- なぜ自閉症の人たちは雇用されていないのか?
- 自閉症の人を雇用する際に必要な配慮は何か?
- 自閉症の人を雇用することが企業や社会に与える影響は?
優秀な人を雇用することで、企業は競争力を追求しています。
しかしながら、発達障害である自閉症の優秀な人たちはこれまで見過ごされてきました。
自閉症の人の多くが雇用されていません。
企業は大きな貢献をしてくれる社員になれる人を失っていると同時に、雇用されなかった自閉症の人には経済的な支援が必要となるため、社会にとっては損失と負担につながることです。
なぜ、そのようなことが起こっているのでしょうか。
それは、自閉症の人たちについて理解が進まず、受け入れるための知識が不足しているからです。
これまでの研究から、自閉症の人をもっと職場に受け入れていける多くの方法がわかってきました。
自閉症の人は一人ひとりそれぞれ特徴が異なりますが、一般的な特徴としては、人が見せる社会的、感情的な信号を理解することが難しい、また言葉も含めたコミュニケーションに困難を抱えることがあります。
自閉症の人の中には、話すことができなく支援が必要な人もいます。
しかし、それは無能であることを意味しないことを知ってください。
また、自分で刺激を与えたりするために、繰り返し同じことを行う特徴もあります。
指をせわしなく動かしたり、体を揺り動かしたりです。
刺激を与えること、特定の感覚や行動に集中することが、その人がまわりに対処することを助けています。
そして同時に、そうした行動を取ることをすごく恥ずかしいと感じている人が少なくありません。
そのため、自閉症の人がまわりに対処するため行うその行動をまわりの人が理解しない場合、行動そのものよりも大きな働く上での問題となります。
人への共感の欠如は、自閉症の人の特徴としていわれます。
しかし、自閉症の人は圧倒されてしまほど他人の感情がわかるものの、それを表現できることができないのだと専門家の間でも論争があります。
ほかに自閉症の人がもつ特徴としてあげられるのは、すごい集中力、長く続けられる、細かいことにも気づくなどがあります。
自閉症の人が仕事をする上で経験する多くの問題は、社会的なコミュニケーションの困難に関連するものです。
それは、自閉症の人自身だけの問題ではなく、まわりの人たちの認識が関係します。
例えば、自閉症の人はたびたび感情を欠いているといわれることがあります。
そうではありません。感情はありますが、他の人が認識できるかたちでは表現していないだけです。
また、会話をしていても自分の好きな話題に集中してしまったり、相手の表情や会話の空気を読むことが困難です。相手の目を見ることも苦手です。そのために相手に誤解されてしまいます。
発達障害の人にとっては、ルールを知ることが難しい場合があります。
多くの人が当たり前に知っているはずと考えている暗黙の社会的なルールは、あらかじめ明確に伝えられなければ、発達障害の人にはわからず、仕事上での問題につながってしまう可能性があります。
また「変化」は自閉症の人の不安につながります。
においや音などにも敏感であることがあり、極端な反応をみせてしまうこともあります。
自閉症の人たちのこうした反応をまわりが理解できなければ、自閉症の人との仕事は難しいというレッテルが貼られる結果となり、そのレッテルが自閉症の人が仕事をするのをさらに困難にしていきます。
しかし、自閉症の人の多くはすごい集中力をもっています。
興味をもったテーマなら、専門的な知識、スキルも身に着けます。
また、細部へのこだわり、高度なパターン認識スキルももともと持っているので、多くの自閉症の人がその分野での技術的エキスパートになることができます。
自閉症の人の中には、ルーチンの仕事を反復的にずっと行え、他の人が単調に感じる仕事に耐えることができる人もいます。
創造的な人もいます。複雑な問題に対して視覚的に考え、独自の視点で解決策を導きます。
そして自閉症の人は正直であることが良く知られています。ずる賢いことを行う可能性は低いです。
それらをふまえて、自閉症の人を受け入れ、雇用することができるように職場で行えることは次のようになります。
1.不必要な刺激を減らす
仕事を行う上で、不必要な刺激を減らしましょう。
作業スペースをまわりから区切ることで、気が散るのを防ぎます。
例えば、部屋の角にスペースを設けたり、囲ったりするのです。
照明はノイズが発生する蛍光灯ではなくLEDを。
ノイズキャンセリングのヘッドフォンが有効な人もいます。
タグや布の質感の問題から、制服がある場合には配慮することも必要です。
また物理的な問題だけでなく、取り組んでいる仕事を中断させるようなことを最小限にすることも有効です。
電話は使わずに電子メールだけにする、廊下で話す人を減らすために会議室で話すことを奨励するなど。
また、自閉症の人には突然話しかけたりするのではなく、事前に時間を設定してから話をすることもよいでしょう。
自閉症の人の努力に関わらず、職場はまだきつい空間かもしれません。
落ち着くことができる「静かな部屋」を設置することは、とても有効です。
刺激が最小限になるように配慮された部屋です。
パニックになりそうな状況から、自閉症の人を助けます。
2.明確なコミュニケーションを行う文化
自閉症の人が経験する困難とコミュニケーションはひどくからみあっています。
コミュニケーションの問題を解決することはその社会的困難の解決にもつながります。
暗黙のルールを明示化しましょう。
管理職の人は、書面で詳細な指示を提供し、作業の割り当てのあいまいさもないようにできるべきです。
評価の基準も明確に伝えられるべきです。働く人が自分の進捗もわかるように。
そうすることは、自閉症の人に限らずここで働くすべての人にとっても助かるものです。
自閉症の人たちは、質問が前もってわかっているとき、相手が話題をころころ変えないとき、相手の目を見なくてよいとされたときに、コミュニケーション能力が高まるといわれています。
3.社会的および感情的なコーチ、メンター
以上のような配慮を行っても、自閉症の人たちはまわりの人たちの社会的、感情的な行動がわからないと感じるかもしれません。
コーチが役に立ちます。
専門家や訓練を受けた同僚がコーチ、メンターになります。
同僚であれば、多くの情報をすでに受け取っているため、より適しているかもしれません。
以上の3つのようなことが、優秀な自閉症の人を雇用するのに役立つ簡単なステップとなります。
またこれらのことは、自閉症の人に限らず、ここで働く多くの人も助け、良いビジネスにもつながっていきます。
自閉症の人たちを受け入れるために対応することは、職場全体をより公正にし生産的にする可能性ももっているのです。
(出典:豪THE CONVERSATION)(画像:Pixabay)
外面の多様性だけではなく、考え方など内面の多様性も認めてこそ、ダイバーシティ、ニューロダイバーシティの強みが発揮されます。
かたちばかりの外面の多様性への対応だけでなく、それぞれの人を尊重する、内面の多様性を受け入れる本当の変革がなされていなければ優秀な人は来たとしてもすぐに去っていきます。
発達障害の人の雇用を進めるIBM。多様な頭脳が必要だから
(チャーリー)