- 音に対して過敏な感覚をもつ人は、どんな困難に直面しているのだろうか?
- 自閉症の人が適切な学習環境を得るためには、どんな工夫が必要なのだろうか?
- 自閉症の子どもたちが学びやすい環境を整えるためには、何が重要なのだろうか?
最大音量の設定から調整できない補聴器をつけていると考えてみてください。
隣の人の話し声が聞こえます。そして同じ音量で開いた窓から入ってくる鳥のさえずりも聞こえます。
エアコンの音も、車の音も同じ音量で聞こえます。
音を聞き分けることも難しい不快な状況がずっと続きます。
発達障害の自閉症スペクトラムの人はそうした世界に生きています。
自閉症の子どもたちへの教育が簡単ではないことも誰でもが想像できるはずです。
私たちの生活空間では、音、におい、触覚、味覚、体の動きをみんなが感じています。
そして、終わることのない視覚からの情報。
多くの人たちはそれらをフィルタリングすることで対処することができています。
しかし、自閉症の人はそうではありません。
感覚に過敏だったり、鈍感だったり、または両方であることもあります。
たくさんの情報を処理することになってしまう環境は、つらいものとなります。
予期しない変化は不安を引き起こします。
たくさんの感覚は予期できるものではありません。そのためにパニックを引き起こしてしまいます。
適切な学習環境はすべての子どもに必要なものです。
自閉症の子どもたちにとっても、いうまでもありません。
適切な建築、デザインによって実現できれば、大きなメリットをもたらします。
これまでの5年間、私は自閉症の人への適切な環境をデザイナーたちに教えるために研究を行ってきました。
そして、自閉症の子どもが過ごせて、効果的な学習を行えるようにする学校のデザインについていくつかわかりました。
自閉症の子どもたちには、活動を行う前に、準備する、できることが特に重要となります。
準備することで、情報を求められる時間の間に処理することが可能となります。
そして不安を減らし、安心感ももつことができます。学習もしやすくなります。
1.休める場所を設ける
少しでも空いている場所を有効活用します。
階段の下でも何でも小さなスペースでかまいません。
そこを整理して、立ち止まって、考えて、そして戻れるようになるまでの時間がもてる場所にします。
小さなテントを置いてもよいでしょう。
これは、ある建物から別の建物に移動するときなど環境に違いが現れる場面では特に有効なものになります。
2.複数の玄関を設ける
正面玄関はいつも混雑しているかもしれません。
静かな補助的な玄関も用意してください。
遊び場から教室までゆっくり静かに行けるようになります。
また、建物の内部と外部の間のあいまいな空間としても機能します。
突然の感覚の変化に対する不安を軽減できる場、調整された屋外学習の場にもできます。
3.窓は安心をもたらす
自閉症の子どもたちの中には不安やこだわりから、さっきまでいた場所に戻りたいと衝動にかられる子もいます。
そうした子どもたちには、窓がその場所へとつなげてくれて移動しなくても、安心できることもあります。
教室での学習時間が減るのを防ぎます。
4.結びつける
行動とものを結びつけることは自閉症の子どもたちを助けます。
将来の仕事につながる学びを学校で提供することもできます。
簡単なおもちゃの模擬店を学校内に設けることで、物の購入、支払いなども学べます。
「テイスタースペース」も、簡単なことで大きな活動の一歩に結びつけてくれるものです。
音楽室で楽器を演奏する前に、たいこのように鳴る壁を叩けたり、
プールに入る前にちょっと水に触れられる、そんな目的の活動への一歩を助けてくれる場です。
以上のようなアイデアでより豊かな学習経験をサポートすることは、自閉症の子どもたちにはとても重要です。
自閉症の人がそれぞれみんな違っていることを踏まえれば、ただ一つの解決策を作ることは不可能です。
しかし、こうしたアイデアは、自閉症の子どもたちの学びを大きく改善させる可能性があります。
自閉症の子どもが大きくなったとき、そして家族の生活の質の向上にもつながるはずです。
英リーズ・ベケット大学 建築インテリア学科 ジョアン・スコット・ラブ 上級講師
(出典:THE CONVERSATION)(画像:Pixabay)
ちょっと空いている場所に小さなテントを置く。
などはすでに出来上がっている古い学校でも簡単にできそうです。
感覚過敏な発達障害の子どもたちが、環境の変化に対応できるようにサポートするのが、学校のデザインでは重要ということなんですね。
知的障害のある生徒たちが学校でコーヒーを販売し学ぶ機会に
(チャーリー)