- 脳に関連した健康上の問題は自閉症の特徴と関連しているのか?
- 自閉症と消化器系の問題や感染症などの他の身体的状態には関連性があるのか?
- 自閉症の特性は脳の状態に関係しており、他の身体的問題との関連はあるのか?
双生児を対象にした研究によると、発達障害の自閉症の人はそうでない人よりも頭痛やてんかんなどの脳に関連した健康上の問題をかかえることが多くあります。
一方で、自閉症と消化器系の問題や感染症などの他の身体的状態との関連性は認められませんでした。
「自閉症だけでなく、自閉症の特徴も神経学的変化に関連していることが確認できました。
そして、その他の身体的問題には関連していないことは注目するべきことです」
そうスウェーデンのストックホルムにあるカロリンスカ研究所の神経発達障害センター所長のスベン・ボルテは言います。
また、この研究結果は自閉症は脳の状態であり、免疫系や腸の状態ではないという考えを裏付けるものになります。
「これらのような関連性を理解することは、医師が自閉症の人々の健康問題に注意することに役立ちます。
コミュニケーションが困難な人を治療する場合、それは特に重要です」
そう、米ガイシンガー自閉症・発達医学研究所のメディカルディレクター、トーマスチャルマンは言います。
「関連する健康問題は、人々の生活の質を向上するためには本当に重要です。
発達障害の自閉症の人が、他にもさまざまな健康問題をかかえることが多いのであれば、医師はより高いレベルで注意してサポートする必要があります」
この研究では、スウェーデンの自閉症とADHD双生児研究の対象となっている172組の双子へ調査を行いました。
このうち、少なくとも一人は自閉症の子である双子は75組でした。
そして、遺伝的背景や環境がほぼ共通となる一卵性双生児は18組います。
参加した双子の年齢は8歳から31歳までです。
参加した双子やその親たちが、感染症、心臓循環器の病歴、てんかんや頭痛などの神経系、消化器系、ぜんそくやアレルギーなどの免疫系の疾患について質問票に回答しました。
その結果、自閉症の人はそうでない人に比べ神経系、免疫系に健康上の問題をかかえることがわかりました。
また、双子のなかで比べても自閉症の子のほうが、自閉症でない子に比べて神経系の問題を多くかかえることがわかりました。
この研究に対して、自閉症と消化器系の問題との関連性が見出されなかったという事実は驚くべきことであると米エモリー大学の小児胃腸病学の助教授であり、医師でもあるバーバラ・マケルハノンは指摘しています。
この研究では、便秘について報告したのは自閉症の人では1.2パーセント、そうでない人では0.8パーセントでした。一般には便秘をかかえる人は0.7パーセントから30パーセントと言われており、あまりに低くなっています。
便秘などの胃腸の問題は一過性である傾向があり、てんかんなどの持続的な状態よりもアンケートに回答するときには意識されない可能性があるため、この研究では見逃されてしまった可能性があります。
この双子による研究は自閉症とその特性が、環境によるものなのか遺伝的なものなのかを評価する上でも重要だと米ファインスタイン医学研究所の神経免疫学のライア・ブリムバーグ助教授は言います。
「一卵性双生児はほぼすべてのDNAを共有しているため、一卵性双生児についての自閉症と神経学的問題との関連は、遺伝子と環境との相互作用など、遺伝を超えた何かが関与していることを示唆しています。
一卵性双生児はほとんど同じ環境で育ち、ほとんど同じ遺伝子をもっています。
それなのに、一方は自閉症で、一方は自閉症ではないのです」
ライア・ブリムバーグ助教授はこれまでの自らの研究では、自閉症の80パーセントは遺伝性であると結論付けたといいます。
しかしこう言います。
「今回の研究で、必ずしもそうではないということが示唆されています」
一卵性双生児であっても、自閉症の子とそうでない子。
遺伝子は同じで、育った環境もほぼ同じなのに。
ますますの研究が望まれます。
見が見える人に比べ見えない人が自閉症であることは30倍以上
(チャーリー)