- なぜアンドリューの動画は、発達障害をもつ人たちの間で人気があるのか?
- 発達障害をもつ人たちがエレベーターに興味を持つ理由は何か?
- 発達障害をもつ人たちが持つすごい「執着」とは、一体どのようなものなのか?
アンドリュー・リームは有名なユーチューバー。
彼の動画は8200万回再生されていて、世界中の子どもと若者に人気があります。
その多くは発達障害がある人たちです。
どうしてこんなに人気があるのでしょうか?
その答えはエレベーター。
アンドリューは37歳。ノーフォーク南鉄道で働いています。
そして、国中を旅することとエレベーターを撮影することにとりつかれています。
2011年からの彼の動画をみると、バージニアにある一組のエレベーターが上がったり下がったりするのを無言で撮影しています。
「これは本当にいいエレベーターです。」
5分30秒の動画は、60万回も視聴されています。
動画で彼はネット上の人気者となり、実生活での友達もできました。
バージニア州ロアノークの自宅では、ベッドルームを小さなエレベーター博物館にしてしまいました。そこには、操作盤、ライト、録音した音、そして鍵などが展示されています。
YouTubeの動画を見た人がたびたび訪れます。
この取材をしている間にも、ミシシッピから10時間をかけて23歳の青年、ジェームズ・ブロックがこの博物館にやってきました。
しかし、ブロックは興味があるだけでここに来たわけではありません。
「少しさみしかったのです。アンドリューなしではいられません。
私はひとりぼっちだと思っていました。」
アンドリューの投稿したエレベーター動画は、孤独を感じている多くの人達が見ています。
ブロックが言います。
「アンドリューや同じ趣味をもった人たちがいなければ、本当につまらない人生でした。
私はエレベータ好きの、孤独の存在でした。」
ディーゼルデューシーという名前でアンドリューはYouTubeへ動画投稿をします。
27000人以上がチャンネル登録をしています。
このチャンネルは「アンドリューと友達がエレベータに乗った」というようなタイトルの動画でいっぱいです。
ホテルのエレベーターに乗ったりしています。
他では、オフィスビルや公共施設内のエレベータに乗っています。
友達とお互いで撮影をしあっています。
それは、まるで強迫観念にとりつかれて行っているように見えます。
エレベータの中や、外で警察官にたずねられたり、「変な人」と呼ばれているところも写っています。
アンドリューが言います。
「本当に小さい時から、エレベータが大好きなんです。
最初にエレベータに乗ったのは、ミズーリ州にあるショッピングモールです。」
動画投稿を初めてから10年で、8200万回の視聴がされました。
「このYouTubeチャンネルは、エレベータ好きの若者にとっての小さな宇宙のようなものです。」
「私自身、発達障害です。エレベータ好きの人がみんな発達障害というわけではありませんが、少なくともエレベータ好きの80〜90%の人たちは発達障害の人だと思います。」
エレベーターには、発達障害の人にはたまらない魅力がたくさんあります。
フィラデルフィア子ども病院で発達障害児への取り組みを行っているアマンダ・ベネット博士が言います。
「自閉症の人たちは、知覚のプロセスが少し異なっているという特徴があります。
エレベータの中では、照明が変わったり、聞こえる音はボタンを押す音と上がったり下がったりするシャフトの機会的な音。これらが、発達障害の人たちには心地よいのです。」
アンドリューが言います。
「エレベータの中にいる時の状況が大好きです。そこではいくつかの感覚が混じった経験ができるのです。ボタンを押す。音がでる。照明が変わる。動くのを感じる、機械構造を見る。複数の知覚体験なのです。」
アンドリューのファンの大部分は10代前半の若者です。
エレベータについて同様に語ります。
「エレベータを操縦しているような感覚にもなるんだ。」
脅迫的にも思える趣味でも、うまくいかすことができれば、若者が大人へ成長するのに役にたちます。
伝記映画で女優のクレア・デニスが演じた、発達障害で有名なテンプル・グランドン博士は、牛が運ばれて、屠殺されるまでを見ることに執着をしました。
この執着があったからこそ、今、彼女はコロラド州立大学で動物科学の教授となっています。
彼女はサイエンティフィック・アメリカン誌でこう語っています。
「牛が殺されるまでを見る私の執着が、牛を扱う私のキャリアの成功につながりました。
子どもがもつ執着や変わった趣味についてよく考えて、そしてモチベーションをもって、それを生かしていけるようにしてほしいと親や先生には言いたいです。」
アマンダ・ベネット博士もこれに同意します。
奇妙なものであっても、興味をもつことで、子どもや若者の間で仲間を作ることができるようになります。
「もしエレベーターにすごい興味があって、エレベーターのことばかり話しくても、他の人が別のことを話したいという時には、つらくなるかもしれません。しかし大人になれば、エレベータの最新モデルの設計をしているかもしれません。
何かに興味をもった人は、情熱をもってそれをキャリアにいかせるのです。
年齢にあわせて、興味や趣味をどのようにして育てるのかを、親は考えなければなりません。」
グランドン博士は発達障害の人が社会に飛びこむ重要性と、つらい状況にも立ち向かわなければならないことを伝えています。
「YouTubeの動画で見た37歳の奇妙なおじさんと、一緒にエレベーターに乗るために外へ出かける。」のもそういうことなのです。
しかし、このように現実社会へ飛び込むことは、とても難しいチャレンジである発達障害の方もいます。
グランドン博士はこうも言っています。
「基本的なことが身についていない、たくさんの種類のたくさんの子供たちがいます。手を握り合ったり、レストランでの注文のしかたもわかりません。」
グランドン博士はこういった子どもたちとその親へ、外に出て社会に飛び込んで欲しいといいます。それがどんなふうになっても。
異様なたくさんのYouTubeのエレベーター動画もこれから外へ飛び出していくのに、助けになるものなのです。
(出典・画像:米vocativ)
「情熱」をもって行動している人には誰もかないません。
はたからみて好ましいと思わない行動につながっている場合にはそれを「執着」と呼んでいるように思います。
つまり、その時の呼び方が異なるだけで、同じものです。
発達障害の方に見られる、すごい「執着」はすごい「情熱」ともいえます。
だからこそ、それから天才とよばれるような結果をもたらすことも多いはずですし、実際そうだと思います。
天才が語る。受け入れていかないとみんなが不幸。
関わるものからすれば「執着」が「情熱」と呼ばれる結果になるように、幸せに過ごしていけるようにサポートをしたいと心から思います。
火災報知器が大好きな子もいます。こちら。
「その子どものために口輪を買え!」
(チャーリー)