中間の2つのグループは、いくつかはできていました。
「精神的に多くの問題をかかえた場合には、たとえIQが高くても自立した生活を送れる可能性は劇的に低下します。
一方で、認知能力はそれほど高くなくても、精神的な問題をかかえてないない場合には、うまく過ごせることができます」
この研究に参加した人たちには偏りがあります。
123人のうち、女性は21人、白人が102人でした。
より多様な人たちが参加した大規模な研究が必要であることを研究チームは認めています。
この研究は自閉症の子どもたちそれぞれのニーズにあわせた支援と療育を行うことの重要性を強く訴えるものです。
自立した生活を送るためには、服を着る、ルールを守る、いつ病院に行くべきかなど、毎日の生活スキルを身につけることが不可欠です。
キャサリン教授はこう言います。
「IQを高くすることができなくても、こうしたスキルを身につけるようにはできます」
英キングス・カレッジ・ロンドンの臨床小児心理学のパトリシア・ハウリン名誉教授は、介護する人や教師は子どもの適正にあっていないスキルを繰り返し教えるよりも、子どもたちが快適になることができて、その上でできることを増やすべきだといいます。
「自閉症の人の認知能力と言語能力は、どちらにも大きなムラがあることがあります。
鉛筆で書くことは苦手でも、コンピュータを使うことは得意だったりするのです。
その場合にはコンピュータを使うのです」
自閉症の人が何を望んでいるのかを見つけることも重要だといいます。
「良好な結果、それが何であるかから考えなければなりません。
自立した生活が送れること、それだけなのでしょうか。
これは必ずしも、自閉症の人にとって最良ではないかもしれません」
そうした生活を送ることによってひじょうに高いストレスを受ける可能性があるなどのデメリットがあることもハウリン名誉教授は指摘します。
今回の研究を高く評価している米コネチカット大学の心理学のインジ=マリエ・エルグスチ教授は、この指摘に関わる、自閉症の子どもたちの望みについての調査を行っています。
これまでのところ、自閉症の子どもたちの望みは、そうでない子どもたちと大きな違いはないといいます。
「自閉症の子どもたちも友だちがほしいと思っています。
そして友だちが一人か二人います。
恋人も作りたいと考えています。そして、有意義な仕事もしたいと望んでいます」
人それぞれに幸せのかたちは異なります。
けれど、好きなことや夢や希望をあきらめる、あきらめさせるための理屈には使ってほしくないと思います。
親子で好きなことをたくさん見つけて、夢や希望をもって追求していく。
これからますます、それが一番の幸せになれる方法だと私は思います。
(チャーリー)