- 自閉症の子どもたちはなぜ、繰り返し触ったり、音を聞かせられても慣れることができないのか?
- 自閉症の子どもたちはなぜ、感覚刺激に過敏な反応を示すのか?
- 自閉症の子どもたちは「慣れ」ることができない場合、どのような理由が考えられるのか?
新しい研究によれば、自閉症の子どもたちは数分間、繰り返し触ったり、繰り返し音を聞かせても慣れることができません。
多くの人は、ノイズや異常な質感などの感覚刺激に対して、感覚情報を処理する脳の領域が反応します。
しかし、こうした刺激が続いた場合には脳のその反応は小さくなっていきます。
「慣れ」です。
この慣れというプロセスがあることで、人間は重要でない感覚が気にならなくなります。
そのおかげで、人は他の新しい情報に注意を払うことが可能になります。
エアコンの音やウールのセーターの肌触りのように。
しかし新しい研究では、自閉症の子の中には「慣れ」ることができない子もいることがわかりました。
これは、自閉症の子どもたちが騒々しい場所で耳をおおったり、タグがあるために服を着ることを拒否することなど、感覚に異常な反応を示すことの理由になるかもしれません。
米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の精神医学及び生物行動科学のスラミテ・グリーン助教授はこういいます。
「脳は刺激から外界を理解しようとずっと活動しています。
これには大きなエネルギーが必要となります。そのために脳は疲れます。」
今回の新しい研究での調査結果から、自閉症の子どもたちが徐々に苦手とする刺激のレベルをあげて慣れさせようとする暴露療法にはメリットがないことが示唆されると、この研究に参加していない米カリフォルニア大学デービス校のジョナ・シュワルツ助教授はいいます。
クリーン助教授らによる今回の新しい研究では、自閉症の子ども42人、自閉症でなく平均的な知能をもつ子ども27人について、感覚刺激に対する脳の反応を調べました。
子どもの親たちは、子どもの感覚反応を評価するための2つの質問票に答えました。
それらから自閉症の子どもたちは、自閉症ではない子どもたちに比べて、平均すると感覚に敏感であることがわかりました。
研究チームは自閉症の子どもたちを質問票からわかった感覚過敏の程度によって、さらに2つのグループに分けられました。
子どもたちは、それぞれ15秒間続く刺激を6回受けます。その間の脳の活動がスキャンされました。
音と触覚を処理する脳の領域、および感覚情報をフィルタリングする扁桃体の活動に注目しました。
すべての子どもたちは、最初の2回めまで脳の活動は増加しました。
自閉症でない子どもたち、感覚過敏の程度が低い自閉症の子どもたちは、3回め4回めで脳の活動は減少しました。それからずっと減少したままでした。
これとは対照的に、感覚過敏の程度が高い自閉症の子どもたちは、脳の活動はずっと増加したままでした。
さらに研究チームは別の刺激を子どもたちに与えました。
異なる周波数のホワイトノイズの音、質感の異なるスポンジです。
自閉症でない子どもたちは、1回めにわずかに脳活動が増加しただけでした。
刺激が変わったと認識はしても、刺激が前のものと似ていたので「慣れ」てしまったことが示されました。
感覚過敏の程度が高い自閉症の子どもたちは、別の刺激においても、脳活動はずっと増加したままでした。
感覚過敏の程度が低い自閉症の子どもたちは、別の刺激になっても、脳活動に変わりがありませんでした。
これは、刺激が変わったことが認識できない、または「慣れ」すぎてしまったために変化した刺激に反応できなかったことを意味します。
研究チームは、これらの反応についてより理解するために、扁桃体と扁桃体を制御する眼窩前頭皮質(OFC)の2つの脳領域について分析を行いました。
自閉症でない子どもたちは1回めから終わりの6回めまで扁桃体とOFCの活動に変化はありませんでした。
対照的に感覚過敏の程度が高い自閉症の子どもたちは、1回めから3回めまで扁桃体とOFCは同調ができていなく、片方の活動が高まっていてももう片方の活動は停止していました。
これは「慣れ」ようとOFCが扁桃体をシャットダウンしようとしていると考えられ、4回めからやっと同調を始めていてこれが自閉症の子どもたちが感覚に「慣れ」ない説明になるかもしれないとグリーン助教授はいいます。
感覚過敏の程度が低い自閉症の子どもたちでは、1回めには扁桃体とOFCの両方が同調して活動が増えていましたがすぐに活動は減っていました。
これはおそらく、感覚過負荷を避けるための方法だろうとグリーン助教授はいいます。
感覚刺激に対して過敏な反応をしない自閉症の子どもたちと感覚過敏の自閉症の子どもでは脳の活動が異なることが示唆されます。
これらの調査結果は”American Journal of Psychiatry”に掲載されています。
(出典:米SPECTRUM)(画像:Pixabay)
自閉症でない子ども、感覚過敏の自閉症の子ども、感覚過敏でない自閉症の子ども、それぞれが感覚刺激を与えると脳の活動が異なっており、感覚過敏の自閉症の子どもにおいては感覚に「慣れ」ることはなかったという研究結果です。
なので、苦手な感覚に慣れさせようとする療法にはメリットがないのではないかとの指摘もされています。
この研究によれば、苦手な感覚に対して、無理に慣れさせようとするのはやめたほうがよいようです。
ただ、うちの子についていえば、この研究での聴覚は関係なくても触覚は少し関係しそうな、嗅覚、味覚の食べ物についてはどんどん食べられるものが増えてきたことは事実としてあります。
無理をさせることには反対しますが、長々ちょっとずつ挑戦してみるのはありではないかと思います。
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(チャーリー)