- ブメタニドを摂取したグループと摂取していないグループでは、自閉症の症状にどのような違いが見られたのか?
- ブメタニドが自閉症の症状改善にどのような働きをするのか?
- ブメタニドは幼い自閉症の子供に安全な副作用なしで、生活の質と健康を向上させることができるのか?
最新の研究によれば、発達障害である自閉症の子の症状を安価な医薬品で改善できる可能性が示されました。
その医薬品「ブメタニド」は高血圧や腫れの治療に既に広く使用されており、1か月分の錠剤の価格はイギリスでは10ポンド(約1400円)以下です。
自閉症は発達障害であり少女よりも少年に多く見られます。世界保健機関によると、人々の1%〜2%がこの障害をかかえています。
自閉症は2歳から2歳半のうちに診断できます。
中度または重度の自閉症の子供は、社会的状況が困難になる可能性があります。
両親とアイコンタクトをとったり、他人と協力する遊びや会話に参加したりすることが困難です。
また、反復的な行動を示し特定のものに強いこだわりをもつこともあります。
この特性は日常生活に影響するだけでなく、学校で友だちを作ることなども困難にします。
自閉症のマウスモデルで重要な脳内化学物質が薬によって変化したことを示唆する研究の結果があり、これまでに自閉症のティーンエイジャーを含むいくつかの研究でブメタニドが有益な効果をもたらす可能性があることが示されていました。
私たちの研究は、中国のいくつかの機関の研究者とケンブリッジ大学による国際共同研究です。
中度から重度の自閉症の幼児に焦点を当て、ブメタニドが症状を改善できるかどうかを確認したいと考えました。
そして、この薬が自閉症の症状を改善するメカニズムについてもです。
ブメタニドがどのように作用するかを理解できれば、中度および重度の自閉症に役立つ薬剤開発につなげられる可能性があります。
私たちの研究では、3歳から6歳の中度から重度の自閉症の子供81人が参加しました。
ブメタニドを摂取するグループの42人は3ヶ月間、1日2回0.5ミリグラムのブメタニドを摂取しました。
比較対象となる39人の子どもたちは、摂取しません。
一部の子どもたちは、磁気共鳴分光法(MRS)による脳スキャンが行われました。
ブメタニド摂取グループでは38人、摂取していないグループでは17人です。
MRSは、脳内の化学物質を測定できる非侵襲的な方法です。この研究では、GABAおよびグルタミン酸と呼ばれる脳化学物質を測定しました。これらは学習と脳の可塑性(経験の結果として変化し、適応する脳の能力)に重要な関係があります。
ブメタニド摂取グループでは、小児自閉症評価尺度(CARS)および医師の全体的な印象によって測定される自閉症症状が改善しました。
誰がブメタニドを摂取しているかは知らされていない医師により、症状の変化は評価されています。
症状の改善は、脳内化学物質のGABA /グルタミン酸比の変化、特にGABAの減少と関連しました。
評価尺度による具体的な改善点は、反復行動の減少と特定のものに対するこだわりの低下です。
こうしたことの減少は、社会的行動の増加につながるものです。
ブメタニドを摂取したグループの一人、中国の上海郊外の田舎に住んでいる4歳の男の子の母親によれば、男の子は家族や親せきとアイコンタクトをするようになり、家族での活動により多く参加することができるようになったといいます。
この薬、ブメタニドは幼い自閉症の子どもにも安全、重大な副作用がないこともわかりました。
ブメタニドは自閉症の子どもの生活の質と健康を改善する可能性があります。
療育を受けることが困難な、中国の農村部などにいる自閉症の子どもも恩恵を受けることができるものになります。
そして、子どもの脳が発達しているうちから、ブメタニドは社会的な面を改善し自閉症の症状を減らすことができます。
現在、人間の脳は思春期後期から成人期初期まで発達していることがわかっています。
自閉症の人に役立つ薬とするためにブメタニドの有効性についてさらなる研究が求められます。
英ケンブリッジ大学 臨床神経心理学 バーバラ・ジャックリーン・シャハキアン教授
同大学 認知神経科学 クリステル・ラングレー研究員
(出典:英THE CONVERSATION)(画像:Pixabay)
ブメタニドは日本の製薬会社、第一三共が利尿薬として開発したものですが、新生児の痙攣発作を抑制したり、抗てんかん薬としても開発されていたり、自閉症の症状を軽減するという研究がこれまでに他にもあったとのこと。
期待したいですね。
自閉症の人向けの新薬開発で起きた自閉症の人たちの意見対立
(チャーリー)